俳句のいさらゐ ::::: 松尾芭蕉『野ざらし紀行』より。「命二つの中に生きたる桜かな」
三好達治の詩「雪」は、名詩集『測量船』の中でもことに知られた詩であるが、筆者はこの詩の雪をこう解釈している。
達治が「雪ふりつむ」の繰り返しで暗示したのは、雪は四季の巡りの果ての、四季の風物のもろもろの象徴であり、太郎次郎という古来から連綿と与えられて来た名を持つ市井の人々の暮らしの屋根の上に、同じ様相をして幾たびもの四季が巡ったという、歳月の積み重ねの意味だと受け止めている。
さらには、そうして幾世代も代替わりして、ひとつひとつの家系と、風土に根付いたものは続いてゆく、とい