ポップインサイト創業記(32)〜なぜ半年で2つ目のオフィスに引っ越したか?
実は、ポップインサイトは、創業して半年ぐらいのタイミングで1回目のオフィス移転をしています。今回はその際のエピソードをお伝えしたいと思います。
最初のオフィスは、とても人に来てもらえるような場所じゃなかった…
以前も紹介したように、創業時に借りた最初のオフィスは、渋谷のラブホテルの目の前にある、とても残念な雰囲気の所でした。(参照:(20)~最初のオフィスは六畳一間)
実は、起業して半年経った7月に、1回目のオフィス移転をしています。理由は明確で、これまでのオフィスは、普通の人にはとっても来てもらいにくい感じの所だったからです。
ラブホテル街の真ん中にあって、建物もボロい。部屋も六畳一間でめちゃくちゃ狭くて、トイレの音なんかも丸聞こえです。
これでは、人を雇っても来てもらうこともできません・・・。
「最初のユーザテスト」「ユーザテストを広げる」という責任感
一方その頃、事業は多少売上が上がってきて、ますますサービス向上に力と情熱を注いでいました。
元々ユーザーテストを提供する際には、納品する動画1つ1つのチェックはしていませんでした。しかし、動画をチェックしないことには、そこにクライアントにとっての新たな発見点のある、良い動画なのかどうか私達は知ることができません。
そういったことから、海外のユーザーテストのサービスなどは、クレーム制度、返品制度のようなものを設けていました。要するに、ユーザーが動画に満足できない場合は、不満を申し出ることができるようにしてるのです。
これは、私達のライバル会社も採用していて、「何か問題があれば、再テストします」という旨を謳っていました。私達ポップインサイトも、当初この形を採っていました。
しかし、私は途中であることに気づいたのです。それは、「そもそも初めてユーザーテストというものを見る顧客には、ユーザテストの良し悪しを判断することはできない」ということでした。
例えば、これまでカレーを食べたことが一度も無い人には、今食べているカレーが、美味しいカレーなのか、まずいカレーなのか、比較して判断することができません。つまり、料理で言えば、何度かその料理を食べた経験があってはじめて、今回の料理が美味しいものなのか、まずいものなのかを判断できるのです。
多くのクライアントにとっては、私達のユーザーテストが「初めて体験するユーザーテスト」なのです。比較する前の経験というものがありません。ということは、もしユーザーテストがクライアントにとって発見点の無い質の悪いテストだった場合、「このユーザーテストは質が悪いから質の良いモノに改めて欲しい」という要望ではなくて、「ユーザーテストという手法にはやる価値がない」という判断になってしまうのです。一度そうなった時点で、今後二度とその人にはユーザーテストを導入してもらえなくなって終わってしまうのです。
逆に、初めてのユーザーテスト体験の時に良いモノを見てもらえれば、「ユーザーテストはやる価値がある」と思ってもらうことができる訳です。すると、その人は早速、今所属している企業で本格導入するかもしれないし、リピート発注してくれるかも知れない。転職先で導入するかもしれないし、他の人に良さを宣伝してくれるかもしれない。つまり、最初に良さを知ってもらえれば、その人の単位で市場が広がる訳です。
これはとても重要なことだと気づきました。
全てのユーザテスト動画をチェックすることに
そもそも、私は日本で初めてユーザーテストを専門に扱うサービスを立ち上げた人間です。その前から含めてずっと「ユーザーテストを日本に拡めたい」という強い想いをもって事業を行っていました。
話は少し変わりますが、当時、私は自分たちの会社を牛丼の「吉野家」で例えていました。前職のビービットは大企業向けにすごく高い値段で素晴らしいコンサルタントを行う、高級フレンチ、もしくは高級鉄板焼のレストランのようなイメージですと。美味しい最高級のお肉を使って、超高級フルコースを提供するような感じですよねと。それに対して、私達は吉野家ですと。そこそこ美味しくて、とにかく安く早くサービスを提供しますと説明していました。その替わり、数をたくさんやって、売上を上げていける構造を目指していた訳です。
