ルビンの壺が割れた
全面帯に包まれたかなり薄めの文庫本。とにかく「衝撃」「驚き」という感想が並ぶ。
こんなに短い中でそんなに衝撃の展開が起きるってどんな??
作品はメールでのやり取りという文体で書かれる。元カノである女性に対して、偶然発見したのでメッセージを送りました、というところから始まる。この2人は過去、女性が忽然と姿を消すという形で結婚間近に破局していた。
その理由が知りたいです、という気持ちを男性側が訴え、物語が大きく進んでいく。
直球な感想を述べるなら、特に驚きはしなかった。
正確に言うなら、何も知らなければ驚いたかもしれない。ただ「驚きますよ!」と箱を渡されれば誰だってビックリ箱だろうと予想するわけで、「衝撃のラスト!」と予告されてしまうと様々な予想をしてしまった。
予想通り、とはいかなかったけれど、「はぁ、でしょうね……」に留まってしまった。
たしかに、最後の1行は内容と言うより書き方には驚いたけど。
ただ、作品としての随分練られたものだと感じた。
メッセージでのやりとりという文体なので、2視点が交互に繰り返される。伏線となるような部分は強調されすぎず、しかし若干の違和感は生まれる程度に。
きっと様々な要素を踏まえて改行、改ページへ配慮してある。でなければオチが生きない。
今は電子版が主流になって、文字の拡大縮小も自在。合わせて改行もされると聞いたけど、この作品についてはそれは避けて欲しい。紙媒体で読む良さを改めて感じられる作品だった。