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【作家を目指すあなたへ】~作家を続けるための30の質問~出版点数130冊を超える作家/越水利江子先生の創作のひみつ

 児童文学を中心に、年々活躍の場を広げている越水利江子先生。ふだん児童書を読まれない方々は、ご存知ないかもしれませんが、じつはデビューから今まで、その出版点数は130冊を超えるベテラン人気作家さんです
 代表作である時代ファンタジー「忍剣花百姫伝」シリーズをはじめ、幼年童話の「こまじょちゃん」シリーズ、ドキドキのロマンティック・ホラー「ヴァンパイアの恋人」シリーズ、ご自身の家族をモチーフに描いた純   児童文学『あした、出会った少年』『ガラスの梨 ちいやんの戦争』など、テーマも、読者層も幅広く書き続けることができる、その秘訣とは⁉
 作品の電子書籍発売を記念して、越水利江子先生の作家生活に迫る特別インタビュー! 作家として重要な「発想力」「取材力」「文章力」をキーワードに、30の質問にお答えいただきました。

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【越水利江子先生プロフィール】作家。高知県生まれ、京都府育ち。1995年『風のラヴソング』で芸術選奨新人賞受賞、日本児童文学者協会新人賞受賞。『あした、出会った少年』で日本児童文芸家協会賞受賞。時代小説をこよなく愛し、自身でも「忍剣花百伝」シリーズ、「恋する新選組」シリーズなど、数多くの時代ファンタジー作品も手がける。児童文学のほか、大人向けのエンタメ小説にも活躍の場を広げている

1.「発想力」に関する10の質問
2.「取材力」に関する10の質問
3.「文章力」に関する10の質問

「発想力」

1. 創作をはじめたきっかけは? 
幼い頃からお話を書くのは好きでしたが、画家となり、作家さんの本に挿絵を描くようになって、自然に物語も書くようになりました。(編集注:越水利江子先生は、最初イラストレーターをされていました)

2. ひらめき型? 理づめ型?
ひらめき型だと思います。どの物語でも、ワンシーンが見えたような気がした瞬間、登場人物が動き始めていたので。

3. 作品のテーマはどうやって決める?                愛です。登場人物が何を愛して生きているのかを思えば、自然にテーマも見えてきます。「ヴァンパイアの恋人」シリーズのときは、ヴァンパイア=怖い存在というイメージがあるけれども、そこにも愛が生まれるのではないかという思いから、ヴァンパイアと人間との間に生まれた少女の運命の物語が生まれてきました。

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https://youtu.be/POoTYpzyfbI                     「ヴァンパイアの恋人」シリーズ(全2巻 絵/椎名咲月)
ヴァンパイアと人間が共存する街の寄宿舎に入ったルナを待ち受ける運命的な出来事を描くドキドキのロマンチック・ホラーシリーズ。なんと、イメージPVを越水先生のお友だちがつくってくださいました。        ▶kindleにて(Kindle商品ページへ)

4. 作品の構成やラストは、書きながら考える? 書く前に考える? 
簡単なプロットは書き出す前にメモしますが、本格的な構成やラストは書きながら考えます。登場人物の愛を痛いぐらい感じないと、本物の物語は生まれないと思います。

5. 興味のないテーマで作品を依頼されたら?
興味のないテーマというのはありませんが、愛せない人の物語は書けません。なぜなら、その人や世界を愛せてこそ、作家も面白い物語が書けるのだと思うからです。                                   

6. 登場人物の名まえ、どうやって決める? 
登場人物の名は、天から降ってきます。『忍剣花百姫伝』シリーズや、『恋する新選組』シリーズ(KADOKAWA)も、史実だけでなく美しいファンタジーが入っているので、主人公の名である「花百姫」や、近藤勇の義妹である「宮川空」という名も、その世界の空から降りてきました。

