ワーカーホリック 心酔する愚者③

岩田の紹介から今回のメンバーの人数と名前が明らかになった。
警察庁からは梨本、岩田、橋本、ホストクラブは社長の赤城、店長の村山、そしてキャストと呼ばれるホストクラブの従業員カトウアイ、ナイン、深山シン、タカと呼ばれる4人であった。
そして「厚生労働省の外部協力の機関より、こちらのお二人にきていただきました。」岩田が私とSに視線を送った。
よろしくお願いいたします。と私は返事はしたが、Sは小声で厚生労働省の外部機関ってと笑い出したので、思わずSの靴を踏み抜いた。
Sは痛いっと表情をしたが、私は無視した。
「あの・・・お二人はなんとお呼びすれば宜しいですか?」と村山が声をだした。
それに対して、梨本が返事をする。
「あぁそうだな。そうだったな。この二人は野田と佐藤と呼んでください。二人とも、構いませんかね?」
「はい、構いません。」と私は答えた、Sは「佐藤です。宜しく。」と返事をした。
いつまでこいつは気だるそうな態度をしているんだとSを見ていたが、どうやらこの空間自体があまり好きではなさそうだ。足を組んでいるが、資料を読んでいるだけマシだど思おう。と思っていたけれど、一つ気になる点があった。Sが佐藤です。と発言した瞬間、青色のシャツの男の子の肩が少し動いた。あの肩の動き方は、姿勢の変えるときの動作じゃない。明らかに反射だ。佐藤という名前になにか引っかかるのかと思ったが、村山が私とSに「では野田さん、佐藤さん、宜しくお願い致します。」と伝えた。
岩田が自己紹介が済んだところでと話はじめたところで、今回の件について話がはじまった。わたしは青いシャツの男の子が何故か気になってしまったが、気にせず視線を資料におとした。

資料の内容を岩田が丁寧に説明していく、最初の1枚は今回の経緯と現状の説明であったが、そのあとの4枚はキャストの写真とプロフィール、そして残りの15枚ぐらいは、彼らが実際に受けた被害であった。
「読むだけでも気持ち悪いな。このカトウってやつの掲示板は精液の味まで書いてあるぞ」
声に出すなよと思いながら、なるべく表情を出さないように読んでいた。

今回の経緯はホストクラブのキャスト4人の中傷被害に関する案件だ、彼らはこの繁華街の中のホストクラブでも上位に入る売上のキャストらしい。とくにカトウは年間で4億を売る、売れっ子キャストだそうだ。そんなキャストの中傷被害の犯人の処理が私たちの依頼だ。
岩田は説明を終えて、梨本が更に続けて話をはじめた。
「中傷被害に関しては、この業界では至極当たり前だそうだ。嫉妬、怒り、不満はキャストであろうとお客様であろうと当たり前であり、今更どうってことはない。しかし、人間には限度がある。あまりに悪質な中傷をされた場合は店長の村山氏、そしてキャストのカトウ氏とナイン氏はプロバイダーの情報開示請求を行ってきたということだ」
梨本の話に対して、村山とキャストのカトウとナインは頷いた。
「資料にも書いてあるように、11月上旬に夜職専門のネット掲示板に、今回集まってくれたキャスト4名に対する悪質な書き込みがされた。内容を読み上げるのはどうか控えさせてくれ。わたしも読むだけでも、気持ちの良いものではない。」
全員が反応はしなかったが、梨本の言葉に同意したのは間違いないだろう。私も資料を読み進めているなかで、彼らの誹謗中傷がなかなかメンタルにくるものだと思った。ただ単純に死ねや、消えろなどの暴言も書かれたら、さぞつらいが、それ以上に自分の性的思考、女性とのセックスの内容、自分の裸の写真を暴露されるのは辛いどころか、死にたくなる。この掲示板にはその内容が日付けから場所まで細かく記載されていた。そして掲示板のスレッドのタイトルはキャストの名前であり、彼ら4人がそれそれ、同じような内容が書かれていた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?