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青森が離さない。(青森旅行記2日目)2023.08.09

2日目(8月9日)

さすがに調子に乗って飲みすぎたか、夜中に二日酔いの頭痛で目が覚める。頭痛薬を飲んで眠ると朝には治まっていた。
朝はみんなでドトールにコーヒーを飲みに行く。僕はホットドッグを、山谷さんはパスタを食べる(これが昼に少し響いたのが反省……)。

その後少しだけ八戸ブックセンターを覗き、10:30にタクシーに乗って、海の方面を目指す。この日も猛暑(台風の影響で高気圧が東北にせり出して青森も歴史的な猛暑になっていた)だが、海が見えてくるとやはり夏は良いなという気持ちにさせられる。
「小舟渡」という海鮮料理屋へ。ここは昔の船着場だった小屋を料理屋として活用している。なので窓からは一面の海を臨むことができるのだ。

11時の開店と同時に入店。窓際の席に通される。メニューは定食と丼、ラーメンが有名で僕と中村さんは三色丼(イカ、ホタテ、いくら)を、山谷さんはほやラーメンを注文。それからイカ刺し、塩辛、ビールも注文。

まずはイカ刺しと塩辛が届く。ビールを口に含むと……美味い!店内はエアコンがないので正直暑いがビールはそのぶん美味い。イカ刺しも包丁が丁寧に入れられていて美しく、塩辛も滅多に食べられない濃厚さ。中村さんと山谷さんが言うには、塩辛は瓶詰めは絶対に買わない。家で作るか店で食べるものの濃厚さは出せないから、という。納得である。

三食丼も絶品。いくら、ホタテ、イカを頬張りながら無心で食べる。山谷さんのほやラーメンも味見させてもらったが、磯の香りが立っていてすごい。有名な「いちご煮」に似ているらしい(ちなみにいちご煮にはホヤは入っていないらしい)。
小舟渡のロケーションももう少し味わいたかったが、なにぶん暑くて全員ダウン寸前に。食べるのに必死になってしまう(そして僕はホットドッグを食べてしまったせいで食事スピードが落ちてしまった……)。
当初の予定ではこのあと海を見に行く予定だったが暑さに耐えられずそのままタクシーで市内中心地まで戻る。この旅では僕たちは暑いと「暑い。つらい。悲しい」と言い、涼しい室内に入ると「涼しい。うれしい」と口にしていた。
それから「はっち」や「さくら野百貨店」でお土産を見てからホテルに戻ってしばし自由時間。僕は少し外を散歩する。酒屋さんなどを覗きながらぐるっと歩く。八戸市内は横丁が発展していて面白い。昨日訪ねた名酒場「ばんや」は臨時休業だった。危なかった……。

15時頃にホテルに戻り、大浴場で汗を流しながらコインランドリーで洗濯。16時から中村さんの部屋に集まって、「はっち」で買ったワインとチーズでゼロ次会。みんなで購入した「11ぴきのねこ」グラスで乾杯する。

ワインもチーズも美味い。特に中村さんの発案で試した「薄紅百顆」という青森のりんごを用いたお菓子にチーズを乗せてワインを飲むと美味しすぎて感動する。あっという間にボトルを飲み干して、いざ街へ。ゼロ次回の時に山谷さんが「自由時間に八戸市美術館に行ったけどすごいよかったよ」と教えてくれたので三人で向かう。八戸市美術館はこの日19時までの開館&入場無料の日なのも幸い。

「美しいHUG!」という企画展が素晴らしかった。全国でリアカーを引きながら素焼きの焼き物を製作し「野点」を行うきむらとしろうじんじんさんの展示で示されていた「路上の掟」に心を揺さぶられる。
そしてタノタイガさんの「タノニマス」という取り組み。展示室に無数に掛けられたお面を参加者が自由に装飾をして再び壁に戻す、という作品で我々も挑戦してみた。

僕はこの無表情の仮面を装飾していく作業は「顔」というものをどう解釈するかに繋がっているなと感じて、材料の中から新聞紙と広告を選んでそこに使われた無数の「顔」を貼り付けていくことにした。敢えて鼻は覆わず、仮面の存在感も残しつつ最後は顔全体を透明のフィルムで覆って息苦しさのようなものをあらわしたかった。

