俳句のいさらゐ ⊝⊝⊝ 松尾芭蕉『猿蓑』より。「行く春を近江の人と惜しみける」
『猿蓑』に収めれた句は、『奥の細道』の句に現れている、非日常の大きな自然に、高らかで情の濃い精神性を見いだしている句風に比べてみると、市井の生活者であってなお、文雅を味わう意志を持ち続け、そこに生きる愉しみを感じ取る態度から生み出されていると言えるだろう。
その集の中から選んで、句の滋味を味わってみたい。標題の「いさらゐ」はちいさな泉のこと。にじみ出て来る思いを、そんな古語に喩えてみた。
芭蕉は、心の底では江戸を好んでいなかったのかという疑問が筆者にはある。
名声定まり江戸