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きょうは七夕。本を開けば、心に星空が広がる! 編集者おすすめの1冊

きょうは7月7日。七夕です。あなたのおうちの窓から天の川は見えますか? もし満天の星空が見たくなったら、開いてほしい本があります。今回は七夕にちなみまして、空や星をテーマにした作品を児童書編集者がご紹介します!


***齋藤侑太のおすすめする1冊***

こどもたちの憧れ、望遠鏡! そこにうつっていたのは……⁉
ルラルさんのぼうえんきょう
(作/いとう ひろし)

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私の実家は市街地の中にあったので、周りはビルなどの高い建物ばかり。
悲しいかな、星空なんて、なかなか見えるような環境ではありませんでした。
小学校の宿題で「星座の観察」が出た時、困っていると、父親が車に乗せてわざわざ少し離れた線路沿いの開けた場所に連れて行ってくれたのでした。しかも「星座の観察」ですから、1時間置きに。
大変だったと思います。

星座盤片手に父親に感謝しつつも、望遠鏡があれば家から楽々観察が出来るのになあ、と内心は思っていました。
いとうひろしさんの絵本『ルラルさんのぼうえんきょう』に出てくる、大きくてかっこいい望遠鏡は、そんな小学生の自分からすれば、喉から手が出るような憧れの一品です。

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『ルラルさんのぼうえんきょう』は、シリーズ第7作目。
望遠鏡から、夜空いっぱいの星をながめるルラルさんと、にわのなかまたち。星座に込められた物語に思いを馳せると、心は宇宙の果てまで飛んでいくようです。
その時です。望遠鏡をのぞくと、なんと、そこには恐ろしい顔が!

「宇宙人だ!」

もしもの時のため、ラケットを持ち、鍋をかぶって宇宙人を探しにいく姿はかなりユーモラスですが、当のルラルさんたちはとっても真剣です。

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はたして、ルラルさんたちは宇宙人を見つけることが出来たのでしょうか……? それは絵本を読んでのお楽しみ。

のびのびと、どこまでも広がっていくような星空の絵と、ルラルさんの優しさを感じるストーリーに、心が穏やかになる1冊です。
7月の夜空の下、寝る前にゆったりと楽しんでみてはいかがですか?

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***上野萌のおすすめする1冊***

流れ星をつくる妖精たちのおはなし☆彡
リルリルフェアリル トゥインクル
作/面出明美〈1巻〉・中瀬理香〈2~5巻〉
絵/瀬谷愛(株式会社サンリオ)

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~☆流れ星の材料は、人間や妖精(フェアリル)の思いでできた、ピカピカ光るきれいな星くず。でもある日、フェアリルのスピカが拾った星くずは、なんだかトゲトゲしていて……☆~

こんな出だしから始まる、七夕にぴったり! とにかくかわいい、魔法や妖精が大好きな人に、ぜひぜひおすすめなシリーズです。

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流れ星をつくる妖精、トゥインクルフェアリルが暮らしているのは、天の川のほとりにある「星くず工房」
ここでみんなでいっしょに生活をしながら、毎日星づくりのお仕事をしています。

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物語は、そんなトゥインクルフェアリルのひとり、スピカが冒頭の「トゲトゲな星くず」と出会ったことから始まります。

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「この星くずのもちぬしに会いにいきたい!」
そう願ったスピカは、魔法のドアを通って人間界(ビッグヒューマル)へと飛び出して行って・・・?
スピカ自身が夢を追いかけつつ、人間の女の子の夢も全力応援! 夢みる楽しさいっぱいのおはなしです。

実はこの「リルリルフェアリル」は、サンリオ生まれのキャラクター。今回紹介した本はトゥインクルフェアリルたちが活躍するお話ですが、他にもフラワーやマーメイド、ベジタブルにフルーツなど、いろんなフェアリルがいるんです!

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『リルリルフェアリル ようせいたちのぬりえデザインブック100』より

お気に入りの子を探すのも楽しいですよ! 小さなフェアリルたちのかわいい世界をぜひ、のぞいてみてくださいね。


***長谷川舞のおすすめする1冊***

星が見える夜は、優しい童話の世界へ!
『新美南吉童話選集1』
(作/新美南吉・絵/黒井健)

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ふと見上げると、夜空の中に小さな光が流れていくのが見えて……
「あっ、流れ星だ!!」となったこと、ありませんか?

