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「ポプラズッコケ文学新人賞」大賞受賞作を徹底紹介&選考の裏側まで語ります!【児童書作家デビューへの扉#02】

子どもが自分で考え、動き、成長するものがたり。
子どもたちが自分で選び、本当に読みたいと思えるものがたり。
そんな作品を、子どもたちに届けられる新たな書き手に出会えるよう、2011年にスタートした「ポプラズッコケ文学新人賞」。
これまでの大賞受賞作を、選考に関わってきた編集の担当者たちが各回の選考会の記憶や記録を振り返り徹底的に紹介、選考の裏側までを語るシリーズ第2回。(第1回は→ こちら
いま、子どもたちに届けたい作品、求められている作品が、ここから見えてくるかもしれません。児童書作家デビューをめざすみなさん、必読です!

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今回は、第6回大賞受賞作「うたえ! かんたーた」(出版時『夏空に、かんたーた』に改題)(作・和泉智)第7回大賞受賞作「セパ!」(作・虹山つるみ)を紹介します。

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▲『夏空に、かんたーた』
(応募時タイトル「うたえ! かんたーた」)
作/和泉智 絵/高田桂

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▲『セパ!』
作/虹山つるみ 絵/あきひこ

★第6回大賞受賞作
「うたえ! かんたーた」作/和泉智

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子どもたちののびやかさが表現された物語

「かんたーた」は、小学6年生の主人公・かのんが所属する地域の小さな合唱団。夏のコンクールを間近にひかえて、団員の子どもたちの練習はいつもより熱が入っています。
そんなある日、かのんの前に突然あらわれたイタリア帰りのおじさん。オペラ歌手のおじさんは子どもの頃から、かのんの憧れの存在。でもいま、かのんの目の前にいるのは、趣味のよくないスカートをはいて、古いアイドルの歌を声をからして歌うヘンなおじさん。さらに、指揮と指導の先生の緊急入院と、物語は波乱の予感からはじまります。

物語に一貫して描かれているのは、子どもたちののびやかさでした。直面する困難にのびやかな気持ちで立ち向かい、そして、歌声ものびやかに読者の胸に響いてきます。

さわやかな読後感と登場人物のユニークさ

この回で最終選考に残ったのは5作品でした。その中で、「うたえ! かんたーた」がもっとも「ストーリー展開も無理がなく、読後感もさわやかだった」と審査委員長の那須正幹先生もおっしゃっています。

「コンクール出場直前の困難に立ち向かう」というめずらしくない物語設定ではあるものの、主人公と合唱団でともに歌う子どもたちが生き生きとよい味を出して描かれていること、そして叔父の人間味も興味深く描かれていることも高く評価されました。

「ズッコケ文学賞は、子どもたちの自主性と行動力を描いた作品に授与されるべきだと考えているので、その点でもふさわしい作品だったと思っている」(那須正幹先生選評より)

作者を信じられるかどうか

児童文学作品を評価するときに、「物語のなかで子どもたちがいかに描かれているか」は、いうまでもなくもっとも大切なことです。
でも、審査会では、その1編の作品についてのみを議論しているわけではありません。
作家がこれからの作品で、いまを生きる子どもたちに何を届けたいのか……そのことを1編の作品から読み取り、想像し、そして、大賞受賞作を決定しているのです。
「うたえ! かんたーた」では、最終審査に臨んだ編集部員も「この作者は、子どもを、子どものために描こうとしている」「作者が信じられる」ように思いました。

これからもわたしたちは「子どもの文学の書き手として信じられる」作品、そして作者との出会いを期待しています。

(文・小桜浩子)


★第7回大賞受賞作
「セパ!」作/虹山つるみ

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スポーツものが重なった最終選考

この回の応募総数166編のうち、最終選考に進んだ作品は5作品。偶然にもそのうち3編がスポーツを題材にしたものでした。
その中でも大賞に選ばれた「セパ!」は、セパタクローという日本ではあまりなじみのないスポーツを扱いながらも、その競技のダイナミックさ、繊細さを、登場人物たちの心情と重ね合わせながら描く、エネルギーあふれる作品でした。

主人公・翔は翔は所属していたバレー部の先輩にいじめられ、部活をやめてからは学校にも行っていない。スポーツ万能で勉強もできる兄との葛藤を
抱える翔。ある日公園で謎の小学生・蓮に出会い、教えてもらったセパタクローという新しいスポーツに翔はいつしか夢中になっていく──。
苦しい状況に、何度も追い詰められては悩み落ち込む翔が、一つひとつ壁を乗り越えていく姿は読者に勇気を与えてくれます。

楽しさの先にあるメッセージ

那須正幹先生は、作品の「テーマは作者が出てきてわめきちらすことじゃない」とおっしゃっていました。社会的テーマを取り入れた堅い話でも、戦争の悲惨さを描いた作品であっても、それを強調して語らない。主人公と一緒にドキドキするストーリーの中から、テーマは読者が感じとるものだと。つまり、テーマはむきだしにしてはいけない、ということなんですね。

じっさい、子どもたちに圧倒的な人気を博した「ズッコケ三人組」シリーズは、ひたすら楽しく夢中になったストーリーの内側に、テーマやメッセージが込められていました。
そういった意味では、この「セパ!」も翔と一緒になってボールを蹴り、困
難に立ち向かうような気持ちで楽しめるエンターテインメント性の中に、苦しさを抱える少年の心の成長が描かれています。

ズッコケ新人文学賞の求める、「子どもたちが自分でえらび、本当に読みたいと思えるものがたり」の中に、未来を担う子どもたちへのメッセージを入れこむ……、「ズッコケ」とはテイストは違えど、同じ志を感じさせる作品でした。

(文・仲地ゆい)


各回の詳しい総評・選考経過はこちらから
第6回
第7回

「ポプラズッコケ文学新人賞大賞受賞作を振り返る」シリーズ(↓)

【2021年9月1日から応募受付開始】第11回「ポプラズッコケ文学新人賞」
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