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【トークイベント】アート・共生・コロナーー微生物とつきあうポスト・ヒューマニズム(7/18)

ポスト研究会第10弾は、アーティストの米谷健さんと米谷ジュリアさんをお招きして、最新刊『Dysbiotica: The Age of Imbalance(ミクロからマクロへ:バランスが崩壊する世界)』(2020、求龍堂)の作品集について語っていただき、お二人がアーティスト活動や農業を通じて感じてきたことなどから、コロナ以前/以降を通じて見えてきた不安や微生物との共生といったテーマについて再考するとともに、アートとは何なのかという根源的な問いに迫りました。

ぽすけん企画 第10弾 アート&トークイベント
アート・共生・コロナーー微生物とつきあうポスト・ヒューマニズム

出演者:米谷健+ジュリア×川端浩平(司会)
日時:2020年7月18日(土)18:00〜20:00
場所:zoom(無料)

【トークテーマ】
コロナ禍で気づかされたのは、ウイルスは戦うべき相手ではなく共に生きていくことになるのだろうということだ。そしてまた、私たちが「共生」というテーマをあまりにも人間関係を中心に考えるようなっていたことだろう。自然科学の用語としての共生は、戦後日本の開発と環境汚染という文脈において人間と自然の関係性として語られてきた。その後、グローバル化と国境を越えた人・モノ・情報の移動が高まることを背景として、また阪神淡路大震災や東日本大震災などの自然災害を通じて多文化(主義)という言葉と結びつき、人間と人間の関係性を示す言葉へと移行してきたといえるだろう。今回のトークでは、このような「共生」という言葉の変遷にある連続性と分断について、現代の環境問題や経済制度の問題点を作品として表現してきたお二人と共に考えたいと思う。これまで環境問題や経済システムなどから発想を経て土・砂糖・塩・ウラン・お金といった多種多様な素材を通して国際的に作品を制作し、発表してきた米谷健+ジュリア。そのモチベーションは「不安」にあると語り、カタストロフな作品は得意分野と冷静に分析する彼らは、数年前から「微生物」に目を向け始めた。無農薬農業の経験をきっかけに地中に潜む微生物の重要性に興味を持ち、体内や海中などあらゆる場所に存在する微生物が生き物と共生しながら世界の均衡を保っているという共通点に気づいたからだという。新型コロナウィルスが引き起こした世界的なパンデミックもまた、見えない微生物が引き金となった。この新たな共生を受け入れて進んで行くのか、私たちは先の見えない時代の岐路に立たされている。グローバルな消費・生産のメカニズムと結びついて展開し、私たちの社会に奥深く埋め込まれた「不安」はしばしば社会の分断を煽るものと理解されているが、「不安」があるからこそ、人間の賢明さはより進化していくとも言える。ミクロの世界からのアラートに耳を傾け、微生物と共生できるポストヒューマンイズムの思想とアートの有様について語り合いたい。

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米谷健(よねたに・けん)
現代美術家兼農家。元金融ブローカー。オーストラリア国立大学School of Art修(修士号)。シドニー大学Sydney College of the Arts修了(博士号)。ジュリアと共に環境問題や社会問題などをテーマに入念なリサーチを行い、独自の手法で美しくも不気味なものへと転換する作品は、インスタレーション、ビデオ、パフォーマンスなど多岐にわたる。ヴェネチア・ビエンナーレ(オーストラリア代表、2009)、シンガポール・ビエンナーレ(2013)、フランスのアビー・ドゥ・モーヴィソン現代美術館にて個展(2014)、茨城県北芸術祭(2016)、ホノルル・ビエンナーレ(2017)、オーストラリア国立美術館にて個展(2015)、森美術館MAMコレクション(2019)など。

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米谷ジュリア(よねたに・じゅりあ)
現代美術家。東京大学総合文化研究科国際社会科学修士過程修了(修士号)、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了(博士号、歴史学)。元ニューサウスウェールズ大学准教授。2009年に大学教員の職を辞し、健と共にアート活動に専念し作品を発表してきた(健のプロフィール参照)。健との共著『Dysbiotica: The Age of Imbalance(ミクロからマクロへ:バランスが崩壊する世界)』(2020、求龍堂)がある。

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川端浩平(かわばた・こうへい)
津田塾大学学芸学部多文化・国際協力学科教員。専門は社会学、カルチュラル・スタディーズ、日本研究(Japan Studies)。著書に『ジモトを歩くーー身近な世界のエスノグラフィ』(御茶の水書房 2013)、共編著に『サイレント・マジョリティとは誰かーーフィールドから学ぶ地域社会学』(ナカニシヤ出版、2018)、Cultural and Social Division in Contemporary Japan: Rethinking Discourses of Inclusion and Exclusion, Routledge 2019.など。最近はラップ音楽とマラソンに向き合っている。

以下、トークイベントの内容

川端:そろそろ時間なので始めたいと思います。今日はポスト研究会の第10回目の企画となります。今までいろいろなテーマでやってきたんですけど、今日は現代美術家の2人である、米谷健+ジュリアさんをお招きして、「アート・共生・コロナーー微生物とつきあうポスト・ヒューマニズム」というテーマでお話を進めたいと思います。
 これまでもコロナと結びつけて様々なことを、ポストコロナといった枠組みのなかで色々なテーマをあつかってきました。この「ポスト」というのは、コロナ以降と言うよりはコロナ以前とコロナ以降にどういう繋がりや連続性があってもう一方で断絶や切断というのがあるのか、そしてそれらがどういうふうに結びついて展開しているのかということを考えてみようということがあります。
 これに加えてポスト居酒屋みたいなイメージがあって、居酒屋的にただ盛りあがるというよりかは、適度に盛りあがって話を深めていくというイメージをもって開催してきました。本日の司会は私、津田塾大学で教員しております川端がつとめます。今日のテーマはおいおいわかっていくわけですけど、今日のイベントをするきっかけになったのが、健さんとジュリアさんが最近出した『Dysbiotica: The Age of Imbalance(ミクロからマクロへーーバランスが崩壊する世界)』という作品集です。あ、持ってない人はぜひ買ってください。このなかに健さんとジュリアさんがこれまでコラボレーションを通じてつくってきた作品が掲載されています。主に2009年くらいから、古いものでいうと2003年からの作品が載っています。今日はこのなかに載っているアート作品の鑑賞をしつつ、そこで扱われている多岐に渡るテーマ、環境問題、宗教、スピリチュアル、先住民、経済とお金、それからセクシャリティというよりはセクシャルなもの、不安とかいろいろなテーマについてお話することになるかと思います。通常ですと美術作品って美術館という空間で身体と一体となって楽しむものだと思うのですが、オンラインという性質上それはかなわないけど、逆に別の空間で展示されてきたいろんな作品に触れて、様々なタイプの刺激を受けつつお話ができたらなと思っています。
 もう1つだけ付け加えますと、健さんとジュリアさんをお招きしたのは、2人とはオーストラリアに留学していた2003年からのご縁があるということです。僕自身はアートをテーマに研究してきたわけではないですけど、ア小さい頃から祖父がアーティストだったということもあってアートというものが身近なものとしてあって、お二人とは色々な関係性のなかで、友達関係も含めて影響刺激を受けていた所。そういった話も追々に色々なテーマと交えて展開していくことになると思います。
 早速ゲストの2人に自己紹介をしていただきたいと思います。

健:米谷健と申します。先程浩平さんのほうからご紹介預かりました、2003年から5年の間にオーストラリアのアートスクールに通っていた時に川端さんと出会いました。それまではサラリーマンをやっいて脱サラしてオーストラリアでアートを学んで、それから、アーティストとして活動を続けています。

