#8 夢カジノ
寝るという行為が賭け事の一つとして楽しまれている。
その名も「夢カジノ」
お金の価値がなくなった現代、賭けるものは自分の時間。そして、報酬は個人個人の価値観の中で定義される「幸せ」になれたかどうかである。つまり、楽しい夢を見られれば勝ちで、悪夢を見れば負けである。
長年の研究の成果により、夢を外部から操ることが可能になった。それからしばらくして夢カジノが娯楽の一つとして親しまれるようになったのだ。
人々は夢カジノをするために大型施設「Good Night」に足を運ぶ。
Good Nightに1人の男がやって来た。
「6時間で」
男がそう宣言するとルーレットが回り出した。ルーレットが止まるとディーラーから出目と同じ部屋番号のルームキーを受け取り、男は部屋に向かう。
ルーレットを回す以外はホテルとほぼ変わらない。
部屋に入りベットで横になるとすぐに眠りについた。
ピピピピッピピピッ
6時間後、目覚ましが鳴ると男は目を覚ました。そして、男は鍵を持ち部屋を去り、受付で鍵を渡してGood Nightを後にした。男は賭けに勝てたのだろうか?
男が去った後、別の男がげっそりした顔で出てきた。悪夢に当たったものは皆揃ってげっそりした顔で出てくる。
悪夢に当たってしまったら、賭けた分の時間ずっと悪夢にうなされるのだから寝た心地がしないのだ。
睡眠欲は3大欲求の一つだ。その欲求でさえ賭け事にしてしまったこの時代、勝ち組は良いだろうが、負け組は溜まったもんではない。負け続ければ身体を壊す危険も伴う。それでも、平日休日問わず、多くの人が足を運び続けている。
なぜか?
あの日見た人生最高に幸せだった夢を求めて。
ここで「Good Night」の黒い噂を紹介しよう
1.本当は夢を操れないのではないか?
2.客が寝ている間に持ち物を盗んでいるのではないか?
しかしこの2つはデマだ。
ではなぜこのような噂が出回るのか?
それは、Good Nightどう利益を生み出しているかを誰も知らないからだ。お金はとっていない、賭けているのは睡眠時間、経営側にとって夢を提供することで生み出される利益を誰も知らない。
現状、濃厚と言われる説は人間の精気を吸い取っているというものだ。あり得ないと思いたいが、夢をも操れるのならば、精気を吸い取れる可能性がないとは言い切れないだろう。
ある所では、その集めた精気を闇市で売買しているという噂もある。
こんな話馬鹿馬鹿しいと思っているだろう。
しかし、嘘とも真実とも断定することが出来ない。
幸せな夢を見たいならどうすべきなのか?
時が来るのを待ち続けるか、勝負に出るか?
何も知らない人々は、今日も夢カジノをする。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました😊
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