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お気に入りパン屋さんが増えました



初めてそのパン屋さんの前を通りかかったのは、本当に偶然でした。

その時はグループで目的地へ向かって歩いていたので、足を止めて店内に入ってみる余裕はなく。けれど何故か心惹かれるそのお店の、赤色の軒先テントに書かれた店名がおそらくドイツ語だということだけを認識し、慌ててGoogle mapsを開いてその場所を保存しました。

そして後日、保存したお店を調べてみると、それがパン屋さんだったとわかりました。



私は次の週末を待って、お昼頃にその保存していた場所を目指しました。確かこの辺りだったはず…と、キョロキョロしながら街を歩きました。そうして辿り着いた、見覚えのある赤色の軒先テントがあるお店。

店名の文字から予想はついていましたが、やはりドイツパンのお店でした。


いざ、木の扉を開けて店内に入った私は、思わず声を上げてしまいそうでした。いや、たぶんちょっと声が漏れてました。

だって、私が思い描く素敵なパン屋さんそのものだったのです。

それはまるで御伽話に登場するかのような店内。大切な何かを守り続けてきたようなあたたかさとクラシカルな雰囲気が漂っています。

ショーケースに並べられた素朴であたたかみのあるパンたち。お取り置きを依頼されている方も多くいらっしゃるようで、その分のパンが剥き出しで棚に並べられている姿なんてもう、素敵です。素晴らしいです。

写真を撮りたいという欲求よりも、店内でシャッター音を響かせたくないという思いの方が圧倒的に勝ったので、写真は撮りませんでした。なんというか、私には神聖な場所にさえ思えました。



初めて訪れたことをまるで隠そうともしない私に、店員さんが進んでパンの説明をしてくれました。食パン型のパン以外の小麦とライ麦は、すべてお店の石臼で製粉しているそうです。

見てみたい…という気持ちはさすがに抑えつつ、私はパンを選ばなければなりません。お昼過ぎにはもう半分以上のパンは売り切れていて、幸か不幸か私の選択肢は限られていました。

その中で私は、基本だと教えてくれたフォルコーンブロートのハーフサイズと、菓子パンの部類で唯一まだ在ったヌスシュネッケンを購入しました。

パン屋さんでパンを買うと、次の日の朝がとても楽しみになります。その日も私は人生で初めて食べる本格的なドイツパンにわくわくしながら眠りました。


せっかくパン屋さんがたくさん在る街に住んでいるのに、私は早々に好みのパン屋さんに出逢ってしまい、そのお気に入りの2つのパン屋さんに行くばかりになっていました。

しかし、これからはお気に入りの3つのパン屋さんをループすることになりそうです。

翌朝を待って初めて食べたドイツパンは、素朴さの中に力強さが灯っているような美味しさでした。それに加えて、こだわりの原材料はきっと身体に良いと断言できるようなものばかりです。そしてあの素敵な店内。

私はまたあの空間に逢いたくて、他の種類のパンも食べてみたくて、次の週末を待って再訪しました。


今回は午前中にやって来たので、以前来た時よりもたくさんの種類のパンが並べられていました。またまたその素敵な店内に私の胸は高鳴ります。

ショーケースに並ぶ大きな丸いパンに、私はとても見覚えがありました。名前こそ違うけれど、きっと…

「こちらは、サワードウですか?」ドイツパンのお店で、フレンチベーカリーで働いていた時に毎日目にしていたパンの名前を口にするのは失礼かもしれないと思いつつ、私はサワードウをサワードウ以外の言葉で説明する術を知りませんでした。そんな私の心配をよそに、「そうですよ。」と店員さんは笑顔で返してくれました。

やっぱり…!!サワードウだ!懐かしい!

それはラントブロートというドイツパンでした。酸味のあるあの味とモッチリとした食感が時々恋しくなっていた私は、そのハーフサイズとクロワッサンを購入しました。エコバッグに入ったラントブロートのズシッとした重みを感じ、そう、これ!この重み!と、私はまた懐かし嬉しくなりました。


起きればパン屋さんのパンが待っている!と、相変わらず楽しみに待った翌朝。トーストしたラントブロートにはラズベリージャムを塗りました。

懐かしさはもちろんですが、こちらのパン、とても美味しいです。本当に美味しい。ラントブロート、外側はカリッとしていて、中側はモッチリ。そして謎にまた食べたくなってしまう程良い酸味。

残りは冷凍していますが、冷凍庫にパン屋さんのパンが在るというのは、心強いです。



幼い頃にアルプスの少女ハイジを見て育った私の記憶には、ヨーゼフとピッチと子ヤギのユキちゃん。そしてふわふわで柔らかそうな白パンばかりが残っていました。

けれど、素敵なパン屋さんのおかげで、ライ麦を使った所謂黒パンの美味しさを知ってしまいました。今度はハイジのようにチーズと一緒に食べてみよう。

この街にまたひとつ、お気に入りが増えました。

じっくり読んでいただけて、何か感じるものがあったのなら嬉しいです^^