サラットナさん 第十七章

巫女さんたちが楽しそうに、お正月のお守りや干支鈴などの写真がいっぱいの分厚いカタログを見ている。へぇー、文具カタログみたいなものがあるのね。

そういえば、テレビで見る他の神社の神主さんも同じ袴だし、神社で使用するものって全国共通なのかしら。

先輩巫女が休憩室の扉を開く。一気に巫女さんたちに緊張がはしる。ご祈祷が始まるらしい。
この時期は、入ったばかりの巫女さんたちがぞろぞろとついて行くため、何だかとても華やかなご祈祷になる。ぜったいお得だと思う。

年末にむかうにつれて、神社全体が新年を迎える空気感となってきた。私も生まれて初めて元旦からお仕事をする。日の出前に出勤。
31日も神社は開いているので泊まりがけの巫女さんもいるらしい。ともかく巫女さん、神主さんの指示についていこうと思う。

すでにお正月勤務を経験した巫女さんたちから、色んな話をきく。お正月期間は神主さん達はめちゃ真剣で怖いから、特に社務所には立ち入り禁止ですよということも教わった。こ、怖くなるんだ。

そーいえば、サラットナさん最近、見かけないなぁ。あまりの忙しさにサラットナさんを忘れている自分に驚いた。

そういえば、喫茶店でサラットナさん、誰かといたわ。誰だったんだろう。そんな考えもすぐに吹き飛ぶほど忙しさは加速している。今日は珍しく残業を頼まれた。全てのエアコンフィルターの掃除だ。あと全ての外看板を掃くらしい。これは明日にまわしても大丈夫といってたけど。
あんなに若い巫女さんたちが頑張っているのだもの。私も少しは気張らなくちゃ。

一枚ぐらいは看板を拭いてから帰ろうと玄関を出る。風が冷たい。お湯をはったバケツで雑巾をしぼる。こりゃすぐに水に戻るわね。あれ?
こんな時間帯に参道を掃いている人たちがいることに気がついた。

サラットナさんだ。見知らぬ男性と猛烈な勢いで参道を掃いている。サラットナさん、境内は走らずにお静かにでしょと話しかけたかったけれど、声をかけずらい雰囲気。

ザッザッザ、シュッシュッシュ、ザッザッザ、シュッシュッシュ

もう遅い時間のためか参拝者もいない。
ほうきの音だけが鳴り響く。

ザッザッザ、シュッシュッシュ、ザッザッザ、シュッシュッシュ

うわぁ、また負けたぁ〜というサラットナさんの叫び声が下の鳥居の方から聞こえてきた。






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