ちょっと、恋を目撃した

夏休み明け、久しぶりに出社した帰り道。仕事で色々あってモヤモヤしていた。「帰りにタバコを買ってきて」という彼のラインに忠実に動き、遠回りしながら帰る。台風もこっちには影響なく比較的涼しい。

仕事で嫌なことがあった。だけど落ち込んではなくてどちらかというと、怒りにエネルギーを変えている。ありがたいことに味方になってくれる(寄り添ってくれる)人たちが多い。でもやりきれない思いが強くイライラしていた。コンビニでチューハイでも買おうかと思ったが、家にあるキンミヤで緑茶ハイが一番いいだろうとおもい家路に急いだ。

横断歩道にたち、信号が変わるのを待つ。
住宅街、夜20時。
生ぬるい風、台風のせいだからか、そういえば夏の風の呼び方があった気がする。

そんなことを考えていたその時、薄暗い住宅街に、自転車が通った。
驚いたのは、二人乗りだったから。
驚いたのは、高校生ではなかったから。
驚いたのは、20代、いやもしかしたら30前半だったから。

驚いたのは、後ろに彼女を乗せていて、そしてその彼女が嬉しそうに彼の腰に手を回していたから。

そんなの、耳をすませば、以外で見たことなかった。

彼女の肩にかけている鞄からネギが出ていて、一瞬だけどすごく幸せそうな2人の様子だった。

最近全く2人乗りを見ていなかったがあんなに幸せな風景ってあるの?と一瞬思ってしまった。きっと帰って2人で缶ビールで乾杯するに違いない。クロノスタシスって知ってる?というあの歌を思い出すぐらい甘酸っぱい。いや、こんなの峯田和伸みたら心臓発作で倒れるんじゃないか?ここは吉祥寺か高円寺か?お尻が骨に当たって痛くない?と思うのは私が年齢を重ねたせいか?彼に腕を回して彼が嬉しそうに自転車を漕いでいたのを見てあの2人の幸せを疑う人がいたら(そして2人乗りを注意する人がいたら)私は全面戦争を起こすと心に決めた。いや、すごい、幸せすぎる。これが夕方、ひぐらしが鳴いてたら多分私も泣いてた。いやでも、なまぬるい夏の夜ってのもこれもまたエモ尊くて大変ですけれども!

はー、幸せだわ。
幸せの瞬間、恋の瞬間、これだけでも見れて最高に幸せだわ。
どうでもいい元上司の嫌味すら吹っ飛んだ。

わたしはあんな恋したことあったかな?と考えて高校生の時、2人乗りしたの友達したことを思い出して「ケツいてぇんだけど!」とさけんでてすごく下品であったことを思い出した。

自分の思い出を重ねるとダメだなとちょっと笑顔になりながらアパートの鍵を開けると、おいしいにおいがする。これもこれで幸せな風景なんだろう。

いらいらよ、さよなら
こんにちわ、幸せ

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