ファンタジーなのになぜか共感できる「ビューティー・インサイド」
少し前の映画ですが。ずーっとNetflixのおすすめに上がってくるので「マッチ度低いけど見てみるか…」となんとなく視聴。今まで見ていなかったのを後悔するくらい良い映画でした。韓国映画は抑えた表現で悲しみや憂いを表現するのがうまい気がする。
あらすじ
感想
まず題材がとても良い。オリジナルのアイデアはIntelと東芝によるソーシャルフィルムプロジェクトで、その時はゴリゴリに宣伝が入った企業案件だった様に見受けられますが、そんなの微塵も感じさせないこの作品。スタートからずっと物悲しい雰囲気が漂っていて、主人公のウジンの一言や友人サンベクの変わらない態度、彼が巻き込まれるシチュエーションなどいちいち涙が込み上げてくるのはなぜなんでしょう。映像としてはずっと明るめでほんわかした絵作りなのですか、それがまた悲しく見えてくるんですよねえ…
ウジンの境遇はファンタジーではあってありえない話なのに、なぜか涙を誘うし、ウジンの苦悩もイスの苦しみも分かってしまう。きっと「外見が変わる」という以前に、もっと普遍的な「人と人」との部分で悩んでいたりすれ違っていたから、共感する様な気持ちになったのかなあ。
ウジン役は本当にたくさんの役者さんが演じているのですが、みんな印象に残ってる。うまく顔立ちや雰囲気が違う人を揃えていて、それぞれの事を覚えているなあ…中でもストーリーのキーになってくるのはパク・ソジュン演じる部分と上野樹里が演じる部分だった様に思います。
パク・ソジュンが演じたウジンは、まだイスに本当の事を言えていなくて、かっこいい自分になれたタイミングでデートに誘う→明日の約束もしちゃったから徹夜で過ごしてこの外見をキープ!というとんでも作戦に出るのですが…それがまたいじらしいというか、健気で。最終的には3日くらいで寝てしまって外見が変わってしまったので、イスとの約束をドタキャンしてしまう形になっちゃうのですが(おじさん姿で去っていくイスを見つめるシーンも泣ける)
上野樹里が演じたウジンは、本当の事を告白後、受け入れようとしたイスが訪れた時にいたウジン。「今日は韓国語がしゃべれないんだ…」と俯く姿が物悲しくて、やっぱり上野樹里は影のあるキャラクターとか静かに悲しみを抱えた演技がうまいなあと思いました。イスを演じたハン・ヒョジュは上野樹里との共演を夢見ていたそうで、少しだったけど夢がかなって良かったね…!と思ったり。
チョン・ウヒが演じるウジンのパートも好きでした。チョン・ウヒは「恋愛体質〜30歳になれば大丈夫」で魅力的だったのですが、今回もまた違った雰囲気で、相変わらず魅力的でした。あくまでウジンのアイデンティティは「男性」だけど、外見は女性、そしてイスに本当の事を伝えようとする必死さと強い意志を感じる演技で、やっぱりこの人すごいな…と思いました。
そして語らずにはいられないのは、イスを演じたハン・ヒョジュ。めちゃめちゃ綺麗な人だな!というのが最初の感想でしたが、お芝居も魅力的。困っている時に笑顔でかわそうとする様な「困惑の笑顔」や「無言の訴え」の表情がめちゃめちゃ良い。そして、基本的には(接客業というキャラクターだからか)なんとなく目元や口元に笑みをたたえているんですよね。その優しそうな雰囲気がずっと続いているからこそ、ウジンを受け入れて付き合いだした時の弾ける様な笑みにこちらも嬉しくなったし、ウジンの拒否して去っていこうとする時の号泣や爆発がより悲しかった。
不思議なもので、これだけたくさんのウジンが登場しますが、ウジンとイスが通じ合ってお付き合いが始まってからは本当に「1人のウジン」に見えてくる不思議。役者さんたちのパワーだなあと。鑑賞中はストーリーに集中できるし、見終わってからは役者さん達のすごさに改めて気付いて圧倒される感じ。
スタートから悲しくて、途中もめちゃめちゃ悲しいけれど、最後はきっちりハッピーエンドなのが良かった。複雑な事はなく、ストレートでシンプルに2人が信頼しあってハッピーエンドに落ち着いてくれるのはとても良かったなあ。ラストカットはチェコの川べりでウジンとイスがキスするシーンなのですが、これまで登場した「たくさんのウジン」がジャンプカットで登場するのです。このストーリーを象徴してまとめる素晴らしいシーンだと感じたので好きな部分でした。
なんだか明日から周りの人をもっと大切にしようと思える様な、温かい映画でした。
ビューティー・インサイド
뷰티 인사이드
The Beauty Inside
2015年 韓国
監督:ペク・ジョンヨル
出演:ハン・ヒョジュ、キム・デミョン、ト・ハジン、パク・シネ、パク・ソジュン、チョン・ウヒ、上野樹里、イ・ボムス、イ・ドンウク、他
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