「灰色の星」


そぞろ歩くには、重い空気。
列を組むには、不揃いな足。
灰色の月は照らされるばかりで、
ずっしりと天に座り込んでいる。

ガラス張りの空に私が映り込む。
人々の眼が映り込む。
ガラスの向こうに根付いていたのは、
閉じて、結んで、力強く凝縮された塊。

並んだ足は、ふらふらと、
いくつもの足音を響かせて、
引力に吸い寄せられた。

その無意識なる力流が
酷く滑稽で、
今すぐにでも星が砕けて、
空が砕けて、
この空間全てが宇宙になって仕舞えばいいと
全身が願っていた。

願いは虚しく、
足は進む。

心細さに躓いた。
脱げた靴のぽっかり空いた穴が、
無数の足に踏まれていく。

月は銀の衣を纏って、
さながら宇宙の中心であるかのような風体で、
人々を連れ去っている。

脱げた靴は、安堵した。
そうだ、私は、ここにいる。

私が月を照らしている。

月はまだ、
人々を連れ去っている。

その空虚な空に
耽るように座っている。

誰かが月を見上げた時、
月は月となった。
照らされるばかりの灰色の星は、
自分が何者かを問い続けていた。

ただ生まれた瞬間だけが
彼の疑念を満たしているのだと、
冷めない熱を帯びていた。

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