夏なので背筋の凍る怖い本をご紹介しようとしたら、なぜか楽しいおばけの本ばかりになっちゃいました。 ーー編集者オススメの1冊
「怖がりだから、怖い話は聞きたくないな…」という方はいらっしゃいませんか? でも、怖いと知りながらもついつい開きたくなるのが、怖い本の不思議なところ。今回は夏にちなんで思いっきり怖い本をご紹介するぞ! と張り切っていたのですが、どういうわけか、かわいいおばけ、チャーミングな妖怪の本ばかりになってしまいました。これなら「怖いのが苦手!」という方が読んでも、入浴中に背後を心配する必要はありませんよ。安心してこの記事をお楽しみください!
今回ご紹介するのはこちらの3冊です。
怖い絵本は、おばけだけではない!
『おめん』
(わだことみ/作 ささきようこ/絵)
私にとって小さいころから、怖いもの、背筋がぞっとするものといえば、「笑った顔のお面」でした。お面といえば、魔除けとして作られた怖い顔のものも多くありますが、私が怖いのは、笑った顔のそれ。ピエロも笑っているのが一番怖い。しかしこれにはしっかりとした理由があります。
小学生の時に夢で見た、中国の張り子の被り物(大頭頭)。夜になり、その被り物をつけた人たちが私の普段遊んでいる広場で輪になって踊っていたのです。幻想的な雰囲気のなかにも、うすら怖さを感じた夢でした。
それからというもの、笑顔のお面を見るたびに、私の背中はぞぞぞーーーっ。。
さて、ポプラ社には「おめん」というダイレクトなタイトルのしかけ絵本がありまして、これが小さなお子さんに大人気なのです。
1999年に刊行されて以来、すでに93万部を超えるベストセラー。指をひっかける穴が両脇についた丸いボードブックで、ブタやライオンになりきって、ブーブー、ガオー!と 変身できる楽しい絵本! なのですが、
私にはわかっています。人気の理由はそれだけではないと。
つけるだけで自分ではない別の生き物に化けられ、外すと元の自分に戻れるという、怖さと安心感を併せ持つ「おめん」の魅力。それを小さいみなさんも感じたいのではないでしょうか。
そして、極めつけは、ページ最後に出てくる「オバケすいか」。
笑っていて、舌がべローンと飛び出してきて、なかなかホラーなんです。
楽しいだけじゃない絵本「おめん」。どうです? 涼しくなってきませんか?
ベローン!
(文・小堺加奈子)
この寿司屋には秘密があります。
『みんなのおすし』
(はらぺこめがね/作)
どんなお客さんにも、ぴったりのお寿司を握ってくれるお寿司屋さんがあったら、行ってみたいですよね。この絵本に出てくるお寿司屋さんの大将は、まさにそんな凄腕の寿司職人です。
人間のお客さんはもちろん、カッパ、オオカミ男、がしゃどくろ(ガイコツの妖怪)にだってぴったりのお寿司を握ってあげることが出来るのです。
手元しか見えない画面で展開されていて、めくってみるとどんなお客さんがお寿司を食べているのか分かる仕掛けになっています。
おかしなお客さん達と、見たことのないお寿司がめくる度に登場。次はなにが出てくるのか、わくわくしながら楽しめます。
それにしても、こんなにすごいお寿司を握っている大将の姿がなかなか出てきません。
いったいどんな人なんだろう?
そんなことが気になりだした終盤、ねずみがお客さんとしてやってきます。
寿司ネタはすでに品切れしているのに、「おともだちも およびください」なんて言い出した大将。
シャリだけ出したものだから、食べているねずみたちの姿がお寿司みたいに見えちゃってます。なにやら大将の様子も変わりました。「にゃははは」とか笑っているし……。
え、もしかして……。
大将の正体とねずみたちの安否が気になるところですが、この辺で店じまい。おもしろくてちょっと怖い(?)ラストは絵本でぜひ読んでみてくださいねー。
(富山なつき)
実は、み~んなおばけだった!?
『きょうはすてきなおばけの日!』
(武田美穂/作)
怖い系が苦手で、テレビアニメでもちょっと怖そうな展開になるとすぐテレビを消してしまう……そんな幼少期を過ごしていた私ですが、「このおばけなら大丈夫そう!」と感じたおばけの本は、興味津々で読んでいました。
『きょうはすてきなおばけの日!』も、安心して読める楽しいおばけ絵本! 「ますだくん」シリーズの作者・武田美穂さんが描くかわいいおばけたちが、いっぱい登場しますよ~!
なんとこの本、男の子が出会う人々が、
みんなおばけになってしまう!というお話。
人間に見えるおまわりさん。でも、ほんとうは…
ページをめくるとびっくり!! おばけでした!
さかなやさんのおじさんも……?
なんと!! その正体は巨大なねこのおばけ!!
この調子で身近な人が次々とおばけになっていく様子に、男の子はびっくり仰天。冷や汗をかきながら必死で逃げていきます。
前ページからの変貌ぶりに思わず驚いてしまいますが、カラフルに描かれたおばけたちはとっても表情豊かで、案外怖くないんです。よく見ると、おばけがおばけに驚いている様子も! お茶目でかわいいですね。
次は誰がおばけになっちゃうんだろう……なんだか、おばけだらけの世界も意外と面白そうかも?? 怖いはずのおばけのお話なのに、どんどん次のページに進みたくなります!
そして、みんながおばけになっていく中、
最後男の子はどうなってしまうのでしょう…!?
今年の夏は『きょうはすてきなおばけの日!』を読んで、愉快なおばけワールドを楽しんでみてください!!
(長谷川舞)