一人旅の魅力
寸志
荷造りも無事に完了し、少々時間が余ったので、家で朝食をとってから出掛けることにした。
とは言っても時間がとてもあるわけではないので、たまごを2つ割って、熱したフライパンのなかに放りこむ。
目玉焼きができあがった。
それを米のうえに乗せてサッと醤油をまわして掛けた。
ほんとうは自室で食べようと思っていたが、キッチンでRさんに声を掛けられ、会話が弾んだので(時間もないので)喋りながらその場で立ち食いをする。
「この前話したと思うんですけど、これからタイへ行くんですよ」
「え、全然聞いてない」
「あれ、この前飲んだときに話したと思うんだけどなぁ」
……
「タイといえば」とRさん。「ゴー・ゴー・バーやな」
もちろん、ゴー・ゴー・バーのことは知っている。でも、それがどこにあるのかは知らない。
少なくとも、私が持っているガイドブックには掲載されていない。
「ゴー・ゴー・バーへ行く予定はありませんでした」と私は答える。
「男のひとり旅なのにゴー・ゴー・バーへ行かないなんて笑われるで」とRさんは冗談っぽく言った。「まぁ、土産話を楽しみにしてるで」
そう言って一万円札を、私のジーンズのポケットに入れた。
今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。 これからもていねいに書きますので、 またあそびに来てくださいね。