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幼馴染 3.テツ #創作大賞2024


登場人物

:真面目・世話焼き・しっかり者
彼氏が出来ても続かない。
【呼び方】司→司/テツ→てっちゃん

:無口・無表情
硬派を絵にかいたような男。
【呼び方】栞→栞/テツ→テツ

テツ:おどおどしていて大人しい
褒め上手(本人は素直にそう思っているから言ってるだけ。)
【呼び方】栞→しーちゃん/司→司

設定

・3人とも幼稚園からの幼馴染
・小中高と同じ学校に通う
・大学は栞と司が同じ大学、テツだけが離れたが同じ都市にある大学に通う
・現在は社会人
・司は地元、栞は都市部、テツは都市部から少し離れた地方で働く
・地元から数えて司→栞→テツの順で遠いが、都市部にすぐ集まれる距離感
・栞は社会人から一人暮らし、テツは大学から一人暮らし、司はずっと実家住み

S1:居酒屋

幼馴染の栞・司・テツが定期的に開いている飲み会。
今日はテツがもう1人連れてきていて4人で1つのテーブル(掘りごたつイメージ)に座っている。

SE:居酒屋のガヤガヤ感

テツM「僕の恋愛対象は男だった。」

テツ「ぼ、ぼく、あ、あのっ、この人と、つ、付き合ってるんだ・・・。」

テツM「震える両手をぎゅっと握りしめながら僕は幼馴染2人に告白した。

幸せなことに小学校まで自分のセクシャリティに深く悩んだことがなかった。幼馴染のしーちゃんと司の2人と仲良く遊んで過ごしていた。

それは中学に入ってから。
司が出場する剣道の全国大会が僕達の住む街だったことがきっかけだった。

それまで司の試合を見にいったことがなかった僕としーちゃんは、せっかく近くでやるのだからと見に行った。」

S2:剣道場(中1の夏)

テツ回想

地方都市の大きな体育。

SE:竹刀の音・掛け声

「飲む物買ってくるからてっちゃん先に席どこか取っておいてくれる?」

テツ「うん、わかった。あっちの方探して待ってるね。」

「うん。」

テツM「適当な席を見つけて会場の司を探す。」

テツ(あっ。)

テツM「ちょうど僕たちの中学の剣道部員達が見える席だった。司の顔も見える。」

テツ(ラッキー。司気づくかな、おーー・・・い・・・。)

テツM「試しに手を振ってみようと思った時だった。
もうすぐ試合なのか手拭いを頭に巻きはじめた司の表情に僕は釘付けになった。

試合前の集中した司の顔は真剣で、大人びていていつもの司ではなかった。
するとその時、僕の前の席に座ろうとしている観客が僕の視界を塞いだ。」

テツ(もっと、もっと見たい。)

テツM「立ち上がった僕をしーちゃんが見つけた。」

「おーいてっちゃーん。」

テツ「あ・・・しーちゃん・・・。」

テツM「いつもならきっとすぐ司の様子をしーちゃんに伝えたと思う。
でも僕は今まで感じたことのない感情に戸惑って言う機会を逃した。

今思えばあの時素直に言っておけば良かったと思う。

結局その日はしーちゃんにこの戸惑いがバレないよう、なんてことないフリをしながら司を見つめ続けた。」

この感情は・・・?

テツ回想終わり

S3:居酒屋

SE:居酒屋のガヤガヤ感

「司、いつまで固まってんの。なんか言いなよ。」

テツM「司は僕がずっと隠してきた秘密と『彼氏』の紹介に言葉を失っていたようだった。」

「あっ、あぁ。テツ、ちょっ・・・だいぶ驚いた。」

テツ「・・・ごめんね、ずっと言えなくって。」

「栞には話してたのか。」

テツ「う、うん・・・あの、中学の時に・・・。」

テツM「司に抱いた感情の正解を僕は徐々に自覚していった。
気づく過程は僕にとって恐ろしいものだった。
当たり前のように恋愛対象を女性で話す友達達。
それ以外の恋愛を批判するような声を聞いたことはなかったが、自分から話してどう解釈されるのかわからなくて話せなかった。
自分がこれからどうなっていくのか不安に襲われた。

