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「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を読んで

三宅香帆さんの「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を読んだ。
1日で読んだ、面白すぎて。

内容はタイトルが主題になっているのだが、この本を書くきっかけになったのが映画「花束みたいな恋をした」であり、作中に何度も登場する。
「花束みたいな恋をした」の主人公麦が仕事で疲れて、以前は読んでいた本が読めずパズドラしか出来ないみたいな話から着想を得たらしい。

結論として「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」は描かれるのだが、全体の内容としては1960〜2010年代の労働環境や、労働に対する価値観について重点的に書かれている。ほんとにざっくり言うと構造の話をずっとしている。

全体を通して文字が大きいし文章もかなりやさしく、まさに普段本をあまり読まない人もターゲットにしているのがよくわかる。歴史の話が多いが、高校レベルの歴史の知識があれば読める。

以下気になった文章。

日本でも1990年代から2000年代にかけて、民営化が進み、金融自由化が進んだ。それはまさに「新自由主義」思想が広まる一端を担った。結果として、自己決定・自己責任の論理を内面化する人々が増えた。というか、個人のビジネスマンとして市場に適合しようとすれば、新自由主義的発想にならざるをえない。

p212

もしこれを読んでいるあなたが「自分の責任で自分のやりたいことをやるべきだ」「失敗しても、それは自分のせいだ」と思うことがあるならば、一昔前なら「社会のルールに問題があるのかもしれない」という発想をしたかもしれない、ということを思い出してほしい。新自由主義的発想は、私たちの生きる社会がつくり出したものである。

p213

これを読んで私がハッとした、というかギョッとした。
無意識のうちに新自由主義的発想ばかりしていたことに気付いたからだ。
それは私が社会に適合しようとした結果であるのにも関わらず、「自分で考えてたどり着いたこと」と思っていた。

往々にしてある、「思っているのか、思わされているのか」みたいなやつ(語彙力)に遭遇してしばらく放心していた。

構造の話ばかりしていてもしょうがないのだけど、たまには一歩引いて社会を見るということも精神衛生には必要なことかもしれない。


久しぶりに濃い内容を受け取る本を読んだな。
咀嚼するのに時間がかかりそうだ。

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