父のこと

父は決して自分のことはほとんど話さなかった。
自分の小さな頃のことや家族のこと、どんな学生時代を過ごしたとか、仕事のことも。
いつからギャンブルにはまったのかも。
私の知っている父のほとんどは、父のモラハラな面である。
モラハラというフィルター越しでしか今の私は父を見れない。

私が母から聞いた話では、父の母親は再婚していて、私の知っている父方の祖父とは血が繋がっていないこと、おそらく妹、弟とも。
けれども、祖父と父との関係はどちらかと言えば良好だったのだと思う。
父は義父のことは好きだったはずだ。

父は義父より実母との関係が悪かったようだ。
精神的なネグレクトを受けていた、というようなことを母から聞いた覚えがある。
とりあえずの最低限の衣食住は担保されていたけれども、無条件の愛は与えてもらっていなかったようだ。

勉強ができた父は有名な大学へ行き、それなりの仕事にも就けた。
実家で暮らしていた父は(なぜ家を出なかったのかは疑問)就職後、実家にお金を入れるようになった。
すると、祖母は急に父だけにおかずをたくさん出したりとわかりやすく態度を一変させたそうだ。
父への待遇が明らかによくなった。

母は父から色々なエピソードを聞いていたかもしれないが、私が知っているのはこれぐらいだ。
今思えば、私は本当に父という人間をよく知らなかった。

父もまた機能不全な家族の中で育ったのだ、おそらく。
虐待の連鎖なんて言葉をがあるが、家族の機能不全も連鎖するように感じる。
自分は絶対に同じことは繰り返さないと決めない限り。

母から父のエピソードを聞いたのは、私がある程度大きくなってからだ。
同情はすれど、だからといって母や私たちへのモラハラが許されるはずはない。

結婚をしてはいけない人だった。
なんで結婚したんやろ?
妻や子どもたちをなんやと思っていたのだろう?
世間体のために結婚した?
どうして自分は幸せな家庭を築くと決心しなかったのだろう?

優しいお父さんが良かった。
テレビドラマで観る家族のいざこざは、テレビの中で繰り広げられている虚構の世界だと思うぐらい、幸せな家庭で育ちたかった。
(これは実際、私の友だちが言った。衝撃だった。うらやましかった。)
天真爛漫に自分のことだけを考えていたかった。
ほんとによくやってたよね。
ほんとによく頑張った。
そんなに頑張らなくていいんやよ。
もっとわがまま言うていいんやよ。
お父さん、お母さんを困らせてもいいんやよ。
しんどいこと、しんどいって言うていいんよ。
学校で嫌だったことも言うていいよ。
でも言えなかったよね。
1人で全て抱え込む癖は、大人になっても変わることはなかった。
そりゃ生きづらくなるね。
でももういろんなもの手放したらいいよ。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?