学校で「不登校・親の会」を行う場合に参考にして欲しいこと
ある県でソーシャルワーカーをされている方から、お問い合わせをいただきました。
学校で親の会を実施する話が持ち上がっているため、話を聴かせて欲しいとのこと。
メールにまとめたのでこちらにも、残しておこうと思います。
学校側が親の会を実施する。
3年前はきいたことはありませんでしたが、最近はちらほらと耳にするようになりました。
ありがたい場だと思います。ただ、配慮も必要です。
足を運んでみた方の声なども交えて、親がどのように感じるのか、どのような場を欲しているのかを書いてみます。
まず「お知らせの出し方」について
ほとんどの場合、告知はお手紙で受け取るようです。
書類やプリントのやり取りのある家庭はそこで受け取れます。疎遠になりつつあるご家庭(そういう方が案外少ないので実例は知りませんが)向けには、電話などで一報、その後郵送とかでしょうか。
個別対応は大変でしょうけれども、疎外感を生まないためにも、何らかの方法で対象者に行き渡るといいですね。対象を明記したり、全生徒宅に届くお便りに記載するのも一案かと思います。
受け取った保護者の気持ちと受け入れ態勢
受け取る保護者の方(ほとんどお母さん)は、主催が学校であることから、学校復帰や自宅学習を煽られるのではないかという感覚を持つようです。
参加を迷われている方には、情報交換目的で参加してみることをお勧めしています。
参加したくても、そこに行くことでまた落ち込みそう…と気が重くなるかたもいらっしゃるようです。
なので、可能であれば電話やメールで受け付けをして不安解消、スクールカウンセラーさんを利用している方はカウンセラーからも声掛けしてもらう、当日突然参加・ドタキャンも織り込み済としておく、など配慮があると参加しやすいとは思います。
今はコロナのことで、先生方も分散出勤のようで、学校に電話しても担当者と連絡がつかず何度もかけているという声を耳にします。
その辺りも配慮があると、少し距離を感じがちな「学校」を近く感じられると思います。
参加者はどのように感じるか
実際、参加した方からは、以下のような声を聴いています。
・先輩お母さんの話が聞けて助かった(地元の進路情報・クリニック・学習支援に関すること・学校内の選択肢等)
・自分の担任とは違う対応もあるとわかったから今度交渉してみようと思う
・自分の担任の評判が聞けて日頃のやり取りの様子に納得 or 少し印象が変わった
△愚痴の言い合いで終わる場は意味を感じない。その段階を超えた人には実際どのように子どもと接したらよいのかなどの話が聞きたい。
親の会には、自分も何回か参加したことがありますが、グループの中にご意見番のような方がいると、その場の雰囲気が固定化してしまい話しにくいようです。
また、感情や現状を整理中の方と、現状を受け止めていて実質的な情報が欲しい段階の方が混在すると、どちらも不完全燃焼になりがちと感じています。
それらの点から、親同士で話しができつつ、その場をファシリテートする方がいると安心かと思います。
会の進行(事例)
以下、ご参考までに自分が主催していた交流会のルールと流れです。
マナー(ルール):「否定しない・助言しない・結論を求めない」
助言がありがたい場合もありますが、時にそれがプレッシャーになってしまうこともあります。子どもが不登校になった時、保護者は「自分の子育てで何かが足りなかったかもしれない」と思いがちだからです。
また、こうしたら上手くいったという先行事例があったとしても、全ての家庭・全ての子どもに当てはまるわけではないため、伝えたいことがある場合は、アイメッセージやあくまでこういう事例もあったとして伝えることとしています。
流れ:
①簡単な自己紹介・・・呼ばれたい名前・お子さんの学年・今日話したいことなど、項目を2~3個決めて話してもらいます。少し砕けた内容(好きな食べ物・今はまっていることなど)を交えると場が砕けて、一体感が生まれます。
②話したいことの内容をいくつかに分けてグループトーク(20分程度)
③一旦、全体共有
④共有から新たに出て来たテーマについて全体で意見や情報交換、もしくは、今度は別の分け方(年齢層別など)でグループトーク
⑤最後は、共有を含めつつ、気づいたこと、感じたことなどを一人ひと言ずつ話してもらう。
⑥触れられていなかった事柄があれば、ファシリテーターが補足する。(情報提供・共感の言葉を添えるなど)
以下のような会もありました。
①座席をいくつかの島にわけて、話題に挙がりそうなことを紙に書いて島にひとつずつ置いておき、話したい内容の近くに座ってもらう(睡眠・昼夜逆転のこと/勉強・進学のこと/特性のこと・・・など)
②始めに会の趣意・ルール説明(対等さが守られるように)
③グループトーク
④共有
⑤質疑応答(答えられる人が答える・もしくはゲストに専門家を招いて答えてもらう)
上記は、保護者視点で実施してきたものです。
学校側が主催者となる場合は、その目的によって運営の仕方は変わってくると思います。ただ、保護者が、共感を得られて、現状を客観視できる場所があることは、子ども達にもメリットがあります。
「親の会」実施の意義
脳科学の先生が書いた本では、子どものことで悩みを抱えた保護者は、子どもの感情変化の察知能力は劣らなくても、他の大人の感情察知能力が鈍るという研究結果が記されていました。
よく聞くのが、学校側と家庭との間にある現実認識ギャップです。
その研究結果は、保護者の心理状態への配慮も必要であることを物語っています。
子ども達の感情や過ごし方は、どんどん変化しますし、見せる相手によっても変わります。
一部をみるのではなく、学校での姿、家庭での様子、それらを共有しあって、同じ方向を向いて、その子に合った対応をしていきたいものです。
親の会実施にあたっては、開催のビフォー・アフターもセットで考える必要があります。それが大変な点ではありますが、設けられた場は、何かを解決する場ではありません。
むしろ、そこから関わりをスタートする気持ちで、実施する必要があると思います。
漠然とした不安を幾つも抱え、何からどうしたらいいのかわからない場合、そのような大きな受け皿や、継続的な何気ない関わりこそがセーフティネットを作っていきます。
ソーシャルワーカーさん、カウンセラーさん、先生、校長先生など、それぞれに立場も役割も違います。
それらを超えた目的を見つけるのは難しいかも知れませんが、子どものためにまず何ができるか。どんなアプローチが可能か。
それを、考えてみた時、保護者のケアがないがしろにされることなく、必要な要素という認識が広がって欲しいです。
今回お話の出ている学校さん、良い方向で進みますことを願っております。
ひとり一人に合った教育環境の実現を目指します。