ジュリア:米谷ジュリアです、よろしくおねがいします。色々これからお話しますので。まぁ一応、学者もやってだいぶ前に辞めて、ずっとこういうアート活動しながら子育てもやっています。

川端:スライドを見る中でいろいろわかってくると思います。個人的なことをもう少し補足しておくと健さんとは僕の研究室から50mのとこに工房があって、そこによく昼飯をもって行って一緒に食べてました。今日はその作品がでてこないんですけど、そのころの健さんは毎日テトラポットばっかり焼いている状況でした。そのなかでいろんな話をしましたけど、社会全般のあれこれについて、たしかそのころから不安とかそういうテーマがあったかと思うんですけど話したりしてました。ジュリアさんのほうは、大学院の博士論文を書く時の指導をする立場としてパネルに入ってもらって指導されたという関係になります。

健:川端さんのつくってくれた昼飯ね。ビビンバ美味しかったですよ。

ジュリア:学生の中では一番料理出来るという感じでしたね。

健:アートスクールの学生たちが自分で作ってきた食事を持ち寄ってなにかやってるときに川端さんが訪ねてきたんです。浩平さんは、アート作ってる人たちの料理だからうまいだろうと思ったらがっかりしてた(笑)。2人とも実は東京で生まれました。で、そうですね、その次代の東京(70年代初頭の東京の風景写真を見せる)。で、その後、ジュリアが滞在してたのは18ヶ月くらいしかいなくて父親の仕事で、その時生まれた時にはたまたま日本に滞在したんですけど。実際ジュリアと合ったのはずっと後の96年。まだバブルの余韻を残して東京が元気だったですねまだ。
 会ってまもなく大学を卒業しました。それは全然美大とかじゃなくて経済を学んでいたのです。最初二就職したのが為替ブローカーだったんですね。その時は、東京に為替ブローカーか6社くらいあってその1つに入ったんですね。ブローカーが東京外国為替マーケットというのをつくってました。
 今写真にでてるのがスポットデスクと言って、円とドルの交換をしているところです。懐かしの画面になってますが、いまはオンラインの取引が主だと思いますが、前はブローカーが円卓囲んで「売った」「買った」と怒鳴りあってました。そこでしばらくして、デリバティブデスクってとこに移動して、デリバティブというのはもうちょっと大きい金額でギャンブル性が強い。金利スワップと言いまして、金利をの売買。最低単位が10億円 その仲介業に入ってました。そこでしばらく働いていたんですけど、疲れちゃって。で、人生すごく迷いました。その後退社してオーストラリアにいったんですよ。英語ができない移民の為の政府運営の学校に見事合格して、そこでしばらく英語を学びながら人生を探していたんですけど見つからず。それはキャンベラで。ジュリアがphdやり始めたので。それで1年くらいしたらジュリアが今度は文部省の奨学金をとって。

ジュリア:最初の1年は保苅さんとか浩平さんにはまだあってなかったんですね。塩原さんはいたんですかね?

川端:保苅実さんという名前が出たんですけど、僕、健さん、ジュリアさん、それから今日のオーディエンスにいる塩原良和さんを結びつけた人です。オーストラリアの先住民アボリジニの歴史研究をしていた方です。残念ながら2004年に亡くなられました。岩波文庫から『ラディカル・オーラル・ヒストリーーーオーストラリア先住民アボリジニの歴史実践』という本が出ていてとても面白いのでお薦めです。

健:でそこにオーストラリアにいったんですけど1年くらいしかいなくてジュリアが今度は日本から奨学金とって沖縄にいかなきゃいけないということになってついてったんですよ。金魚のフンみたいに。行った先で、いろいろ就職活動して環境コンサルタントとかのぞいたりしたけどそこは環境ぶっ壊してるとこで、そこはいろいろと話が合って記事にもしたけど。紆余曲折あってやっと見つけた就職先がここだったんですね。金城敏男工房というのがあって人間国宝金城次郎の長男。3年前になくなられてるんですけど、敏男に師事して3年くらいこの工房ではたらいていました。

川端:ジュリアさんが沖縄研究していたのが大きいですね。

健:ジュリアが沖縄政治や歴史を研究している間に大田昌秀さんと合ってる、あいまに。自分はここでずっと こんな感じで沖縄の伝統工芸をつくりつづけて、これもつくったんですよ3年間ひたすら作り続けて本当にいい経験だった。普通本土の伝統工房に入ったりすると土踏み三年とかいって、土を触らせてもらえないけど、やってみってかんじでつくらされるんですよ沖縄は。ムダがないですね。昔の仕事は。もう土にしても工事現場とかから入ってきたものを使ったり水なんかも雨水使わないと怒られるし、かんな、削るやつ土を。で、ろくろで使うのもいらなくなった傘の骨をね、トンカチで叩いて潰して造るとかね。ムダがまったくない。いまはそういう伝統を引き継いでいる人が減ってる。農業と同じでムダの多いような。買えばいいようになっちゃってる。そういう感じかないまは。

川端:ここでの経験、これがテトラポットに変わっていくってことですよね。

健:沖縄で3年間いろんなことを見て経験した後、自分の作品をつくりたかったんですよね。そのときに自分は別に伝統壺屋焼を作り続けて過ごせるかと言うと、自分の立場はヤマトンチュでそうでもないし。美大に入って現代美術をやることに決めました。と言っても日本じゃなくてオーストラリア。で入ったところがオーストラリアの首都キャンベラというところにある国立大学のアートスクール、修士課程。

ジュリア:最初は経済問題から(パワーポイント画像を見つつ)。前回講義のときに用意したパワーポイント。

健:アートスクールに入って、まぁ伝統工芸じゃなくていきなり、何をつくるかとかいろいろ考えさせられたんですよ。それで、一応ね、最初につくった作品というのは後で紹介させてもらうんですけど環境問題。そこから入っていったんですね。なにかテーマを決めて入っていった。そうですね、そこにコンセプトをいれてなにかメッセージも織り込めてって形でつくった。特に海外のアートスクールではクリティックというクラスが週一回あって、作品もっていって批評しあう。自分でしっかりと説明できないとそこでコテンパンにやられるというのが強くて。メッセージ性あるような作品をつくっていくようなことをやりました。

川端:健さんと会ったばかりのころでよく覚えてるんですけど、日本の美術系の大学からも留学生が学びにきていていろんな作品をつくってるんですね。僕も日本で芸大で学んでいる友達とかいて作品を見てたんですけど、それらの作品とくらべると健さんの作品って異質でした。どちらかというと日本の芸大に通っているいってるが学生たちがつくってるものって既視感があったというか。器用な手つきで作られた作品はどこか工場で大量生産されたような既視感がありました。そこには素人である僕が介入するような感じの余地やインスピレーションがなかったんですね。健さんの作品はそれらとは異質でずば抜けてユニークだったという印象です。

健:ありがとう。まぁ、日本のものを引きずったりそういうのも嫌だったんですね。で、なにか全く、自分も日本の芸大でてないのでトレンドもわからない状態で始めたので、それはそれでよかったのかなと思います。