どうしようもなく悩み続けて頼ったのはしーちゃんだった。」

「・・・そうか。」

テツ「ご、ごめんね・・・同性の司には、言いづらいっていうか、あのっ、ずるずるここまで来ちゃって。本当にごめん。」

「謝らなくていい。」

テツ「でも・・・。」

「苦しかったか。」

テツ「え?」

「気づけなくて悪かった。」

テツM「こういうところが好きなんだと改めて思う。
僕はこの想いを何度司に伝えようとしたかわからない。

1番伝えたいと思った時は高校の頃、司からしーちゃんと付き合っているのか聞かれた時だった。

少し考えればわかりそうなことだったが、しーちゃんに依存して一緒にいることで安心していた僕はそんな誤解を与えることに気が回らなかった。
しーちゃんにも迷惑がかかっているのかもしれないと思った。

告白してこの気持ちに決着をつけよう。

そう決意した頃、司に初めて彼女が出来た。
後輩の可愛らしい女の子だった。
それまで司は告白されることはあっても付き合うことはなかった。
部活が忙しいとか、色々理由をつけては断っていたから驚いた。

2人が帰る姿を教室から同級生がからかう。
その様子を僕も眺めていた。
背の高い司に小柄な後輩の女の子は歩幅が追い付かないのか、距離が出来ると少し早足でかけ寄っていた。
それに気づいた司が歩幅を合わせてゆっくり歩く。
ぎこちない様子だったが、後輩の問いかけに目線を合わせようと顔を少し傾けて聞き、その表情は普段無愛想なのに柔らかい笑顔だった。

強烈なうらやましさに心臓が潰されるような感覚を持った。
ふとこの間僕と司が帰宅した時のことを思い出した。
僕と司が並んで歩いていても付き合っているなんて誰も思わない。
しーちゃんと僕のような誤解も与えないだろう。
それに何よりきっと僕は司からあんな柔らかい表情を向けられることはない。

決着なんてとっくについてる。

その後司はその彼女とすぐ別れたようだったが、それを知ってももう何かしようとは思わなかった。この想いは隠し通そうと決めた。」

テツ「・・・ありがとう司。僕大丈夫だよ。しーちゃんのおかげなんだ。『大丈夫』になれたのは。・・・ずっと好きな人・・・がいたんだけど、やっぱり男の人で。おかしい僕ってなっちゃって。でも、しーちゃんに打ち明けた時、しーちゃん、『大丈夫』って言ってくれて。」

テツM「小さい頃から僕が泣いていると駆けつけてくれたしーちゃん。
大丈夫?と泣いている僕の顔を覗き込んでくれるしーちゃんを見ると安心してまた泣いた。」

テツ「僕ずっと『大丈夫』って言って欲しかったんだ。もう全然大丈夫な状態じゃなかったから。自分で言い聞かせるのが限界で、ずっと苦しかったから。ずっとそばに居てくれた大事なしーちゃんに、僕はずっと何にも出来なかった。そんな僕が付き合ってる人の話なんて、浮かれてるみたいでできないって思ったら、1番に言いたかったのに、言えなくなっちゃって・・・ごめんねしーちゃん。」

テツM「彼氏と別れるたびにしーちゃんは何てことない顔をしてたけど、ふとした表情は苦しそうだった。大丈夫?と聞いても大丈夫と答えるだけ。

そんなことが何度か続く内にひとつの考えがよぎるようになった。

僕じゃダメなんだろうか。

僕だったら、しーちゃんを傷つけたりしない。
側にいて大事にする。

傷つけたりしない。

傷つけたりしない?

・・・・・・本当に?

2人に僕のセクシャリティの詳細はわからない。
女性でもしーちゃんなら大丈夫だと言葉や行動で示せばきっと2人はそういうものなんだろうと騙される。

でも僕はそれにいつまで耐えられる?