今回は空や星がテーマということで、ここで紹介したいのが、「ごんぎつね」「手ぶくろを買いに」などの代表作で知られる作家・新美南吉さんの童話選集。その作品の一つに、「ながれ星」というお話があります。

登場するのは3つ並んだ子どもの星。普段は仲良しなのですが、ある冬の日、けんかをしてしまいます。

すると突然、真ん中の星がつ――っと、下の方へすべって行ってしまいました。

「どこへいっちゃったんだろう」

「今に帰ってくるよ」

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残された2つの星は、いつまでも帰ってこない星のことが気になって仕方ありません。すると、しばらくしてから街の中に、きらきらとひかるものが見えました。あの星かもしれない…!!果たして、3つの星は再会できるのでしょうか?

このお話を読むと、身の回りの風景、そして星空が今までと違って見えてくる…そんな気持ちにさせる、どこか切なく、短いけれど印象深い作品です。

新美南吉さんの童話選集シリーズは全部で5巻。今回の「ながれ星」が収録されている『新美南吉童話選集1』では他にも、様々なテーマや生き物が登場するあたたかな幼年童話が29編楽しめます。

新美南吉さんの描く優しいお話の世界、この機会に是非味わってみてください!

***富山なつきのおすすめする1冊***

いつだって、何度でも、宇宙に行ける!
『うちゅうひこうしに なりたいな』
(バイロン・バートン/作)

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「うちゅうひこうしに なりたい」
何もない大地に立ち、そう宣言する子どもの姿からこの本ははじまります。

うちゅうひこうしになりたい

ページをめくると、
「これが なかまだ」
という言葉とともに、宇宙服を着た人がずらり。どうやら一緒に宇宙へ行く乗組員のようです。

これがなかまだ

読み進めていくほど、この子の夢が広がって、あっという間にスペースシャトルに乗って地球をとびだしていきます。

逆立ちで宇宙食を食べたり、人工衛星の故障をなおしたり、宇宙基地の組み立てもしたり! 仲間たちと過ごす宇宙空間での生活を終え、無事に地球に帰還するまでを一緒に疑似体験できるような作品です。

くみたてもできるね

作者は、「バートンの のりものえほん」シリーズ(金の星社)などで知られるバイロン・バートンさん。本作は1993年に佑学社より刊行された作品の復刊ですが、20年以上前に出来た本にもかかわらず、力強いラインで描かれたシンプルで鮮やかな絵はまったく古びることなく、いつの時代も想像力を刺激してくれます。

星がきれいに見える日は、この子のように宇宙飛行士になって地球をとびだしてみませんか?

うちゅうにいってみたいんだ


***宮尾るりのおすすめする1冊***

「さよなら」がちょっとせつない―宇宙からきたお友達のお話
「くまのベアールとちいさなタタン」シリーズ『ふしぎなともだち』
(原京子 さく/はたこうしろう え)

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「くまのベアールとちいさなタタン」シリーズ(原京子 さく/はたこうしろう え)は、くまのベアールと小さな虫のタタンが一緒に暮らす中で、おたがいを思いやったり、時にはちょっとケンカをしたりしながらどんどん仲良くなっていく物語です。

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↑りんごをもっているのがベアール。リンゴから顔をだしているのがタタンです。

『くまのベアールとちいさなタタン ふしぎなともだち』では……

ある日、二人で夜空を見上げていると、あれ? 流れ星? 流れ星が、近くに落ちたように見えました。

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次の日、二人がお庭で花壇をつくっていると、リンゴの木の上から声がしました。なんと、たいせつに育てているリンゴから、ふたつの顔がのぞいていたのです。
 虫のタタンはぷんぷん怒りますが、くまのベアールは、タタンも最初はおなじことをしていたじゃないとおおらかに笑います。

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リンゴの木から顔をのぞかせていたのは、ポランとその娘のポムという親子でした。虫のタタンとそっくりな見た目のふたりですが、なんだか不思議な力をもっているようです。