ジュリア:ある意味中間みたいなところをとろうとしているというか 欧米だとコンセプチュアル・アートは、わけわからないの多かったりするんですね。美というものを追求しながらというのはある程度やろうとはしていますけどね。なんでこの写真最初に入れたかと言うと、最初からもう経済から、話そうかって思って。でなんか不思議なのは日本ではあまり話題にならないんですけどアメリカだとジャパニフィケーションという言葉がすごい使われてて。聞いたことあります? 日本化という悪い意味で使われていてそれはなにかというと高齢化、国の借金が高等する金利がずっとマイナスみたいな感じで全く 政府がもうじゃんじゃん借金ばっかり増やしてそれをどうにかするためには中央銀行が国債をカイマクルという構造ですけど全然話題にならない。

川端:その事実については認識を共有していると思うけど、ジャパニフィケーションみたいに外から見てやばいぞって感じるような感覚はないですよね。

ジュリア:アメリカで特に話題になってるのはFED(米国連邦準備制度理事会=米国の中央銀行)がコロナになってからたしか、日本でいうとなんだろう、three trilionっていう額の国債と株ETFで社債とか買いまくってるんですけど。一番それ先にやったのは日銀で、もう2013年からすごく、すごい額を投入してるんですけど日本の経済にいろんな問題があると思うんですね。民主主義的な問題とか、中央銀行が 勝手に会社のETF買っていいのかとか、でもあまり話題にならない。アメリカでは話題になってるのは、なぜかというと貧富の差。国がお金だして大富豪が儲かってるのに結果的には5000万人が職を失っている。

健:実体経済が悪くなればなるほど失業者がめちゃくちゃ増えて雇用統計の数字が悪い。でも悪いと下がるのが一般的だったのが、実体経済を無視して、悪くなればなるほど中央銀行がお金をばらまいてくれるだろうという期待感で上がっていってる。世界の株価みてると特に日本のマザーズっていう優良株ばっかり扱ってる所と、それとナスダック、それもアメリカのトップ企業、それから中国の上海株式市場その3つがコロナ以前よりさらにあがってバブルをつくってるんですね。それはもう明らかにばらまいたお金のあぶく銭。

ジュリア:これうちの作品じゃなくてマイケル・ランディという人の2011年にあったものですけどクレジットカードを女性に渡せばそれをシュレッダーにいれて処分してくれるんですね。クレジットクランチ(金融信用危機)っていう名前で、機械がクレジットカードをシュレッダーで潰しながら絵を書いてくれるっていう作品ですけど。喜んでみんなつぶしてもらったっていう。あとこれは自分たちが作った作品で3年前2017年のsカウ品なんですけど、さっき浩平さんがいってたStimulus Packageていう日本語タイトルは「景気刺激策」ブラックジョークな作品で、BONDSっていうオーストラリアの男性用下着メーカーがあるんですけど、国債(Bond)と男性の陰部の意味があるパッケージ(Package)っていう言葉遊びも入ってます。つまりアレへの刺激という。

川端:この作品集では、タイトルは日本語と英語の両方が併記されていますね。こちらが「景気刺激策」、英語ではStimulus Packageでけどいろんな意味がこめられている。

ジュリア:このときにfor saleのところにアメリカの政府の借金の額をいれているんですけれども、そのときは90 trilion。この3年だけで。一応G20の20カ国というのをやって、これ最近のそのさっきいった、お金を出しているという話しですね。コロナがでてきてからバランスがとれなくなって最終てきにはお金の価値がなくなると思いうんですけど。

健:ひっちゃかめっちゃかになって、もうとにかくお金を出す以外にないんですよね。ほとんどコロナはきっかけであってその前からゾンビ企業っていう言葉があると思うんですけど日本のトップ企業とかでも大株主は日本中央銀行。日銀になってるんですね。黒田さんが買いまくってることがなければ倒産している会社って結構あったと思うんです円。そういう感じで自分たちは「未来から借りた時間」というふうに言ってるんですけど、借金というのは未来から借りた時間だと思っているんですね。それを今一瞬一瞬で消費してしまってるので自分たちの子孫たちの分の富を使い果たしているような状況ですね。

川端:この本のDysbioticaというのは造語なんですよね。あとでも説明があるかと思いますが、腸内細菌のバランスが崩壊するといったメタファーですよね。

健:それとの繋がりというのはこのような世界が、小さな見えない存在によってちゃぶ台ひっくりかえされてあたふたしてるかんじ。それは経済至上主義でいまの科学や医学が小さい世界を蔑ろにしてきた。それが環境問題につながっている。この環境問題とお金は密接に絡み合っているので自分たちは環境問題やってきたけど17年の作品では経済に特化して東京のミヅマギャラリーというところで発表した。

ジュリア:写真の一番上の白いとこが中央銀行がだしてるお金の量が増えてることをあらわしている。

健:リーマンショックのあと2009年からダーッと増えてるんですね。山一証券がつぶれた97年の翌年にも景気刺激策として銀行、証券会社を救済すべく、公的資金投入という言葉つかって日本が一番最初に銀行にお金をつぎこんだ。

ジュリア:そういうテーマでつくってみたんですけど。

健:これは「はだかの王様」というタイトル。英題はEmperor's New Clothesというタイトルなんですよ。これはアンデルセンの「裸の王様」から着想を得て作ったんですけど、このタイトルのミソは、英語だと裸の王様がnaked kingにならないんですね。英語ではEmperor's New Clothes、つまり皇帝、天皇の新しい服という。自分たちがつくったのはこれは天皇の束帯です。1000円札でできてるんですけども。お金という存在とか、実態はなんなのかなという。こういうばらまき政策があるなかでは常に感じてしまうんですね。お金というのは紙なんですけども、紙が、なぜここまで価値をもっている。これは本物です。

川端:経済の緩和政策がモチーフですよね。

ジュリア:勝手につくってるわけじゃないから、お金。結構お金かかってしまったんですけど(笑)。

健:印刷してるわけじゃないのでね(笑)。自分たちの気持ちを脱構築しないとつくれない作品ですね。最初は泣きながらつくってましたよ。でも途中で吹っ切れるんですね。

川端:総額がいくらかっていう質問がきてます(笑)。

ジュリア:まぁ100万円くらいです。なんで1万円札使わなかったかっていう質問来るんですけど計算するとおわかりだと思います。

健:よく聴かれるんだよね、みみっちいなって。でも金がかかるっていう問題。それから野口英世のデザインが面白いよね。見つめられちゃうような強烈なデザインで、後ろに富士山があって。

川端:福島県の猪苗代町出身の人ですね。

健:へ~! 福島出身でしたか。

川端:じゃなかったかな。

健:で(次の画像)いきなり農業なんですけど。

ジュリア:経済は農業とつながってて。有機農業やってるんですけど有機農業もすごいお金にならないのが現状で。

健:農業というのもシステムがものすごいお金が落ちるような産業、インダストリーになってるんすよ。JAを通して種を買ってそのときに種を植える前には除草剤をまいて土がそこで死ぬんですけど、地力がないから農薬。化学肥料が必要。トラクターを使う。昔は牛使ってたけど、トラクターが壊れるとめちゃくちゃお金かかって野菜うっただけじゃもととれない。

川端:この作品集の最後のところに、「百姓は芸術だ」という文章が掲載されていてとても面白かったです。百姓とアート。健さんの肩書きも現代美術家兼農家ですよね。

健:百姓の語源が、つまり姓というのは肩書きなんですよね。百(あまた)の姓を持つ。だからある時は酒屋さんだったり大工人職だったり家も自分でつくったした。自分たちが住んでる茅葺屋根も何百年前につくられたけど農家の人達がつくった。そうするとアーティストというのもアーティストといってもなんでもやってるんで、百姓でしょうね。
 職業として胸を張って言えるのか。よく飛行機搭乗した際に渡される入国手続書の「ご職業」って欄に、なんて書いたらいいか迷っちゃうんですね。そういった感じで、百姓やってみて思ったのはそこでなに世界をつくっていくというのもアートだなって2人で話し合って、これアートプロジェクトだなって思って。それ自体なにかを発表してるわけじゃないけれど。