女性を真の意味で愛することはできない僕にいつか綻びが生まれて、しーちゃんを傷つけるんじゃないか。

大好きな幼馴染にそんなことをしてしまったら。
それはしーちゃんの過去付き合ってきた人達よりひどいことなのではないか。

司に告白しようか悩んでいた時、彼女が出来た時、この想いを隠し通そうと決めた時。
苦しかったけどしーちゃんが側にいてくれたから耐えられた。
僕の事を受け入れてくれたしーちゃんがいたから今まで保ってこれた。

そんなしーちゃんに僕は何を。

僕にしーちゃんはもったいない。
昔そんな話を司にした。
どの立場でこんなこと考えてるんだ・・・。

毎回そんな自分本位な考えが一巡する頃には、自分の無能さに打ちのめされた。」

「大事・・・?」

「お前ほんとすげーな・・・。」

テツ「え?何が?」

「いや、何でも。」

テツ「え、なんか僕なんかおかしなこと言った?」

「・・・恥ずくて言えね。」

テツ「そんな恥ずかしいこと言った!?」

「・・・あははっ!」

テツ「しーちゃん?」

「ご、ごめん、ははっ、なんかおかしくて・・・なんでだろ・・・ははっ。」

テツM「僕はいつもうっかり何か言っているらしい。
でも、幼い頃から何度となく繰り返している会話をするとほっとする。」

テツ「そ、そうだね・・・なんか僕緊張しちゃって・・・おかしいよね。」

「だな。」

テツM「3人で笑いあう。
そうしてやっと僕は横にいる人物を思い出して慌てた。」

テツ「あっ、ごめん、忘れてた。あのね、この人は・・・。」

S4:カフェ

居酒屋での告白から数か月後、テツと栞が2人カフェでコーヒーを飲みながら会話をしている。

SE:飲食店のガヤガヤ感

テツM「あれからしばらくして、しーちゃんから思いもよらない話が出てきた。」

「司がなんかグイグイ来る。」

テツ「グイグイ?」

「やたらご飯とかお茶とか色々誘ってくるようになった。」

テツ「そうなんだ。」

テツM「思いもよらない・・・ことはなかったと思い出す。
幼い頃の司はしーちゃんを好きな素振りがあった。

でもあまり感情を表に出さない司の真意はわかりづらかったし、彼女が出来たりしたこともあってその可能性を考えていなかった。

というか僕自身自分の事でいっぱいいっぱいだったのが大きな要因か。

僕も大概鈍い。司のこと言えない。」

「性格変わってきた気がする。なんか積極的っていうか。今度だってね?てっちゃんがハマって私も付いてってたグループいたでしょ。そのライブが取れたらしくて一緒に行こうとか。」

テツ「おー。」

「でもあれてっちゃんが好きで私付いてっただけっていうか。」

テツ「しーちゃんも結局ハマったよね。」

「まぁそうなんだけど・・・。」

テツ「あ、しーちゃんの推しメンだった子司に似てない?」

「え?」

テツ「似てるよね。」

「え・・・えー?(似てると思いけど認めたくなくてとぼけて。)」

テツ「否定しない。(笑いながら)」

「いや・・・そんなこと言ったらてっちゃんの推しだってチャラさんに似てない?」

テツM「2人はいつの間にか僕の彼氏のことを『チャラさん』と呼び始めていた。あの人は2人共通でちゃらいと思われているのが面白い。」

テツ「似てないよ、やめて?あんなちゃらくなかったよ僕の推し。失礼だよ。」

「ひどっ。何、ケンカでもした?」

テツ「・・・一緒に暮らすと色々。」

「でも楽しそう。」

テツ「そうかな。」

「なんかニヤニヤしてる。」

テツ「えー?」

「ね、てっちゃんもきてよライブ。」

テツ「いやでも司と会うとあの人ヤキモチ妬くみたいで。」

「・・・そっか・・・ってのろけてない?」

テツ「ははっ。」

「じゃ行ってくるかライブ。グッズとか買って来ようか?」

テツ「え、いいの?ありがとう。」

テツM「司なら安心・・・ってほんと僕はどの立場で言ってるんだろう。

そう思いながらも、まんざらでもなさそうなしーちゃんを見て僕は自然と笑顔になっていた。」

幼馴染それぞれのストーリー

栞・司・テツそれぞれの視点でのストーリーを書いております。
よろしければご覧ください。

よろしくお願いします。

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