【小説】つよがり ー満月の夜ー
残業終わり、会社を出て空を見上げると満月が明るく輝いていた。
明るい満月がどうしても彼女の笑顔に重なってしまい、胸がキュッと痛くなる。
別れから1ヶ月。
もう彼女と会うことは二度とないだろう。
そう分かっていたのに、あの夜僕は「さよなら」を言わなかった。
☆。.:*・゜☆。.:*・゜☆。.:*・゜
彼女との出会いは、去年の初夏。梅雨が開けたばかりのカラッと晴れた、暑い日のことだった。
本社から下町の営業所に営業事務として異動してきた彼女は、会社の1期上の先輩。
明るく溌