ジュリア:発表してるよ(笑)。

健:これ自分たちがつくった無農薬のお米なんですよ。これは俵にして、昔は通貨システムが今のお金は紙幣か硬貨。それが昔は、こういうお米もお金と同等に取引されていて、それで給料が支払われていたという。現ナマの語源というのは、今でいうお金が、要するに生のものを取引していたから。自分たちは現ナマと経済の問題を扱ったときに1つの作品としてここに、お米を展示しました。

ジュリア:これは1年間の位が低い三一侍(さんぴんざむらい)の給料。

川端:経済と生命がつながってるってことですよね。

ジュリア:これ見ると1年間の給料が少ないと思うんじゃないんですか。食べ物の今の価値でいうと。食べ物の価値が凄い下がってて、いま。経済システムでいうと低いんですけどたぶんこれからまた上がると思います。

健:生産量も化学肥料とかであがって、江戸時代と比べると3倍の収量がある。キロでいうと小麦は40円で取引してるんですね。それが国際価格と比べると、年間600kgとれるとすると40円だと24000円? そんなもんだよね。お金にならないんですよ。それだけ、やっぱりみんなが食べてる食料というのは安いんですけどもなにかの犠牲の上になりたっていると。やっぱり自然にかなりの負荷を与えている。

ジュリア:微生物。これは一番最初につくった米と黒豆のご飯。

川端:いまのは醤油がかかっているんですか?

ジュリア:納豆になってる。

健:黒豆納豆。それでね。ええと、まぁ環境というのと、自分たちが着目しているのがお金の動き。自分が敏男工房をやめて最初につくった作品というのも、環境問題だったんですね。それはおそらくまぁ何をつくったらいいのかなと。大学入って、普通の陶器つくるわけじゃないのでなにかテーマを決めてつくってくださいっていうときに難しくて頭に浮かんだのが小さいときから気にしてた環境問題ということでなにかやりたいなと。

ジュリア:浩平さんこのときいました?

川端:確か健さんがアートスクールに入ったときに、沖縄で陶芸をやっていたということで、教員たちは民芸風なオリエンタルなものをつくるのかと思っていたら、健さんは絶滅危惧種の蝶とか環境破壊をしているテトラポットをつくるものだからもめてるんだっていう話しをしていたのを覚えています。

健:これはオーストラリアの絶滅危惧種の蝶を 科学研究期間CSIROという国の科学研究所があったんですよ。そこに、ちょっと絶滅危惧種の蝶を研究しているひとを尋ねて情報をもらって、2003年、11種類の絶滅危惧種の蝶があったんですね。それをかたどったこわれやすいタイトル。ひたすら2000枚つくって6ヶ月。で2000枚つくってここのCSIROの博物館の入り口とギャラリーをタイルでカバーして。浩平さんはこのときはまだきてないんじゃないかな。この直後だったと思うけど。これはどういう作品かというとこれは全部...タイトルは「踏み絵」っていうタイトルなんですよ。蝶をかたどっているんですけども、どういう作品かっていうと、全部敷き詰めた上を鑑賞者に歩いてもらうっていう。歩かないともう入ってこれないわけですね。最初はなかなか人の作品壊すみたいな感じでちょっととまどってたんですけど、1人入ったらあとにダダダッという感じで。ポケットにいれてもっていくひともいればフリスビーみたいに投げる人もいて30分くらいで全部こなごなになってしまいました。こんな感じで。

川端:たしかこのあとに、踏み潰されたタイルを集めてきて曼荼羅をつくるというインスタレーションのビデオ作品をつくってましたよね。

健:結構これは体に負荷がかかって激ヤセ8kgくらいやせました。

ジュリア:ビデオもウェブサイトでみれます。その後は。

健:今度は陶芸をやめて、砂糖でなんかつくろうって話。沖縄に住んでいたときから砂糖畑に囲まれてたんだけど、砂糖畑と珊瑚の死滅 オーストラリアにいる時有名なドキュメンタリーをみて、砂糖でなにかつくりたいと思い立ちました。

ジュリア:微生物という意味でもサンゴ礁がすごい面白くて、サンゴ礁の研究をやってた人たちが微生物と共生してるという意味での重要性を研究していて最近になって人間も遺伝子を読み取る技術がでてきて、その分析のおかげで実は自分たちもものすごい微生物がいるっていうことがこの20年くらいでわかるようになってきてて。

川端:この作品の背景の理解として、砂糖をつくるときの農薬とかそういったものが海に流れ出すことによってこの珊瑚の白化がおこるということですか?

健:ストームがくるんですよ。砂糖畑つくるってすごい化学肥料使うんですよ。

ジュリア:それだけじゃなくて珊瑚のなかにも共生があるでしょ。なんだっけ。

健:要するにポリープという褐虫藻に微生物がくっついってて。

ジュリア:生きるために必要な微生物がいてそれがもう最初に減っちゃうから、中のポリープも死にだしてディスバイオシスのバランスが崩れて、病気になって白化していく。

川端:植民地主義的な経済の背景がみえてきますね。

健:砂糖が植民地と密接に結びついてて、中世時代からヨーロッパの植民地だったところに奴隷使わないと暑いから働けないから色の黒い人達つかって。イギリスの産業革命とも密接に結びついていた。産業労働で働いていた人たちがチープなジャムとか食パンとかでね、あと、紅茶に砂糖いれてなんとか1日のカロリーをとっていたという背景。消費社会と砂糖というのを結びつけると割と。欲望と砂糖と環境破壊というのをテーマにつくった作品がこの、スイートバリアリーフという作品なんですけど グレートバリアリーフをもじったんですけど。

川端:薩摩藩というコメントがありましたけど!

ジュリア:砂糖産業が沖縄で盛んになったのは明治に入ってからかも知れないですけどね。

健:これは砂糖を何トンもつかってつくった作品です。皮肉に、禅の精神を盛り込んだ龍安寺の石庭みたいにしています。これをわざとエロティックにセクシャリティをこめてつくっています。よくねアイスクリームとかコカコーラとか甘いものの宣伝というのはかならずセクシャリティと結びついてみんなの心に残るようなイメージを焼き付けるんだけどそれが中毒になる核心かもしれないですけど。
 イタリアベネティアでやったときもファッションモデルをやとってこの人達めちゃくち身長たかくて180cmくらいあるんですよ。しかも、痩せててドレスがずれおちるというのがあって、いろんなことで受けて、自分たち作った作品よりも女の子目当てで追っかけがきて、なんども来ては写真とるとかっていうこともありました。女性たちがここでもってるケーキというのが食べれる彫刻で食べれるほうは色つけたんですけども。それとストラウスの『美しき青きドナウ』というワルツの音楽に併せて、モデルたちが踊って食べれるケーキを配るというパフォーマンスをやりました。

川端:味はどうなんですか?