ベアールがポムにやさしくすればするほど、タタンはおもしろくありません。最初はポムと仲良くしようとしなかったタタンですが、いっしょにすごすうちに、お互いに好きになっていきます。
ところが、ポムが遠い宇宙へ帰ることになって……。
いつかきっとまた会おうねと約束するのでした。

七夕に読んでいただきたいせつなくも心あたたまるお話です。


***浪崎裕代のおすすめする1冊***

UFOがむかえにきたらどうしよう!!
『かいけつゾロリのなぞのうちゅうじん』
(原ゆたか さく・え)

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七夕の夜、星を眺めてロマンチックに過ごすのも素敵ですが、宇宙人に遭遇する冒険物語でドキドキするのはいかがでしょうか。

かいけつゾロリは、いたずらの王者を目指して弟子のイシシとノシシと修行の旅を続けるキツネ。旅先でいたずらをしようとしては失敗したり、事件に巻き込まれたり……。結局は、もともとの優しい性格によって、人助けをしてしまいます。

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↑ノシシ・ゾロリ・イシシ

ある日、UFOがやってきてノシシをつれていってしまいました。
たいへん! ゾロリとイシシはノシシを助けるために、ロケットを作って宇宙へ出発。
そう、ゾロリは発明が大得意なんです。
作ったのはこんなロケットです。

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このロケットは、なんと! ぜんぶごみの山からみつけたもので作ったんですよ。
ゾロリって、すごいでしょう?
そして、広い広い宇宙でなんとかノシシをみつけたのですが、宇宙人や、こわーい宇宙動物がうじゃうじゃいます。

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ゾロリたちは無事に宇宙人からノシシを助け出すことができるのでしょうか。

同じシリーズに『かいけつゾロリうちゅう大さくせん』もあります。

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どちらも広い広い宇宙での大冒険物語。空を見上げて読むのにおすすめです。


***小櫻浩子のおすすめする1冊***

星への思いは家族への想い
4こうねんのぼく
ひぐちともこ さく・え

4こうねんのぼく

星空かんさつから大切な家族のことを想う、すてきな絵本の紹介です。
父ちゃんとくらすぼくと弟。なかのいい家族の情景から物語ははじまります。

きのうは、とうちゃんのきゅうりょうびやったんや。
そやからな、おいしいもんたべよって
とうちゃんからでんわかかっていてな
えきで、おとうとのしんちゃんと
まちあわせしたんや。

「もう宿題はおわったんか」ってとうちゃん。
「これからやるねん。きょうの宿題は星のかんさつやねん」とぼく。
そしたらとうちゃん、
「それやったら予定へんこうして、夜のピクニックしよか」って。

三人が公園で見上げた空には、星、星、星……!

4こうねんのぼく01

ぼくは語ります。

あのな、とうちゃん。
1こうねんってしってるか。
1こうねんゆうたらな、
ひかりが、一ねんかかって
ちきゅうにとどくキョリやねんで。
きょう、せんせいにおしえてもろてん。

ぼくはいいます。
「ロケットで、6千5百万光年はなれた星にいったら、恐竜が見えやんな、父ちゃん」
家族で見上げる夜空が、恐竜たちの闊歩する大地に見えてきます。
ぼくたちの心と頭の中いっぱいに広がる想像の世界。

ぼくの語りはまだつづきます。

4こうねんはなれたほしから
ちきゅうの、
にっぽんの、
ぼくのいえをみたらな、
そしたらな、

4こうねんのぼく04

きっと
おかあちゃんがみえるな。
おかあちゃんがせんたくほしてるのがみえるやんな。
そやからな、
ぼく、おおきなったら、はかせになるねん。
えらいはかせになるねん。けっしんしてん。
そうか、それやったら、えらーいはかせに、
カンパイやーゆうて
とうちゃん、なんかいもカンパイしてん。
きょうのビールは、かくべつ
うまいのやって。

星を見上げて、家族を想う……
心に切ないけれどあたたかさの広がる絵本です。

(本書は現在品切れ、重版未定になっています。ぜひ図書館などでお読みいただけたらと思います。)