7. 登場人物のビジュアルイメージは具体的に思い描いている?     はい。作家に見えてなければ、その人を表現はできませんので。児童書では挿絵としてビジュアルを具体化して描いていただくことも多いですが、(Dreamスマッシュ!版の)「忍剣花百姫伝」で陸原一樹さんが描いてくださった霧矢は、イメージにあまりにぴったりで驚きました。めちゃくちゃかっこいいですよね。「こまじょちゃん」シリーズの山田花菜さんの絵も、かわいくて大好きです。

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▲【Dreamスマッシュ!版「忍剣花百伝」シリーズ(絵/陸原一樹)5巻『紅の宿命』は、先生お気に入りの「霧矢」が表紙に。幼いころより、主人公の花百姫を見守る存在で、ファンの間で最も人気のキャラクター。

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▲『まじょもりのこまじょちゃん』(絵/山田花菜)ちっちゃくてかわいいこまじょちゃんと魔女ねこのこしろ。山田花菜さんによる、キュートなイラストが、リズミカルで楽しい文章とマッチ!             kindleにて(kindle商品ページへ)

8. 自分の家族など、まわりの人のことを書くことにためらいはある?  はい。『ガラスの梨 ちいやんの戦争』で、戦時のいろいろを書くときにためらう人物もいましたが、愛せる人を書くようにしました。

9. 俳優やイラストレーターの仕事をしていたこともあるという越水先生。作家以外の仕事の経験が発想の役に立つこともある?
はい、とても役に立っています。時代劇ドラマや映画の俳優の仕事の経験が、『月下花伝 時の橋を駆けて』『花天新選組 君よいつの日か会おう』(ともに大日本図書)を生み出してくれました。画家だった経験もまた、すべてのシーンが絵や情景として浮かぶ助けになってくれています。

10. 登場人物や作品の舞台にいつもモデルはいる?
書くときには、なんであれ、史実を調べぬくので、自然にその人物と時代が浮かんできて、その人の心と姿を見つめながら書いています。デビュー作の『風のラヴソング』(講談社)や『あした、出会った少年』は、私の生い立ちや体験をもとにした物語です。『あした、~』の「タケシ」は、兄と弟ふたりをあわせたような人物になっています。幼なじみや初恋の人…いずれの作品でも、幼い頃大好きだった人たちを想って書いています。

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▲『あした、出会った少年』(絵/石井勉)さよこが暮らす家は、暗くてせまい露地の長屋。けれどそこには、人々の夢や活気があり、時として不思議な奇跡もおこる…。    ▶kindleにて(Kindle商品ページへ)

「取材力」

11. 作品を書くとき、取材は必ずする?
します。時代小説の場合はご本人には会えないので、かつて活躍された場所や、お墓を詣でたり、ご子孫にお会いしたり、お話を聴いたりします。ファンタジーであっても、「忍剣花百姫伝」シリーズなどは、その時代の史実を調べてから書いています。                        

12. 取材で訪れた土地で印象的だったところは?
「忍剣花百姫伝」シリーズの取材で、奈良の遺跡に行ったとき、ここが時空を超える入り口だと感じました。私の気持ちも時空を飛んだのでしょうね。あとはやはり、新選組の近藤勇さん、土方歳三さんの故郷、多摩でしょうか。京都にある新選組のお墓や石碑などにもお参りしました。

13. 12.で回答された場所の魅力は?
お墓に語り掛けていると、どう書こうかと迷っていたことに、その人の声が聞こえてきた気がして、迷いがなくなったりします。 

14. 取材の際に、着目しているところはどこ?
やはり、ご本人が眠っておられるお墓や、ご子孫に語り継がれた色々です。

15. 取材時にメモをとったり、写真をとったりする?
写真は撮りますが、メモはとらずに脳裏に焼き付けます。

16. 蔵書はどのくらい?
数えたことはありませんが、何百冊はあるでしょうか。木造の家屋なので、二階が落ちると家族から怒られています(恥…)。

17. 執筆にあたり、どうやって資料を集める?
その時代の、その人物のノンフィクションを中心に集めます。

18. 執筆にあたって、どのくらいの資料を読む?
書く本によりますが、『ガラスの梨 ちいやんの戦争』の時は第二次世界大戦を記録した70冊近い資料を読みました。

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▲『ガラスの梨 ちいやんの戦争』(絵/牧野千穂)大阪大空襲で市井のひとびとが味わった悲しみを鮮烈にえがいた本格的戦争児童文学。越水先生のお母様がモデル。『風のラヴソング』や『あした、出会った少年』にもつながっていく物語にもなっている。 kindleにて(Kindle商品ページへ)