ジュリア:結構美味しかったです。イタリアの特別な長持ちするケーキで、シェフにつくってもらいました。でも他のときにやったときには美味しくなかったです(笑)。

健:これはベネチアの有名なケーキ職人がつくりました。結構人気であっという間になくなりました。

ジュリア:コロナだともうできないですよねこういうの。他のこれと関連する作品で2016年にキャンベラで国立美術館の前のパフォーマンスだったんですけど100mくらいの長いテーブルを用意して全部作品自体が全部ケーキという感じでつくってそのときに、みんなが最初回って見ながら食べていくっていう、その作品は「最後の誘惑」というタイトルだったんですけど。

健:そのときはカルテットによる『美しき青きドナウ』の生演奏で。2001年宇宙の旅の最初のシーンでクラシックかかってるでしょ。ストラウスのあの音楽。

ジュリア:ふんふん〜(歌を歌う)。

健:それをわざとかけて。なんでかというと、それはね商業主義の最初の音楽だったんですよ実は。それまでワルツというのは封建時代は王様や貴族たちが、その曲は商人=ブルジョワの曲だって蔑んでたのです。ブルジョワたちがワルツをきくようになったんですね。そういうのもいれて演出しました。その次に、砂糖でつくったあとに、偶然あるキュレーターからよばれてオーストラリアのMilduraというところでレジデンシーしないかと。滞在型のアート制作する、呼び方なんですけど、ここは塩害がすごいから塩でなにかつくれないかってことでどんなとこかいってみました。

川端:砂糖から塩へという流れですね。

健:これは塩なんですよ。塩の山。そこは塩害がひどくて、なぜ起こったかというと、今から100年くらい前に、ここの乾燥地域に農業をもってきた。感慨事業を大事規模にやって水を川から引いて農作物を育てることに成功した。広大な葡萄畑を築きました。そのために木を伐採して。

ジュリア:地下水。塩水が強くて。川がしょっぱくなってしまって、川の上流じゃない方、入り口のところに住んでる。アデレードにいる人たちは水が飲めないくらいにしょっぱくなってしまって影響ではじめたのでオーストラリア政府がいろんなところに地下水とってそれを川と離れているところで流しっぱなしにするという政策をとって。これは90年代ですね。今でも問題は起きてるんですけれども。

健:ポンプで塩水を組み上げてどっかにためるっていう生命維持装置つけないとだめ、はずしたら即死みたいな。木を切ったことによって、根っこで地下水があがってこないようにおさえつけてたのがなくなったのと、水をどんどんばらまいているので呼び水になって下から上に上がってくるっていう現象が起こっちゃった。これは世界的にも起きているようで。

ジュリア:これは最近起きた現象ですね。水がしょっぱくなったり、潅水がなくなったりして、酸素。これはその最初に農業のやりかたを、やり始めた有名な人達、カリフォルニアからやってきたチェイフィーブラサーズっていうエンジニア。

川端:プランテーションですね。

健:灌漑事業の技術者だったんですよ。

ジュリア:最初は比較的コンパクトな塩の作品の発表して、そのあともっと大きいものをつくろうってはなしになって、最後はこれは思い切ってデッカいのを作ろうかと。「最後の晩餐」っていうテーマで長さ10メイートル、重さにして何トンも塩を使って作りました。

健:これ全部支柱とかテーブルも全部塩なんですよ。食べ物なんかもMilduraで実際の食べ物なんかも型に
とってそこに塩を流し込んでつくったりしたんですね。

川端:砂糖と塩って、作品をつくるときの感覚というか技術的なものって何か違います? 砂糖は固まるっていうイメージですけど。

健:ぜんぜん違う。砂糖のほうがかんたん粘土みたいにこねられるし。塩はすっごい難しかった。最終的には違う種類の塩とテストで組み合わせてなんとか固まるっていうとこまでいったんですね。

川端:作品をつくるときに、大量の砂糖や塩に囲まれたりとか、あと陶芸だったら埃とか、そのようなものたちと長時間つきあっているとどういう感覚になるものですか?

健:砂糖に囲まれてたらアレルギーになってひどいことになってマスクとかゴーグルつけてないと目が痒くなって歯が2本とれたし、味見とかたまにするから。塩は気分がよくなる。アレルギーとかない。砂糖は毒みたい。展示会終わった後、砂糖を肥料にできないかと思ったけど。それは毒だからだめだよってCSIROの科学者に言われました。精製されてる白いやつはだめなんですよ。茶色いやつだったらいいんですけどね。 

ジュリア:インタラクティブ。そういう意味で作りました。アートフェアでなにかだしてくれないかっていうことで塩の作品をただ出すだけじゃなくてスーパーマーケット作ろうって話になって。 

健:ブース代(場所代)は、ものすごい高いんですよ。そこに高い絵とか飾って展示するんですね。

川端:「世紀末スーパーマーケット」っていう作品ですね。

健:場所が場所だけになにか面白いことできないかってそこを八百屋にしました。ギャラリーにはもうしわけないけど。それで全部自分たちでつくった果物や食べ物並べて。プライスは近未来を予想してハイパーインフレーション。ばかみたいな値段つけてるんですよ。たとえばパイナップるが1個2~3万したかな。そういう値段で。でも意外と売れるんですよ。

ジュリア:結構売れましたね。

川端:何が人気でしたか?

ジュリア:すぐ右側にみえるオイスター。牡蠣。

川端:何でですか?

ジュリア:結構いやらしいんですよ(笑)。

川端:そういうメタファーですよね。

ジュリア:割と値段的にも安くて。

川端:いくら?

ジュリア:7000円くらい... 100ドルくらいでしたね。

健:でもね、そういう時代もきますよ。本物がそこまでいくっていう さっきいったみたいにお金ばらまいてれば 裸の王様じゃないけど。

(311の福島第一原発の爆発写真)

ジュリア:浩平さんは日本にいました? このとき。

健:これつくってたときオーストラリアにいたんですよ。ジュリアがそのときにあがってきてって話して上まで上がっていったら津波の映像だったんですね。それで精神的にかなりまいってしまって、そのあと、何か自分たち、事故にこたえた作品つくりたいなって思って。素材にいままでこだわってきたのでなにがいいかねっていきいたらウランとかっていうんですよ。そうしたらウラングラスっていうのがあるんだって話になって。聞いたことなかった。

ジュリア:ウランガラスって見たことある人いますかね?

健:ガラスの中に比重で0.2%くらいのウランが溶けて混ざってるんですよ。それに紫外線をライト...UVライトを照射すると光るんですよ、緑色に。実際の色は黄色っぽいかな。今から見せますね。どんな感じで光るか。普通に。

ジュリア:もうちょっと近づける。こんな感じ。反応して。

健:かなり不気味に。

ジュリア:これがコロナウイルスを殺すっていう話もあるんですけど、逆に安全じゃないか。

健:UVライトって、くっついてるとなにか害があるんじゃないでしょうかって、お門違いなこと言われたりもするんですけど ウランガラスをつかった作品をつくり始めました。で、それで、最初にね、何を作るかということで、アボリジニの話で、「緑アリのドリーミング」という話があるということをジュリアが調べてきたんですよ。なにそれって話で。 
 それはアボリジニの伝承の話のなかで、古い話ですけど大地を掘り起こしたときにそこの大地を掘り起こすとたちまち巨大な緑アリが現れて世界を踏み潰すだろうという伝承があるんですね。
 場所がオーストラリアのアーネムランドというところにそういう伝承があるということでいってみたんですよ。すっごい遠いんですけど1年に数週間だけ渡ることができる「アリゲーターリバー」ていうクロコダイルがウヨウヨいる三途の川のようなとこです。普通に渡ったら食われちゃう。河口付近なので潮の満ち引き、川があがったりさがったりする。その一番ひいてるときにいかなきゃいけないので4時半ピッタリに川をランドクルーザーで航るっていうことをやってそこにたどり着いた。そこはなにかというとその伝承があるところなんですけど、そこに大きなウラン鉱山が開発されたんですよ。70年代。そこからウランが採掘されたんですけどアボリジニが反対した理由が「緑アリのドリーミング」。それがあるから反対していたんですけど、最終的には金を積まれて...。

