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読書感想文:偶然屋

選書交流サービスchaptersから届いた5月の本。
偶然を作る職業「偶然屋」の仕事を書いた一作。
偶然、といってあなたは何を思い出すだろうか。私は大学卒業後の朝8時ごろに丸ノ内線に乗ったところ、たまたま大学時代の恩師に出会ったことを思い出す。 恩師もその日は普段乗らない丸ノ内線にたまたま乗ったと話していた。
ラッシュ時の丸ノ内線で、同じ時間の同じ車両に乗るという偶然はいったいどれくらいの確率なのだろうか。
こうした偶然を仕掛ける人がいたら?本作はそんな職業「偶然屋」の話を絡めたミステリー。

本全体の構成は、偶然屋を生業にする「オフィス油炭」の話が前半に置かれ、後半には過去に起きたある事件の当事者の話が付く。最終章である第四章以外がこの形で進んでいく。
章の後半になるといきなり馴染みのない人物が出てくるので、初めて読んだ時は戸惑った。しかし、読んでいくうちにこれらの事件が、前半の「偶然屋」のパートにも組み込まれていき、それらの事件に隠されたある共通点に気づく。つまり、社会を激震させた大事件から、恋愛関係の果てに起こった事件まで、これらを全て起こすように意図的に偶然を仕掛けていた人物がいる、というのが本作の面白さだと思う。

私が勝手にがっかりしたのは、一作で完結する話かと思っていたら、まさかの続きものだったところ。
過去の事件パートでは救いようのない話が多く、読んでも心のなかにわだかまりが残る。もやもやを抱えたまま、次回作を待たねばならないのは辛いところだ。

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