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【第1回】POPTRAKS!通信 / 『スウィーター!ルーツ・オブ・ジャパニーズ・パワーポップ』から9年。

◎文:高木龍太 / TAKAGI, ryuta

 慌ただしかった2023年の年末の当ウェブジン=POPTRAKS!magazineのオープンから、早2か月近くもが過ぎてしまいました。遅まきながら、今年初の更新です。

 なんとも長文の多い、またマニアックな情報ばかりの誌面にも関わらず、お読みいただけている方々には、心よりお礼申し上げたく思っています。

 色々あり、年末から更新が中断してしまいましたが、近々に〈GARO ARCHIVES〉の公開の方も再開予定です(原稿は昨年内に一応用意済)。ガロ以外にもすでに進行中の特集もあり、公開へと歩を進めたいと気は急いています。

 その間の関連情報などはX(https://twitter.com/poptraks)でもお知らせさせていただいておりますので、そちらもぜひご覧いただけたならと思うのですが、noteの方でも差し当たって雑記コラム的なコーナーとして、この『POPTRAKS!通信』を設置してみました。

 Xの方が短信だとすれば、こちらはもう少し踏み込んだ、ちょっとしたニュース欄、備忘録、雑記帳、という感じで。雑多な音楽関連の話題について、当面、こちらでも軽く触れて行けたら、と思っています。

 ところで、本日は2024年2月18日。

 別項(「創刊の辞」)でも触れているのですが、《POPTRAKS》というのはもともと、かつて70年代の邦楽ロックにフォーカスしたCDコンピレーション『スウィーター!ルーツ・オブ・ジャパニーズ・パワーポップ1971-1986』(※現在品切れ)を発売するために高木が個人で立ち上げた、自主リイシュー・レーベルのために付けた名称でした。

『スウィーター!ルーツ・オブ・ジャパニーズ・パワーポップ
(SWEETER! ROOTS OF JAPANESE POWERPOP) 1971-1986』
DIRP1001 / 2015 (sorry, out of stock)

 このコンピレーションCDは、Beatles、The Who、Pilotなどに影響を受け、70年代から80年代にかけ日本でポップな音楽を志向したロック・バンドにスポットを当てたい・・・、と企画し、旧EMIのライセンスで、自費制作(ディストリビュート協力はクリンク)という形で2015年に発売したものです(下記は発売時ニュース記事)。

 発売日は2月18日でしたので、じつは本日であれから、9年もの月日が経ってしまった、ということになります。生来、スローテンポな人間ゆえ、時の速さが信じられず、なんだか恐ろしい気持ちにすらなります。

 細かなバンドの紹介などはまた機会をあらためたいですが、発売当時に宣伝用にまとめた文章を一部抜粋すると、こんなものでした。

この国には、こんなに素敵にポップなバンドたちがいたんだ!

 邦楽ロック史/ポップス史の「ミッシング・リンク」がいま、解禁!
 1970-1980年代――ビートルズ、バッドフィンガー、フー、パイロットなどの影響を受け、明快にポップ、理屈抜きに“FUN”でロックンロールな、いわば「和製パワーポップ」な音楽を志向したバンドたちの、その貴重な「シングル・オンリー」曲を中心としたコンピレーションCDが、ついに全国発売!なんと全18曲中、5曲を除きすべてが「初CD化」!!

*全曲、旧・東芝EMIカタログからのセレクション。初CD化曲についてはもちろん、数十年ぶりに蔵出しされたオリジナル・マスターテープからのデジタル・リマスター!

*当時の制作陣には伊藤銀次、加藤和彦、松本隆、日高富明、小田和正、井上忠夫(大輔)など、著名ミュージシャンも多数参加。

主要収録バンド紹介
◆リンドン
70年代半ばとは思えない、この強烈なビート感。そして胸焦がすメロディ!ARB/甲斐バンドの田中一郎(G, Vo)、チューリップ/オールウェイズの伊藤薫(DS,Vo)、THE BADGEの田中信昭(B,Vo)が在籍。4曲すべてが初復刻!

◆ザ・ジャネット
まるで“和製ラズベリーズ”なグレイト・サウンド。後にオフコースに加入する松尾一彦(Vo,G)、大間ジロー(DS)が在籍。既CD化のアルバム曲1曲に加え、最も人気の高いレアなシングル曲3曲を初復刻!