川端:ドリーミングというのは? 簡単に説明してもらえますか。

健:先住民の伝承のことでいろんなドリーミングがあるんですけど、法律みたいな感じでたとえばあそこの川はカンガルードリーミング、カンガルーにまつわる話がある。いろんなところにいろんな話があるんですね。

川端:仏教とかでも仏の教えを伝えるためのお話がありますけど、それと似ていて、法律や歴史観が一緒になったような世界観ですよね。

健:話によって生きていく上で持続可能な社会がつくれるような話がいろいろあって緑アリドリーミングというのも警告だったり教えだったり。そういうのをやぶって採掘が始まって、掘られて出てきたウランというのが確実に日本に運ばれて、で、原発の燃料になったと。そういうようなバックグラウンドがあって、そこに行ってみました実際。後ろに見えるのはレンジャーウラン鉱山。まだ採掘稼働しています。もうしまった? 閉山したっけ?

ジュリア:かもしれない。

健:長らくそこにあったウランマイニングは全部とりつくして終わっています。で、それにちなんだ作品をつくりました。これが、6mくらいの大きさのアリです。

ジュリア:森美術館でも去年展示しました。(次の画像)これなんだか分かる人いますかね。福島と重なっちゃったんですね。なぜか。あの、クリスタルパレスというイギリスの建物なんですけども。

健:ハイドパークにあった。

ジュリア:万博やったのは1858年くらいですかね。で、1930年代に焼けちゃって。

健:最初に立てられたクリスタルパレス 多分大友克洋のスチームボーイにでてくると思うんですよ。

ジュリア:近代化の素晴らしい可能性と植民地の豊富な原料とか、自慢しながら展示していたところなんですけれども。そこから名前をつけてシャンデリアをつくって。

健:全部原発保有国エネルギーつくってる国。

川端:「クリスタルパレス」っていう作品ですね。

健:万国博覧会みたいな形にしたんですね。ガラスの原料はIAEAが出してる資料があるんですけどどれくらいメガワットっていって電気を原発からつくって消費しているかっていうね、そのサイズにあわせていちばん...たとえばナンバーワンがアメリカで2がフランス3が日本だったけど原発事故で閉じてしまったので、3番目にいま中国があがってきてる。

ジュリア:もっとあがってきてるかもしれない。

健:展示してたら中国の、もうなんか、お金持ちの人たちが観に来ててて、中国ちっちゃすぎるよって、自分たちがつくった中国ちっちゃすぎるっていわれたんですね。最近IAEA確認したら中国めちゃつくってるんですね。

川端:もう一回、お金を出してもらって作成したらどうですか。

健:だからつくりましたよ、どデカイの。琉球大学の大瀧研究室の協力でつくった蝶の作品です。3つの願いっていう作品です。ティンカーベルね、ディズニ―のキャラクターですけども、ディズニーというのは戦後、日本も含めて世界に、nuke industry、つまり原子力産業の広告塔になったんですね。これが1つの本なんですけども、「我が友原子力」ていう日本テレビ。日本語に翻訳されて映画にもなってるんですよ。それは原子力は明るい未来をつくるっていうストーリーで。

川端:1956年頃の作品でしたっけ?

健:本が最初でアニメ化した。正力松太郎さんが日本にひっぱってきて放映した。ディズニーのキャッチフレーズを集めてウランガラスでつくった作品。漢字で書いてあるトゥモローランド、イッツ・マジックとかwishesとか、そういうキャッチフレーズを作品にしました。この作品は2010年のパフォーマンス。ジョン&ヨーコのベッドインを改めてgolbal warming is overっていうメルボルンのフェデレーションスクエアっていうところでやりました。めちゃあつかったですね。渋谷ハチ公前みたいなとこなんですけどそこにベッドを置いて熱風40度。脱水症状おこして、観に来た高校生なんかにねヅラとられて後ろから追っかけていったりいろんなハプニングがあったんですけど、途中で交換してみたら、意外としっくりきてジョンじゃんみたいなね。

川端:オノ・ヨーコさんにも許可を取ったとのことですよね。

健:返事ないかなとおもったら秘書のほうから返事がきて本人いわくがんばってくださいって、あぁよかったって思って。アート業界の人はこなかったけどテレビの人はきててうけてました。バカがいるみたいな感じで。あぁこれはウルトラブッダっていう作品で。オーストラリアいくとお金持ちそうな人のなかに仏像...、ブッダがしかも本物。インドネシアの中世時代からもってきたような。それをみてて違和感感じたのと刺激を受けて自分のスタイルの仏像も作ってみたくなって。

川端:宗教的なもの、スピリチュアルなテーマが展開してそれがウルトラマンっていうことですね。

健:で、これが最新作のほうに説明いくんですけど微生物。自分たちが農業体験から培った、知識というか、観察してて、5年位農業やってるんですけどそこで観察してみてきたものを作品化しようと思って去年オーストラリアのクイーンズランド工科大学の微生物研究所にはいって研究者の話きいたりアーティストレジデンシーというのを1ヶ月くらいやりました。

ジュリア:この写真は違うアーティストがとってる写真なんですけどバチルス菌=納豆菌時は、なんでこんなきれいな模様ができるかというとコロニーみたいなのが増えてて、ある種の信号を送ってるんですよね。外にいる微生物たちが、なかに信号を送って、どのくらい食べ物があるのか。それによって中心にいる微生物が、増やすか増やさないか、信号を送っている。微生物っていう、すごい仕組みになってるんですよね。で、その、食べ物があるかどうかということによって増えるのか増えないのかっていう、そこできれいな模様ができるみたいなんですけど。

健:微生物って電気信号でコミュニケーションとってるみたいなんですよ。その工科大学でも研究してるひとがいて自分たちの体の中の細菌が脳とコミュニケーションとってるっていう。腸内細菌のバランスがくずれたときにその影響として、脳とコミュニケーションとってて、鬱になったり精神疾患に陥りやすい。自閉症ももしかしたらそれと関係あるんじゃないかって話があって、微生物というのを考えると自分と言っても、微生物ひっくるめての自分であって、自分を意識すると他者というものが崩壊していく。

ジュリア:細菌は、ものすごいスピードで環境に適応しながら変化していくっていう、実に対応が早い感じですよね。

川端:鬱病とヘルペスとの関係性も指摘されていますよね。疲労やストレスなどをきっかけとして現れるということだったと思います。

ジュリア:まぁウイルスも、ですから、変化が一番早い。環境によって対応できる、存在というか生きてるかどうか微妙なんですけど。

健:進歩のスピードめちゃくちゃはやいんですよ。

ジュリア:ウイルスによって進化してるんじゃないかっていう説。

健:腸内には人の細胞よりも細菌のほうが多いっていわれてるんですね。それくらい自分たちが微生物と一緒にくっついてる状況で生活している。バランスが崩れてくるとあるウイルスが増殖したりとかいろんな問題を起こしてくるっていう話です。

川端:お二人が作品をつくるときに、どういう感じで細菌や微生物をイメージしているのかなってところは興味深いです。

ジュリア:浩平さんは自分が人間的だと思ってるけど、実はお腹の微生物が信号を送りながら考えてるんじゃないですか。浩平さんは浩平さんだと思ってるけどいろんな微生物が機能してるわけで。

