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記事一覧
● 契約不適合責任の適用関係大づかみ(宅建業法)
1.契約不適合責任の適用関係
契約不適合責任(民法566条、宅建業法40条)については、その適用関係がケースによって異なります。ケースというのは、売主・買主が宅建業者(以下単に「宅建」と書きます。)かそうでないか、というところです。
契約前、契約後を問わず、どうなりますか、これでいいですかという質問も頂きます。私も、その都度、えーっと、と考えたりしますので、とりあえず結論だけざっとおさらいして
第三者のためにする契約のこと(直接移転取引)1/n
1.第三者のためにする契約
不動産売買の際に用いられる契約態様の一つに、第三者のためにする契約というものがあります。業界では「三為(さんため)」と通称されています。直接移転取引という言い方もあります。
三為契約は、初めから転売が想定されているときや、開発(地上げ)のときなどに、取引形態の一つとして利用されることがあります。うまく機能させれば有意義な取引態様のひとつであると思います。ですが、反面
● 家屋の相続税・固定資産税の時価のこと4/4
(承前)
10.こうあって欲しいと望むこと
相続税でも固定資産税でも、「時価」が算定されなければなりませんが、現在、最高裁は、固定資産評価基準による評価額に強い時価推認を与えて、納税者の「時価」立証に重い負担を課しています(最2小判H15.7.18)。反面、課税庁が課税しようとするときは、不動産鑑定士による鑑定結果を特に批判することなく(納税者に対するものと同等の負担を課すことなく)受け入れる
● 家屋の相続税・固定資産税の時価のこと3/4
(承前)
8.最2小判H15.7.18と最3小判R4.4.19
ところで、今回のタワマン節税に関する相続税判例(最3小判R4.4.19)では、評価通達=固定資産税評価額=固定資産評価基準による算定結果を採用せず、不動産鑑定士による鑑定結果を採用しました。これにより、最高裁は、納税者に対する高額の課税を是認しました。
これに対して、前記のとおり、固定資産税に関する最2小判H15.7.18では、
● 家屋の相続税・固定資産税の時価のこと2/4
(承前)
5.固定資産税評価額
前の投稿で書いたとおり、相続税の財産評価に関し、家屋については固定資産税評価額によることとされています(評価通達89)。固定資産税評価額というのは、地方税法381条に記載されている台帳登録価格のことです。いま話題にしているのは家屋で、家屋に関する条文は、地方税法381条3項です。
「基準年度」というのは、固定資産税税評価額は原則として3年ごとに評価替えを行うの
● 家屋の相続税・固定資産税の時価のこと1/4
1.最高裁判例が出ました
かねて話題になっていたタワマン節税について最高裁判決が出ました。最三小判R4.4.19です。納税者敗訴。その判断の当否にいくらか触れながら、裁判所が認定する「時価」のことについて書きます。この記事は、家屋の評価のことしか触れません(土地の評価のことには触れません。)。
2.相続税法22条からの基本通達
相続税法22条は次のとおりです。
相続財産の評価は「時価」によ
人の死の告知に関するガイドラインのこと
1.ガイドライン
令和3年10月8日に、国道交通省(不動産・建設経済局不動産課)から、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」といいます。)というのが出ています。
人の死の告知に関しては、宅建業者に対してではなく、売主に対する責任追及が行われる場合もあります。売主、宅建業者双方に対する責任追及の余地もあります。
ですが、このガイドラインは宅建業者向けの
● 直近合意賃料の時点のこと
借地借家法32条1項の賃料増減額請求について、①その当否及び②相当賃料額をどのようにして判断するかについては、参考にするべき最高裁判例があって、それによると「賃貸借契約の当事者が現実に合意した賃料のうち直近のもの(以下、この賃料を「直近合意賃料」という。)を基にして、同賃料が合意された日以降の同項所定の経済事情の変動等のほか、諸般の事情を総合的に考慮すべきであ」るとされています(最判H20.2.2
もっとみる● テナントの電気料金のこと
オフィスでもお店でも、賃借している部屋の電気料金/電気代は、賃貸人から毎月賃料の請求と共に請求を受けて支払っている場合が多くあります。ですが、この電気料金が、どのような計算に基づいて算定されているのかが分からない場合があります。
賃貸借契約書において、電気料金の計算方法が具体的に定められているときは、その合意された計算方法によることになるでしょうけれど、電気料金の計算方法が具体的に定められている
● 共益費は実質賃料か(不動産鑑定評価/賃料増減額請求に関して)
1.問題意識
世上、建物賃貸借契約では、賃料のほかに共益費が支払われる契約と、賃料のみ(賃料に共益費を含む。)の契約があります。
賃料増減額請求では、ある程度の賃借面積を超える例では、ほぼ例外なく、当事者双方から不動産鑑定評価書が提出され、また、訴訟になった場合には、裁判所鑑定が行われます。
これらの不動産鑑定評価書を見ていると、賃料と共益費が支払われている例では、共益費については言及がない