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〈全文公開〉雑誌『POSSE』「My POSSEノート」page4

学生ボランティアたちが、POSSEに参加しようと思ったきっかけや自分がやっている取り組みについて書いている連載が「My POSSEノート」です。
今回は、『POSSE』vol.37に掲載されたHiroさんの「My POSSEノート」を公開します!

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「My POSSEノート」page4

闘い、歌い、社会を動かす。

Hiro ● POSSEボランティアスタッフ

 いまから一年と少し前、大学の教室で、私はとある講演会案内のビラを目にした。テーマは「過労死」。ちょうどその頃、過労死事件など若者をめぐる労働問題が話題になっていたが、私は社会で働くということに、なにか漠然とした不安を感じるようになっていた。
 POSSE主催のその講演会に参加してから、活動にも頻繁に加わるようになったが、それまで私は現在のPOSSEでの活動とは別のことをしていた。それは、音楽活動だ。曲を作り、毎週バンドメンバーとスタジオで曲を合わせ、都内のライブハウスで毎月ライブをおこなう、いわゆる「バンドマン」として活動してきた。だから、ここではPOSSEと出会う前後での、私の問題意識について書きたいと思う。
 私は東京でバンド活動をしながら、多くの仲間と出会った。なかでもよく一緒に飲んだり、お互いのライブを見に行きあったりした仲間は、私と同年代の二〇歳前後の若者たちだった。私は彼らと下北沢で酒を飲み交わしながら、活動のことや音楽について、熱く語り合った。いま私がボーカルを務めるバンドTHE SUNSET STREET のメンバーも、その過程で出会った仲間だ。

 会話の中で仕事の話になることもあり、ブラック企業についての話題も出た。そのなかには、自分がブラックな職場で働いていると訴えた仲間もいた。その仲間は、地元の高校を卒業したあと、大手食品工場で正社員として働いていた。しかし毎日の長時間労働や、上司からのパワハラによって、やがて心身ともに疲弊していった。そして、彼は次第に音楽活動との両立が難しくなり、バンドをやめてしまった。
 なぜ若者がこれほど追い詰められなければならないのか? 生活のために、仕事のために、やりたいことすらできなくなってしまう? そんな若者が、日本で毎年毎年増え続けている……。その一方では、ブラック企業で働いたために、離職に追い込まれる若者や、貧困に陥り生活保護を受けている人々に対する、容赦ない「自己責任」のバッシング……。これほど不条理なことはないのではないか?

 気がつけば、私の体内は怒りに満ちていた。それからは毎日のように、新聞や文献を読みあさり、社会問題を取り扱うシンポジウムに、積極的に参加した。藤田孝典さんの『貧困世代』や、POSSE代表今野さんの『ブラック企業』を読み、衝撃を受けたのもちょうどその頃だ。やがて私は自分の音楽でも問題提起をしようと決意し、『ブラック企業』という曲を書いた(Youtubeにミュージックビデオを投稿してあるので、興味があれば一度見てほしい)。

 そして、私は下北沢にあるPOSSEの事務所の門を叩いた。
 私はPOSSEで多くの社会問題を学び、ユニオンでの団体交渉や争議活動などにも参加した。それらの活動を通じて、痛感したことがある。それは、社会の構成員は私たち一人ひとりであり、不条理に対して、誰かが声を上げない限り社会は変わらない、ということだ。
 POSSEやユニオンで、私は多くの仲間に出会った。この文章を目にした人も、社会の現状に対して疑問を感じ、「おかしい」「どうにかしたい」と思ってほしい。そしてPOSSEに一度来てほしい。活動を通じて、必ず衝撃を受けるだろうから。
 私は、もっと多くのことを学びたい。音楽で表現したいこともたくさんある。だからこそより強固に力をつけ、議論し、闘っていきたい。そして歌いたい。これから、私のような、社会を動かしたいという意欲のある人と出会うことを、楽しみにしている。

雑誌『POSSE』を発行しているNPO法人POSSEは、大学生・大学院生が中心となって運営し、労働・貧困問題に取り組んでいる団体です。雑誌『POSSE』の製作も、取材やDTP、校正校閲などの作業にいたるまで、多くのボランティアによって担われています。

最新号『POSSE vol.38』
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