川端:僕の場合は自分で自分をコントロールしているという認識があるんだけれども、たとえばリトル浩平がビッグ浩平を管理しているというような主体イメージを持っているけれど、実はそれを支配しているのは微生物だということですね。

健:生花でも「真(しん)・副(そえ)・体(たい)」という考え方があって、大きいものから小さいものがバランスをとりあっていると、ある生花の先生がおっしゃってました。特に小さいものが大きいものを支えている。

ジュリア:悟りというのももしかすると微生物と対話してる状態だといえるかもしれません。

健:そういうような世界を、たとえばね、アボリジニとかは、見えてたんじゃないかなって思ったりしたんですよ。去年クイーンズランド工科大学で滞在していて、美術館にいってみたときにこれはって思ったのが、それまでぼーっとしかみてなかったアボリジニの絵。無数のドットで描かれた世界は、正に微生物の世界。ある絵なんか、正にDNAの螺旋構造なんですね。これ、あまり言っている研究者はいないんですよね。見えてたんじゃないかと思いますね。

川端:言語ではなくてドットで表現してるわけですね。

健:そうですね、粘菌学者の南方熊楠も面白い学者ですよね(チャットの指摘に反応して)。

ジュリア:そうですね。人間だけは環境と接触して、変化していたっていうふうに...。たとえばダーウィン的な見方、進化論、ヒューマニズムとともにでてきたんですけど、ポストヒューマニズムというのはそうじゃなくて実は最初にウイルスというのがあってそのウイルスを通して世界が進化していってるんじゃないのっていう。自分たちが主体だって思っていたのが、そっちのほうが主体かもしれないですよね。それを90年代にはじめに考え始めてたクイーンズランド工科大学のリチャード・ジェファーソンという科学者なんですけど、彼が最初に言い出した「ホロビオント」。ホロジウムというホロジウムビックエボリューションっていう概念があって、人間を人間としてみるのでなく、微生物とどう関わり合いながら進化したかを見ないと話にならないっていうことを言っています。

川端:この作品が「生命の糸」ですね。複雑な生き物界の連鎖が表現されているんでよね。

健:つながりを表現しました。これはタスマニアのホーバートの海洋学者とのコラボレーション作品です。その学者は、海の食物連鎖の研究者だったんですね。海の生物は、すべて食物連鎖でつながっている。ある種の魚が漁獲されて消滅した際には、連鎖の糸が途切れるわけで、そこを如何にして再連鎖していかなきゃいけないか。なにか違う連鎖をつくることによって、うまく再生できないかとか色々考えてる人なんですけど。これを釣り糸で、光る釣り糸あるんですよ、UVライトで。ところどころに、ドットみたいにみえるのは浮き玉なんですけど、作品は、最後に子どもたちを招待して、切ってもらうんですよ。それをもう1回つなげて直してもらうんですよ。1回切ると難しいんですよね、再生が。直径5m、奥行き10mくらいあるんですけど、ちょこっと切ると、どさっと落ちちゃって再生不可能みたいな感じになっちゃうんですね。
 で、これは(次の写真)最新作で来月三潴ギャラリーで8月18オープニングで見せるんですけども...

川端:これはさっきジュリアさんがいってた主体のイメージが表現されているのでしょうか。

ジュリア:あとサンゴ礁との関係もあるので。

健:全面に内臓がでてきちゃったみたいなイメージもあるんですよ。

ジュリア:去年から作り始めたんですけど、ちょうどコロナがでてきて、時代にあってる作品だなって思ったら今度は展示できる場所もなくなってしまって。

健:コロナでわーってなっちゃったから早く作って、ここを引き上げないとっていう感じで一生懸命すごいスピードでつくって。展示会は軒並みキャンセルとなってしまって。

川端:作品集にもどりますけど、解説を田口ランディさんがほとんどの作品を網羅しながら素敵なエッセイを寄稿されていますね。その中にたしか内臓のイメージとかに関する記述がありましたよね。

健:田口さん選んでよかったなって思うのは 美術評論家とかに頼むと分析的になるんだけど、実は田口さんは自分たちの作品を生で見たこと無いんですよ。写真送って見てもらって、話もインタビューして聞いてもらって。

川端:オーストラリアにいたころにシドニーのチャイナタウンに海賊版DVDを売っているようなお店があって、田口ランディさんの『コンセント』のDVDを購入して観ました。この映画のもとになった小説のテーマ自体がすごい面白くて、確かこのあたり作者の個人的な体験などがシンクロしているのだと思うのですが、兄が孤独死していて、その死を表現するときにウジ虫が出てきたのがとても印象的でした。

ジュリア:信号をおくってコンセント。その小説の中でも、スピリチュアルな意味でのメッセージの伝達が描かれていたと思いますが、微生物の世界でも、電気信号みたいな形でコミュニケーションとってますよね。 

健:2002年だったか、「コンセント」「アンテナ」「モザイク」の3部作、あれを読んだときに小説で、結構ね、すごい感性がいい人だなって思っていて。ずっとファンでした。頼めるんだったら頼みたいねって、前ジュリアが随分前に取材したことあるんですよ。そのコネもあって。頼んでみたらそれ自体がアートみたいな作品として寄稿文を書いてくれたので。

ジュリア:いい意味でアートと文学の共生みたいなものも本の中でできてるんじゃないかなって。

健:だからスピリチュアルな感覚をもってる人なんですよ、田口ランディさんっていうのは。自分たちの作品をうまく、こう違う形で表現してくれるかなって思って投げてみたんですね。自分たちも描く時に、スピリチュアルに描きたいなって思うんですよ。なんかこう見た目でもね汚い感じで描きたくないし。

川端:スピリチュアルって日本語のカタカナ表記だとどうしてもサブカルチャー的なイメージに回収されるのですが、そういうマーケット的なものではないイメージで、スピリチュアルって言葉にするとどんな感覚なんでしょうか。

健:さっき話したアボリジニの話じゃないですけど、そういう話を聴いた時にビビビってきちゃうのはそれがすごい昔からの話があって。現実的に福島でそういうことがあってそこの燃料を使っていた。時空を超えたなにかスピリチュアルなものを感じるんですね。農業やってるときも土の中の微生物たちのマジック力によって、きゅうりやなすができている。それらを自分たちが食べている。

ジュリア:繋がっているっていう感覚みたいなのがあるんですかね。繋がってるっていう感覚で考えていない社会だからこそなにかこう、コロナという小さいものでひっくり返されている...教育から大学までストップしている状態、なにかすべてがやられている。そのときにいいチャンスなのかなって。

健:アルコール消毒で手を洗うってそれは1つの手なんだけど手にくっついてるいい微生物も含めて全部殺すっていうそれが科学のやりかた。全部叩く。ラウンドアップっていう除草剤をまいて全部雑草を殺すんですけど、そうするとなかにはいっている微生物から全部の雑草から根こそぎ殺す。微生物も死んで畑は不毛の地になるんですよ。敵も味方も含めて全部殺すそのやり方が似ているのが、抗生物質だったりね。今の医学科学の考え方だと全体を考えるんじゃなくてポイントをついて善と悪というね、二項対立化させて、そこで処置をするという。

ジュリア:さっきコメントで、微生物自体が商品化されるっていう可能性があるみたいなコメントがあったと思うんですけど、それはそうで急いでいろんな微生物、腸のなかの微生物にどんな役割があるのかとか調べてる理由はそうだと思うんですけどそれをどうやってお金にかえるかっていう。危険性があるのは、さっき健がいったように、悪役? だめだったのは実はよかったりとか複雑なバランスによってできているもので人間ひとりひとりでバランス自体が違う。だからどうやって医学で使えるのかっていうのは難しいところだと思うんですけど。