◆ザ・バッド・ボーイズ
和製ビートリッシュ・ポップの偉大な先駆者。長らく廃盤状態だった人気シングル曲2曲を再CD化!名曲「アイツのせい」は2006年にザ・マックショウもカヴァー。“日本のジョン・レノン”=廣田龍人(Vo,G / リッキー)、オフコースの清水仁(Vo,B)が在籍。

◆THE BEATS
80’s和製ビートルズ・バンド!THE BADGE、THE SHAMROCK等を輩出したテレビ番組『HOT TV』出身(当初のバンド名は〈アロワナ〉)。現状リリース可能な楽曲の中か ら、カルト人気のラズベリーズ邦訳カヴァー「今夜だけビー・ウィズ・ユー」(伊藤銀次アレンジ)など2曲を初復刻。

◆ベイ・シティ・フェローズ
ローラー・マニア待望!某バンドのメンバー変名による伝説の覆面ユニットが手掛けた和製ベイ・シティ・ローラーズ賛歌が初復刻。珍品の域に留まらない、ゴキゲンにブリティッシュなグラム・ポップ・チューンは要注目!

 上記のほかにロッキーズ(元ガロ、日高富明が曲提供。1978年)、ちわきまゆみ、ルージュ、レッド・ブラッズ(のちの「はじめてのチュウ」の作者、実川俊晴らが参加の匿名ユニット。バッドフィンガーのカヴァー。1971年)を加えた、9アーティスト、全18曲(初CD化13曲)が収められています。

 惹句のなかに「ミッシング・リンク(失われた環)」という一文を用いた理由ですが。

 この企画を発案した頃。いまでもそうかもなのですが。当時、たとえば日本の音楽誌などでの、所謂「ロック・ポップス史」「名盤ガイド」のなかでは、こうした「ポップな音楽を志向したバンド」というのは、なぜか、ほとんど、多くが語られることがない状況でした。

 これは、ガロも、そうなのかもしれないのですが。

 もし、「ちょっとしたボタンの掛け違い」のように、「なにかしらの先入観」などで、いい音楽が聴かれない状況があるのだとすれば、もったいないな、と、いつも思ってしまいます。

 『スウィーター・・・』に収録されているバンドも、たとえば、あるバンドはデビュー時にアイドル風な売り出しがなされたことや、あるいはポップな音楽性が、当時のメインストリームのロックからは、本格派と見做されなかったり・・・。そんな、色々な「先入観」で"聴かれなかった"、なんていうことも多かったのかもしれません。

 またあるいは、たとえある程度のセールスがあったバンドにしても、シングル盤では本来、バンドが志向した音楽性はなかなかアピールできず、後年の世代にとっては実像が「知られているようで、知られていない」バンドもいたのだと思います。

 本当はそうした中にすてきな音楽がたくさんあります。そんな音楽が「もっと聴かれたなら」。そんな想いにかられ、無謀にも個人で制作したのが、このCDでした。実際、旧EMIのスタッフの方などとのご縁とご理解がなければ、実現不可能だったかもしれない企画でもありました。

 そして、その時のそんな気持ちや、衝動。今回のPOPTRAKS!magazineの根底にも、引き継がれていると思います。

 そんな、POPTRAKSの原点ともいえる『スウィーター・・・』。ありがたいことにご好評いただき、現在、恐縮ながら完売となっています。当時、お買い上げくださった音楽ファンのみなさまには、9年越しではありますが、この場を借りて、お礼を申し上げさせていただけたらと思います。

 そして、もし未入手の方で、ご興味のある方がいらっしゃいましたら、再プレスができないこと、心苦しく思います。現在でも、全18曲中の12曲はほかでは聴けない状況で、なんらかで、またここに収めた音源が聴けるようになると良いのですが・・。本当は続編の選曲プランもあるのですが、いまだ実現できていないのも心残りです。

 収められている音楽は、本当に最高です。 ここには、70年代、80年代にポップな音楽を志した若いバンドたちの、とびきりのパッションが詰まっています。もしもどこかの中古店などでお見掛けの機会などございましたら、ご興味あれば、お手に取ってみていただけたらうれしいです。

 最後に、もう一点。

 今回、ウェブジンという場を設けたのは、『How They Became GARO』もそうですが、自分にとっては「過去原稿の見直し=アップデート」がしたい、というのも、理由のひとつとしてあります。

 過去のリイシュー仕事で触れさせていただいたアーティストの方々についても、現在予定している範囲では実川俊晴さんなど、その後の追加情報などもありますので、今後なんらかの形で、このウェブジンでもあらためて情報をアップデートした上で、ご紹介できたならと思っています。

 それでは、このウェブジンが音楽の楽しみの広がりに、なにかプラスになれていたなら・・・。

©POPTRAKS! magazine / 高木龍太

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