19. 今までいちばん「役に立った!」と思った資料は?
ノンフィクション作品の多くは、大いに役に立ちましたが、私が一番好きだったのは、江戸後期に書かれた曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』でした。いかに登場人物を愛するか、いかにダイナミックな大冒険ファンタジーを描くかを教えてもらった気がします。

20. 取材した事実を、創作として作品に昇華させるコツは?
やはり、愛です。モデルやその時代の人々をいかに愛せるかで、物語の昇華のきらめきは変わってくると思います。

「文章力」

21. 学生時代、国語は得意だった?
得意でした。国語だけはいつも評価5でした。

22. あこがれた作家は? 
少女時代に憧れたのは大人小説の作家さんは、司馬遼太郎先生、山手樹一郎先生でした。児童書だと岩崎京子先生、角野栄子先生、あまんきみこ先生でした。

23. 手書きで文章を書くことはある? 
今は手書きはしません。デビュー前は手書きで原稿用紙に書いてましたが…。

24. 執筆時の必需品は?
今はパソコンです。入稿もメールで出来ますから。

25. 文章を書くときに気をつけていることは?
主語を省略したり、述語を繰り返したりしない、読みやすい文章です。

26. スランプに陥ることはある?
あります。コロナ禍で取材にも行けず、家にこもりがちなので、明るい新鮮な発想が生まれてきにくい今は、鬱っぽいスランプに陥りやすいのかもしれません。

27. 26.のとき、どう克服している?
愛して面白がって書くしかないと思っています。 

28. 物語が終わる瞬間は、どのように決めていらっしゃいますか?
主人公が成長を遂げたとき、あるいは幸せな結末が見えたときかな…。「忍剣花百姫伝」シリーズには、Dreamスマッシュ!版で完結したとき、読者からたくさん悲しみの声が届いたので、文庫版(電子版)ではラストシーン、少し加筆しています。読者のおかげで気づけたことがあった作品ですね。

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▲「忍剣花百姫伝」シリーズ(全7巻)児童書版刊行ののち、一般文庫化。インタビューでも語られているように、文庫化にあたって、ラストシーンが加筆修正された。kindleにて(Kindle商品ページへ)

29. 編集者の赤字、正直、ムカつく?
どこの編集部であっても、作家が書こうとしていることをおもんばからず入れられる赤はやっぱり傷つきます。じゃ、他の人に書かせればいいじゃないか…と。逆に、励まされることもあります。今、岩崎書店さんで織田信長の伝記を書いているのですが、行き詰っていたところ、担当編集者さんに「史実を並べるのではなく、越水先生が好きな信長をどんどん書いてみてください。越水先生から信長さんへのラブレターでいいんですよ」と言われたとき、ずいぶん気持ちが楽になりました。

30. ズバリ! 文章力をつけるためにはどうすればよい?
文章力の勉強は、いろんな作家の本をたくさん読むことかな。活字を追うのではなく、そのシーン、シーンを想像して読めば、何を書いているのかすぐ分かるような文章力がつくのではないでしょうか。

 越水先生の創作の源は「愛」。作家の愛が読者に届くとき、物語の世界は生き生きと動き出すのですね!
越水利江子先生の創作の秘訣…すこし垣間見えたでしょうか?

 越水利江子先生のことをはじめて知った! もっと知りたい!という方はぜひ、電子書籍でも読んでいただければ幸いです。刊行から時を経てもなお、熱狂的なファンから支持される今作をぜひこの機会に。