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「ドイツ縦断ひとり旅」(25) ハーメルン最後の夜  パフェの花火

2019年9月24日(火)晴れ

私は少し早く着いた。ショッピングバッグを持った巨大なネズミ。アジア人は私一人だから、あの女性は難なく私を見つけ・・・・・あっ、あの人だ!ドキ、ドキ、ドキ・・・・・。

中庭のようなオープンカフェ。晴れ渡った空の下、たくさんの人達が歓談していた。平和で、明るい空間。
「今日の記念に」と、彼女はパフェをおごちそうしてくれた。小さな花火がパチパチきらめいていた。初めて目にした、花火が飾られたパフェ!

この日の記憶は美しいホーフ(中庭)と、パフェの花火と、まぶしい日差し、そして、ヘルガの優しい微笑み。他には何にも覚えていない。多分、彼女の住所を書き留め、別れたんだと思う。
「手紙、書きますね。」と私が言うと、「私からは絶対書かないわよ。」と言われた。でも、私はせっせとエアメイルを送った。返事は来なかったけれど、書くことが楽しかったのだ。

私の方のインターネット環境が整ったので、ヘルガはe-mailをくれるようになった。それがお互いに嬉しい。読んだ本のこと、観た映画のこと、お気に入りのミュージシャンの話、などなど。

『将軍』のvideoと葛飾北斎の画集を持ち、日本のアニメ『カッパのクウ』を私に教えてくれたヘルガ。毎年12月に私が送る、東山魁夷のアートカレンダーと、岩合光昭のネコのカレンダーをとても喜んでくれる。

ホテルに飾られている笛吹き男

「ねえ、K子、明日、ハーメルンを出発するのよね。帰国するのはいつだっけ?」 「26日よ。ミュンヘン空港発16:40。」 「ハーメルンの次は何処へ行くの?」 「何にも決めてない。ミュンヘンまで行って泊まってもいいかもしれない。ルフトに乗り遅れないようにね。」 「じゃあ、あなたのためにホテルを捜してあげるわ。」

「この絵に突き当たったら左折するのよ。そうしたら、あなたの部屋が左に見えてくるわ。」
迷路のような廊下で迷ってしまう私にヘルガが教えてくれた目印

ミュンヘンのホテルは全滅だった。ヘルガは旅行会社の友人にも問い合わせてくれたけど、空室ゼロ状況。えー、信じられない! そんなことってある? 理由を聞いて納得。オクトーバーフェスト!

「じゃあ、途中の街で1泊するわ。ニュルンベルクとか。」 さっそく調べてくれるヘルガ。いくつか当たって、インターシティ・ホテルに決定した。駅に近いから。彼女は予約を入れてくれ、列車も調べてくれた。頼りになる人だ。

「ヘルガの字は読めないよ。」と、ディーターさん。睨んでみせるヘルガ。私はそのメモ用紙を大切に手帳に挟んだ。

ヘルガに送ってもらって、ホテルに戻ってきたのは22時頃。いよいよ帰国の日が近づいた。この2週間の出来事が頭の中で渦を巻いて、なかなか眠れなかった。


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