そうなると、当然想定できるのは、最初にユーザーテストを試そうという人は、安くて導入しやすい私達のサービス使うはずだと。そうすると、私達のユーザーテストが、多くの人にとっての初ユーザーテストになる。つまり、私達のユーザーテストの出来不出来が、多くのユーザーテストに対する印象の全てを決めることになる訳です。
この最初の印象が良いものでなかったら、ユーザーテストというものを導入する人が減ってしまうのです。私はずっと「ユーザーテストを拡げたい」と切に思って取り組んでいるのに、サービスの出来が悪ければ、ユーザーテストの人口を減らしてしまう要因にもなり得てしまう。・・・これはとても怖いことだと、責任の重さに気づいたのです。
その事に気づいた私は、クライアントに動画を提供する前に、全部自分で見てチェックすることを始めました。「絶対に質の悪い動画は納品しない」と決意を新たにして、片っ端からチェックしていったのです。そして、納品できるレベルに無いものは自分から撤回を申し出て再度テストし直しました。質の悪いモノは1つも世に出さないと固く心に決めていたのです。
ユーザテストをチェックするための体制が必要に
しかし、動画チェックのような業務を社長が自分自身でやっていたら、会社にとっては大きな不利益が出てしまいます。社長にはやらなくてはいけない業務が山のようにあります。しかも私は大切な営業面も全面的に担っていました。1本30分とか1時間の動画を何百本と見てチェックしていたら、その間は他の業務が一切できません。これでは、会社全体で考えると大きなマイナスです。
でも、やはり、チェックをしないと品質面で大変不安です。チェックをしないという選択肢はありません。私は大いに悩みながら、山のような数の動画のチェックを続けました。
しかしそんな中、何百回とチェックを繰り返す内に、段々チェックポイントを明白にしていくことができました。「これを体系付ければ自分がやらなくても人に任せられる」・・・私は一筋の光明が見えて来た心持ちがしました。 私は早速チェックポイントを定めて行きました。
ところで、ユーザーテスト動画の良し悪しのポイントは何かと言うと、クライアントにとっての新たな発見点(気づき)の有無です。動画を見たことで発見点がたくさんある動画であれば良い動画。気づきが少ないと良い動画とは言えません。
この点を踏まえて、自分が発見点を見つけるポイントをパターン化して、体系化しました。これがあれば人に任せることができます。アルバイトのような人を育成して、動画チェックをしてもらえるのです。
もちろんアルバイトの人はユーザーテストに関しては素人なので、全部完璧にわかる訳ではありません。でも、チェック方法が体系立っていれば、粗くても一定レベルの判別が可能です。
粗かったとしても、発見点が全然ない動画はもちろんダメな訳です。そして、ある程度ポイントを見つけてメモ化できてさえすれば、クライアントから何か言われた時にも、私自身が動画を全部見てなくても、「でもこういう発見点もありますよね。」とメモを見ながら伝えることもできます。
これは大変有益です。早速マニュアルを作り、アルバイトの募集を用意することにしました。
採用の必要性に必要に迫られてオフィス移転
それでは、いよいよ人を募集しようという段になって、大きな壁にぶち当たりました。それはずばり、オフィスの問題でした。あまりにも狭いし、ラブホテル街の真ん中だし、トイレの音が丸聞こえだし、ここだとアルバイトに来てもらえません。私達は、すぐに引っ越すことを決めました。
新しいオフィスは、同じ渋谷に見つかりました。結構きれいな事務所で、広さも倍ぐらいになりました。家賃も6万円から12万へ倍増しましたが、やむを得ないところでした。
このように、私達はわずか半年でオフィスを移転した訳ですが、それは業績がそこそこ良いからと調子に乗って引っ越したというのではなく、クライアントへのサービス向上の為に、必要性に迫られて引っ越したという感じでした。
本音を言うと引っ越したくありませんでしたが、アルバイトを雇わないと必要な体制が作れない。そんな感じの移転でした。
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