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逆立してもこんな訳が出てこないだろうという素晴らしい字幕を「美女と野獣」のシーンの中で発見しました!

これまで的をついた日本語字幕に感心したことは数多くありましたが、その中でもとりわけ感心した字幕を「美女と野獣」の中で見つけたので紹介します。

その素晴らしい日本語字幕は、ビーストの城に迷い込んだモーリス(主人公ベルの父親)がビーストに見つかってしまい、ビーストの怒りをかうシーンにありました。

ビースト: What are you staring at? (何を見てるんだ?)

モーリス: Noth-noth-nothing! (何も見てない)

ビースト: So, you've come to stare at the Beast, have you? (醜い野獣を見物に来たのか?)

モーリス: Please, I meant no harm! I just needed a place to stay . (そんな。ただ泊めてもらおうと)  

ビースト: I'll give you a place to stay!

モーリス: Oh! Please! No, no!

アニメ「美女と野獣」

まずその字幕の前に、モーリスが言った “I meant no harm!” もユニークな表現なので取り上げたいと思います。

日本語字幕にはこの “I mean no harm.” が訳されていません。mean は「意味する」ですが、”mean 〇〇” で「(冗談ではなく)本気で〇〇を言っている」という意味になるのを知っておくことはとても大切です。

例えば I mean it. は「私はそれを本気で言っている」=「マジです」「真剣です」

という意味になります。

ですから “I meant no harm.” は「害は及ぼさないというのは本気でした」が直訳で、「悪気はなかった」という意味が生まれるわけです。

ここでは、モーリスが城に入ってきたのは道に迷った結果であり、悪気があって(下心があって)そうしたわけではない」と捉えることができます。

意図せずに相手を怒らせたりしてしまった時に使える “I ment no harm.” ー ぜひ覚えておきたいですね。


本題の日本語字幕ですが、それはビーストがモーリスに言った “I'll give you a place to stay!” です。

モーリスが「泊まりたいという思いだけでこの城に来た」と言ったのに対して、”I'll give you a place to stay!”、すなわち、「お前に泊まる場所を与えよう」とビーストは言ったのです。

でもモーリスはその言葉に対して “Oh! Please! No, no!”「お願いだからやめて!」と叫んだのです。

これはちょっと不思議ですよね。「泊めてあげる」と言ったのに「やめてくれ!」とどうして叫んだのでしょうか。

それはこの部分を映画で見ればわかるのですが、ビーストはモーリスを狭い部屋に閉じ込めようとしたからです。それに対してモーリスは「泊める」=「城に閉じ込める」と理解したのです。

前書きが少し長くなってしまいましたが、感心したのはこの “I'll give you a place to stay!”の日本語字幕です。

それは、

泊める場所なんかない!

です。英語と全く反対の意味だったのです。

この字幕が言わんとしていることは、

「(モーリスを)閉じ込めておく場所はあるが、泊める場所なんてない

です。

「お前が泊まる場所はここだ!」でもいいですが、あえて反対の意味を言った方がインパクトがあります。

私は、こんな日本語訳、逆立しても出てきません。

字幕のプロの凄さを表していると思います。

日本語字幕から学べることは沢山あるのでこれからも取り上げていきたいと思います。

See you soon!


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