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【読書感想文】アーモンド/ソン・ウォンピョン

BTSのRMとSUGAが読んでいたから…というなんともミーハーな理由で手に取った一冊。めちゃめちゃ良かったです。読んで良かった。初めての韓国文学でしたが、普通に楽しめました。

あらすじ

扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳のユンジェ。そんな彼は目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、ただ黙って見つめているだけだった。母は息子に感情を丸暗記させることで“普通の子”に見えるよう努めてきたが、その母は事件によって植物状態になり、ユン ジェは一人ぼっちに。だが、ある出会いが、彼の人生を大きく変えていく――。
(Amazonより引用)

感想

あらすじだけでとても惹かれて、表紙のデザインも私好みだったのでこれは面白そうだなあとワクワク。結果がどうなるのかはある程度予想がつくものの、そこに至るまでにどうなるのかがメインになるところ。
始まりから主人公ユンジェの視点で話が進んでいくので、淡々と情景と事実が並んでいます。怒りや恐怖、喜びを感じないとはそういうことなのか…と思える描写がたくさんあって、不思議と単調にはならずに、まるで目の前で繰り広げられている様に進んでいきます。(著者は映画も撮っていたそうで。だから映像的なアプローチで書いているのかもしれません)
ユンジェの描き方が見事で、ハッとさせられる描写も多かった。ゴニとのやりとりでは、ストレートに感情を表現してコントロールができない彼と、その気持ちが分からずとも向き合おうとするユンジェがあまりに違って、この対比が痛々しいほどでした。ほとんどの人はゴニの気持ちが分かると思うんですが、自分でもコントロールできないグツグツした思いや感情を、ユンジェが淡々と見つめることで、あの時の自分まで救われた様な気持ちになりました。
もう1人の登場人物であるドラも素敵だった。彼女はとても眩しくきれいなイメージが思い浮かびました。ユンジェ目線なので、特にキラキラしていたのかな。ゴニもドラも、ユンジェが興味を持っていくにつれて、どんどん色がついて形取られていく感じがあって、人間味が出てくるのが良かった。ユンジェ目線なんだなあ。
ユンジェの様な人を「アレキシサイミア(失感情症)」といったりするそうなのですが、医学的な話になってくるので詳しくはWikipediaなどをご参照ください。

本の中でも、アレキシサイミアという言葉は一度しか登場せず、あくまでもユンジェは「扁桃体が人より小さい」として描かれています。そして、これは特別なものではなくみんなにありえることなのかも、とも感じました。ユンジェは「扁桃体が人より小さく怒りや恐怖を感じられない」と極端に描かれていますが、何かに大きく感動しなかったり、興味がもてなかったり、選択ができなかったり…今の抑圧された環境でそういう感情を出さない様にして、我慢している事も忘れてしまってそれが普通になってしまっている人がたくさんいるのかなあ。ユンジェもゴニも極端に描かれてはいますが、どの登場人物もみんなの中にいて、どの要素も持っているんだと思う。

初めての韓国文学

今回が初めての韓国文学でした。調べてみるとたくさん翻訳された本があるのに、手に取った事がなかったなあ…何か特筆して日本文学と違う部分を感じた訳ではないのですが、海外文学あるある文化の違いが分からない、というのはこの本に関しては少なかった様に感じます。割とスルスル読めたかな。難しい本だと、注釈ページに何度も飛んだり、説明のカッコ書きが多くてなかなか読み進められなかったりするから…世界中でヒットしたというのは、そういう部分の読みやすさも影響しているのかも。


2021.9.23〜2021.9.27

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