健:だから善と悪のその間に。善にも悪にもなる「日和見菌」っていうのがある。便をとって、自分たちの腸内細菌がどういう状態なのかっていうことを調べてもらう民間の機関がオーストラリアにあったんですよ。Microbaっていう、はかってもらったんですよ便をとって。こういう研究してるっていったら説明してくれて、微生物というのはさっきいった善と悪とその間に日和見菌あって、割り切れないんですよ。それが善にも悪にも変わってしまうから判断が難しいんですね。いっぱい日和見菌、つまりゴブリンみたいなのがいるんですよ。あるときは善人あるときはキチガイになっちゃう。

ジュリア:どう近代の全体像をみれるかっていうのがポストヒューマニズムていうような問題だと思うんですけど、今だとまだ全然みれてないと思うんですけど。もしかしたら昔の漢方薬とかのほうが全体像を見ながらやってたやり方なので、それから知識を借りながら近代医学も借りながら違うなにかをつくらないと。

川端:そこには、知識と倫理が結びついていますよね。

ジュリア:あと日本では進んでて腸の中の微生物を読み取るスーパーコンピュターみたいなのがあって京大と東大が共同でなんかやってるみたいなんですけど、まぁそれによって、どういうふうに、分析できるようになるのかっていうのはまだまだ。もしかしたらデータを通して、スーパーコンピューターでデータマイニングみたいな感じで。

川端:なるほどね。これ最後の作品ですよね。時間もあと15分くらい残っています。オーディエンスの人たちが聴いてくれてると思うんですけど。そろそろ質問とかあればよろしくお願いします。聴いててなんというか、最近ラップとかテーマに研究してますけど、そこで感じていることと強引に結びつけると、お二人の作品はある種の存在とかイメージとかを回復してくれるようなヒーリングのような効果があるように感じますね。最後にトークテーマの核にある、あるいは2人のインスピレーションの源になっている「不安」についていろいろと考えてみたいですね。世間的には否定的なイメージを持たれている不安というものが作品をつくるうえでどのような役割を果たしているのかに興味があるんだけれども。

健:不安は環境破壊、不安から始まって、テトラポットなんかもつくってたし。自分たちはかなり神経症なんだよね。お互いすぐ不安がるの。子どもも嫌がったりするんだけど、この時代いろんな不安抱えちゃうじゃないですか。不安を抱えているだけだとさらに不安が募るからね。なにか違った形で表現することも、1つのヒーリングになるかもしれないし。畑やってるのも、これから、だからあんな作品つくったハイパーインフレーションになるとかね。じゃあ食べ物くらい自分たちでつくってないといけないなとか。思っちゃう。頭の隅っこではアリとキリギリスじゃないけどね、冬にむかって蓄えていったりとかそういう気持ちもあるし。不安をなんかこう、形にしてぶつけてみるみたいなね。

ジュリア:やっぱり世界とつながるという意味では自分たちはアートとしてしか...今は農業もやってるんですけど、どうやって世界とつながるかっていう。今の世の中だとすごく難しくなってきてるんですけどね。

川端:「不安も友達」みたいな感じでまとめたいと思うんですけど、いかがでしょうか。会場のみなさまは質問があればマイクをオフにして聴いていただいて結構ですよ。

ジュリア:直接的にはウイルスみるか 進化と繋がってるって 

視聴者コメント:「covid-19をモチーフにしたアートを何か構想してますか?」

健:いまだしてる妊婦のお腹は一応モチーフかな。みたいな。

ジュリア:そうね。コロナがお腹についてるみたいな。

川端:鹿もいますね。

健:鹿が毎晩何十頭もとびはねているんですよ。

川端:その鹿のことが不安で仕方なくなったりするわけですよね。

健:農家にとってはね。農作物一生懸命育てても、下手すると鹿、イノシシ、猿に襲われてたちまち全滅。動物のえさつくってるみたいな。

ジュリア:鹿って生命の象徴みたい。

健:春日大社とか諏訪大社は、鹿は神の使いなので、うちの近所は春日大社が多く捕獲しない人が多いですね。

視聴者コメント:「このコロナ禍で、けど鹿と共生しているなかで、ソーシャルディスタンスについてどう考えていますか?」

健:結構ソーシャルディスタンスなんですよね、農業って、誰とも会ってなくて、あんまり寂しいと独り言いってたりするんですよ。

ジュリア:1月の段階ですごいコロナウイルス気にしてて、もう毎日武漢のニュースばっかりみていて、大学時代から友達だった中国の研究やってる人がいるいんですけど、彼女が流しているニュースとかみててすごい気にしていたんですけれども。子どもがいるんで、すごいはやい段階で気にしていたので、いま反省してるとこなんですけど。

健:娘が全国スピーチコンテスト出場に選出されたのが2月だったけど、自分たちはすごい神経質だったんですよ。

ジュリア:逆にいまはまだ良くなって。共生ほどではないけど 子どもはそこまで重症ではないっていうケースっていうこともあって。
 なんか逆にこれによって起きる経済の崩壊と民主主義の崩壊、グローバライゼーションの崩壊、戦争、独裁主義そっちのほうがいますごく気になってるところですけど。

健:だってもう日銀がここまで国債やETF買ったり、日銀だけじゃないけど、それってつまり国有化、ファシズムの定義じゃないですか、はっきりいって。それと近いことが今世界中で起きてて。
 なんで1月にそんなに自分たち心拍数が上がったかっていうと、中国は経済第一優先主義を掲げていたのにもかかわらず、いきなり武漢を経済に痛手を被るロックダウンして、続けざまに上海、北京。これは直感で、なんかやばいんじゃないかって気になって。あまりに情報がでてこない事もあって。

ジュリア:浩平さんどうですか?

川端:僕はいつももう楽観的だから厳しい目で見られて怒られています。

健:いつも楽観的だよね(笑)。

ジュリア:コロナ禍というのもあって、いつ死ぬかわからないっていうのもありますよね。

川端:そうなんだよね。どうですか他の人達は? ちなみにこの作品集はどこで入手できますか。

健:ミヅマギャラリーと美術本出版の老舗、求龍堂(本の売り場所について説明)、オンラインでも買えますので。ぜひぜひ読んでください。

川端:僕の専門になりますが、今日のテーマと差別と結びつけても色々と考えることができると思うんでよね。

ジュリア:差別でいうと「新感染」って見たことあります? 韓国のゾンビ映画。新幹線でなくて「感染」ね「新しいに感染」。ゾンビになってしまう感染者が多発した電車のドア車両を閉じて、次の車両に入れなくするんです。ゾンビになってない人が、そこで喧嘩しだして、差別してあるグループを追い出して危ない車両に閉じ込めるんです。

健:中で分裂して、ロックダウンみたいな感じで車両に。そこにいろいろヒエラルキーがあって、いまの世界を物語ってるなぁって思って。あっ。いまミヅマギャラリーのスタッフがここのカタログがここにありますってことで、紹介してますね。

川端:百姓としてなんでも屋という感覚でやったり、とはいえリサーチをベースにすることを可能としている2人のユニークなバックグラウンドがあって、今後もいろいろな活動を展開していくための要素が満載だなあというふうに感じましたね。僕がアート専門じゃないというのがあるのでまとめられないのだけど本日はお二人からとても刺激的なインスピレーションをいただきました。
 これにてイベントを終了します。どうもありがとうございました。

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