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今年最後の東京へ(東京日帰り旅行記) 2023.12.27

朝5時起床。さすがに2時半に寝たので眠すぎる。呻きながらシャワーを浴びて身支度。今日は日帰りで東京へ行く。荷物は少ないので適当にリュックに詰め込んで出発する。
新大阪に着いて、切符を求め、駅弁を購入。博多の焼き鳥弁当が売っていたので購入。これは駅弁大会でヤマコさんから教えてもらって美味しかった弁当なのだ。7時前の新幹線に乗る。

弁当を食べたらさらに眠くなる。とりあえず日記を書いてから目を瞑るが、30分ほどしか眠れず。気づけば東京だった。山手線で新宿まで出て、京王新線で初台まで。坂本龍一トリビュート展を見に行く。電車の中で、大阪の中華料理屋「宇宙」が閉店するという情報を目にしてショックを受ける。
とりあえず11時に入場。チケット売場の職員の方がめちゃくちゃ念入りに注意事項を読み上げてまどろっこしいなと思いながら聞く。特に映画の上映は整理券がすぐになくなるから今すぐ取ってくださいと何度も念押しされるが、時間がないので大丈夫です、と返す。

坂本龍一トリビュート展、そこまで大規模な展示ではなかったがとても良かった。李禹煥の描いた「12」のジャケットに使われたドローイングを見る。こういったものを目にすると、やはりもう坂本龍一はこの世にいないんだなと思って寂しくなる。

初台をあとにして、外苑前まで移動。13時からワタリウム美術館で梅田哲也展の予約が入っているのだ。当初の予定ではもう少しゆっくりできるはずだったが、意外と時間がない。
時間ギリギリだったがワタリウム美術館の近くのホットドッグ屋さんで昼食を食べる。ホットドッグならすぐに出てくるだろうと高をくくっていたらそこそこ待ったので焦った。10分待って3分で食べる。950円。美味しかっただけにもったいないことをした。

梅田哲也さんの公演を見るのはこれで4度目。最初が高槻のインタールード、次が京都舞台芸術祭、そして3度目が入船(ニューふね)。「待ってここ好きなとこなんだ(Wait this is my favorite part)」というタイトルも良い。ワタリウム美術館で中村匠秀さんと合流。山谷さんは遅刻で来れず、2人で参加することに。
この公演は6人1組となって館内を巡っていく。はじめにエレベーターを上がったところで待っていたところに、キャストの方がやってきてパフォーマンスをする。梅田哲也の公演を初めて見る人ははじめ目を丸くしていたが、やがて公演の一部であることに皆が気づく。どこまでが展示で、どこまでがそうでないのか、というのは梅田哲也の魅力だ。
それからもワタリウム美術館の中を縦横無尽に歩き回り、行く先々で様々な仕掛けやパフォーマンスを体験する。そのどれもが建物の歴史や構造、そこに関わった人たちの息吹を感じられるものだ。待って、ここ好きなとこなんだ。そう言いたくなるのもよく分かる。
公演は建物内にとどまらず、ワタリウム美術館と道路を挟んで向かいの空地にも通される。表参道のオシャレな土地にぽつりとある空地。道ゆく人はそこに目もくれないし、ワタリウム美術館に起きている仕掛けにも参加者以外が目を向けることがない。この絶妙な無関心さが東京のようで、しかしひとたび空地にいる人の存在、建物の変化に気づくと決定的に日常を異化して揺らがせる。
最後は参加者全員で「よかったですね」と言い合って終わる。本当に良かった。後編もまた見に行かないとな。
梅田哲也さんのTシャツを買って帰る。中村さんもかなり満足されていて良かった。表参道の山陽堂書店でコーヒーを飲みながら感想を交わす。

電車を乗り継いで移動。溝の口を目指すが途中、三軒茶屋で降りてKankyo Recordsを訪ねる。マンションの一室が店舗になっていて、そこで「Music for Tomato Plants」のカセットがあったので購入。それ以外にも2本ほどカセットを買う。

東京で買ったものたち

溝の口に移動するとちょうど16時頃。名店である「かとりや」の口開けちょうどのタイミングだった。入店してビールを飲みながら串焼きを頼んでいく。東京に来るといつも、焼き鳥と銘打ってもつ焼きが提供されていることが不思議だなと思う。それにしても良い店だな。

かとりや、何を食べても美味すぎる。特にタレで食べる串焼きが最高。僕が座った目の前にタレがあって、そこにどっぷりと串が浸かり、ドロドロの粘度の高い真っ黒なタレが滴りながら引き上げられていく。それを見るだけでヨダレが出てくる。そして濃く深くこのタレが美味いのだ。最高すぎたな。

二軒目は「いろは」へ。有名なオリジナルボトルの焼酎でホッピーを割りながら、適当につまむ。昼は青果店を営んでいるので、ぬか漬けがとてつもなく美味しい。僕はこのあと映画を見に行くので寝ないように気合を込めてニンニク焼きを食べて元気を注入する。ここも最高の酒場だな。

溝の口をあとにして東中野へ移動。ポレポレ東中野で「王国(あるいはその家について)」を観に行く。昼前に中村さんにまだチケットを取っていないと行ったら絶対取ったほうがいい、と言われていたがその通り満席となっていた。チケット取っておいてよかった、ありがとう…。

上映まで時間があるので、風呂へ。アクア東中野という銭湯に行く。水風呂と外にもプールがあって、交互浴をしているとバシッと目が冴えた。お湯も気持ちよく、酔いも覚めたのでこれで万全の状態で映画を観られる。
中村さんとはここで別れる。いつも案内してくださって感謝だ。中村さんは東中野のムーンロードに消えていった。

「王国(あるいはその家について)」は2時間半の長編で、演劇的手法を用いた映画。まだこれから全国公開を控えているので詳しいことは避けたいがとにかくすさまじい映画だった。2023年のベストに一気に駆け上がる作品だった。
この映画は演劇の本読みの場面と稽古の場面とがメインで構成されていて、同じシークエンスを何度も何度も反復する。しかし一回ごとに役者の表情、口調、身振り手振り、カメラワーク、照明とが異なっている。繰り返される場面は倦怠感というよりも緊張と不穏さとがそこに漂っている。
映画とは、演劇とは、すでに完成された一回限りを見るものだとつい思い込んでしまうが、「王国」が提示するのは映画や演劇のみならず、世界を構成する微妙な差異の存在だ。そして差異によって構成されている世界はその微細さから非常に壊れやすいものなのだと気付かされる。この映画で語られる事件の動機は不可解に映るかもしれないが、反復されることによって提示される世界の差異によって直接語られることよりも雄弁に「事実」を語る。恐ろしい映画だった。

放心状態で映画館を出る。シナリオ集を買い、新宿へ。夜行バスに乗って大阪に帰るが、ここも思ったよりも時間がタイトで焦る。

夜行バスは座席が選べず、苦手な真ん中の席になってしまい案の定すぐに眠れず。後ろの人のいびきが大きくさらに眠れず。目を閉じて今日のことを思い出して、3時くらいには眠っていたのだと思う。

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