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「子どもが不登校になっても大丈夫なんだろうか」という不安を抱えていた(かっこわるい編集後記)

本づくりの裏側には、いつだってドラマがあります。
でも、かっこいいドラマばかりあるわけではありません。
編集者は「作家さんといい本を作りたい」という想いだけ抱いて、愚直に仕事をしています。それは実はあんまり派手ではなくて、もしかしたらちょっとかっこわるく見える部分もあるかもしれません。
でも、本づくりって、けっこうそんなものなのです。

このコーナーでは、そんなかっこわるい部分もお見せした編集後記をお届けしてまいります。
なお、かっこわるさは編集者によって異なりますので、温かい目でお読みください。

第三回は、企画編集部の近藤純さんによる『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(石井志昂)の「かっこわるい編集後記」です。

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<内容紹介>
自身も経験者である不登校新聞編集長が、20年の取材を経て伝えたい、子どもとの向き合い方。学校へ行きたくない子どもにどう対応するかといった具体的なアドバイスから子育てのノウハウまで、多くの親子が悩み傷つきながら獲得した知見を1冊に。教育・保育学が専門の東京大学名誉教授・汐見稔幸氏、N高を創設した角川ドワンゴ学園理事の川上量生氏との対談も収録。

不登校新聞編集長の石井志昂(しこう)さんと出会ったのは、数年前でした。『学校に行きたくない君へ』(不登校新聞社・編)でご一緒したのが最初です(ちなみにこの本は、不登校の若者たちが、樹木希林さん、辻村深月さんはじめ、著名な方たちに体当たりで取材して引き出した言葉を1冊にまとめたものです)。

ある日、石井さんの取材に同席していて、石井さんいいこと言うな~とのんびり聞いていました。そして、ふと、あれ、そういえば石井さんが書いた本はないぞ!? ということに気がつき、石井さんの初の著書『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』を今年8月に刊行することになりました。

石井さんは、中学校で不登校になり、その後、フリースクールに通われます。いまは、不登校新聞編集長として活躍され、NHK「あさイチ」「逆転人生」や日本テレビ「スッキリ」などメディアにもたくさん出演されています。

本には、石井さんご自身の経験はもちろん、20年間、不登校で悩む親子を取材し、彼らが迷い傷つきながら得たノウハウが詰まっています。わたしがとくに好きなのは「子どもは親の笑顔が好き」や「子どもは雑談したがっている」です(とはいえ、笑顔どころか、つい子どもにイライラしてしまい、自分の小ささに辟易し、反省の日々なのですが……)。

代表的な子どものSOSや子どもが「学校に行きたくない」と言ったときの具体的な対応も書かれています。それでも、実際に自分の子どもが「学校に行きたくない」と言ったら、どうしようと慌てて、悩むだろうなと思います。でも、この本に書かれていることを知っていれば、実際にそのような状況になったとき、少しは冷静に対応できるような気もしています。

ここで、わたしが原稿を読んでいて、ぐいっと胸をつかまれ泣きそうになった一節を紹介させてください。

自分の不登校を通して、不登校の取材を20年間やってきて、たくさんのタイプの人たちに出会って「不登校でも、だいたい大丈夫そうだな」という結論に達しました。「不登校になっても大丈夫なんだろうか」という不安は私自身が抱えていたものです。その答えを25年後の今、出すことができました。(「おわりに」より)

不登校のつらさを経験されている石井さんの言葉だからこそ、とても力強く、そして真摯な想いを感じます。学校がすべてではない、いまの学校以外でも学ぶことができる、そんなことが当たり前の社会になればと、日本に暮らすひとりとして、心から願っています。

(企画編集部 近藤純)

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