(左)山谷頼子作、(中)中村匠秀作、(右)今野ぽた作

仮面を作っている間、三人とも無言で向き合っていたこと、完成したものをみんな良いねと言い合えたこと、その時間にこの3人で旅行できて良かったなと思う。

そして忘れられないのが、タノタイガ「15min. Portrait」だ。
この作品は、沖縄にある「旅館」と呼ばれる性風俗店にタノが入店し、そこに働く女性の服を借りて身につけたタノの姿を、性風俗従事者である女性に撮影してもらう、というもの。15min.というのは彼が入店に際して代金を払った時間を表していて、参加者はペンライトを持って暗い展示室の中を照らしながら鑑賞する。その際に渡されるタイマーも15分を刻んでおり、また入り口の扉も民家のそれのようだ。参加者はタノを追体験するような形で作品に向き合う。
「カメラ越しに見ること」や「男性性」のもつ特権性にタノタイガは意識的で、ものすごく危ういバランスで作品は成立している。被写体はタノ自身だが、そこにいるのは性風俗従事者の女性たちだ。写真には小さなキャプションがついていて、そこには働く女性たちの置かれた過酷な現実が映し出されている。
言葉を失うほどの衝撃を受けた作品だった。

美術館を出ると夜。再び八戸ブックセンターを訪ねる。八戸ブックセンターは珍しい市営の本屋である。ここといい、八戸市美術館の企画展といい八戸という街が何を大切にしているのかということがヒシヒシと伝わってきてこの街への愛着が増してくる。

19時になったので中村さんが予約してくださった「鬼門」へ。ここは白央篤司さんにもオススメされた居酒屋で楽しみなお店。店内は地元の方々の南部弁が飛び交う空間。ますます楽しみだ。

馬肉と〆さばから始まり、今日もホヤとウニ、ヒラガニを食べる。ホヤやヒラガニは300円台、ウニもこれだけ乗って1000円。安すぎる。
ヒラガニは一人一匹食べたのだが、女将さんから「殻の奥もぐっと突っ込んでそうしたら味噌がごそっと取れるから」とアドバイスを受けて我々は箸を使うことも忘れてカニを頬張った。
当たり前のように海鮮を堪能しているが、こんなに新鮮な食材はもうしばらく食べられないのだろう。無心になって食べる。
酒を飲みながら、主に先ほどのタノタイガの作品について議論をする。こうやって真剣な議論ができる三人で良かった。最後に濃厚なしじみ汁を出してくださってご馳走様でした。良い店だ。

地元民である中村さんに八戸を案内してもらいながらふらふら歩いて、続いての目的地のAND BOOKSへ。古本屋かつカレーの美味しいバー、そして映画館を併設するという八戸の文化の中心地だ。予約より少し早かったので、映画館のスペースを見せて頂く。本が並んだ室内にスクリーンが広がっていてすごく良い場所。

入店してからカレーを食べながらビールを飲む。カレーは大阪のスパイスカレーのテイストを感じるめちゃくちゃクオリティの高い一皿。スパイスの香りで満腹だった胃に一気に食欲が戻ってくる。
AND BOOKSを営む本村さんは、八戸に映画や古本といった文化を残すために奔走されている方ですごく尊敬できる方だった。
そしてなんと店内の古本の中に山谷さんが紹介された雑誌がありサイン会が始まるなど楽しい雰囲気で夜が過ぎていく。

かみしのくんまた会いたいな。

またAND BOOKSさんは素晴らしいグラフィックのオリジナルTシャツも製作されていて、僕たちもそれを購入させてもらう。僕と中村さんは決められずに2枚購入。

閉店間際まで飲ませてもらう。いやー楽しかったなあ。〆に横丁で八戸ラーメンを啜ってホテルに帰る。青森の魅力に掴まれっぱなしの一日。

部屋に戻って一人になって荷造りをしながら明日にはもう青森を離れるのかと思うと寂しくなる。

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