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ポップインサイト創業記(17)〜創業資金の捻出と株割合

起業していく上で言いにくいことを言わなくてならない場面がたくさん出てきます。会社経営をしていく上でそういった『言いにくいことを言う覚悟』はとても大切です。

創業前の資金集め

私は当時から、創業時も役員報酬はきちんと取るべきだと考えていました。一般的に創業時は利益が上がりにくいので、役員報酬をカットしがちです。しかし、自分達の役員報酬を極端に下げて生活ができないレベルにしては、健全な会社経営とは言えません。

そこで、ある程度お金をきちんと集めてから会社を作るべきだと考えました。月々僕と喜多君の報酬・社会保険料などで最低65万円程が必要です。創業時の利益が薄くなりがちな中で、1年間のランニングコストを確保しようと思うと、最低700万円は必要と試算しました。

勿論単月黒字を狙って事業をしていくわけなので、毎月ずっと赤字というわけでありません。しかし、手堅く考えると、この位の資金を事前に用意する必要がありました。

1番リスクが少ないのは身内に頼むこと

私は起業するに当たって、中小企業の社長を志す人向けの本や起業するための本といった類の書籍を、かなり数多く読んでいました。

その中に良く書かれているのは、「両親や家族にはお金の相談がし辛い」という事です。誰もがお金の相談は家族に言いにくいと。だから一般的に銀行で借りる人が多く、その為、本には銀行からお金を借りる方法などが詳細に説明されています。

しかし、一番リスクが無いのは家族、親族からの融資です。銀行やファイナンスで融資を受ければ、元本に加えて利子の返済が必要です。家族、親族からの融資であれば、多くの場合は利子が必要無い事が多いのです。また、身内であれば、苦しい状況の時には少しの間待ってもらえる可能性も高いです。どちらが現実的に良いのかは一目瞭然です。

世間の人達が家族に融資は頼み辛いという気持ちも理解できますが、そういった相談ができないぐらいのメンタリティでは起業などできないと思います。私が覚悟を持ってお願いした所、両親は快く融資を承知してくれました

その時の試算では、1年間のランニングコストとして700万円が必要でした。そこで、私が自分の貯金から150万円出しました。その上で奥さんから100万円借り、両親から200万円借りて合計450万円を私が出資すると。喜多くんが残り250万円を出資しましたので、結局資本金700万円を集めて会社を設立することになりました。

出資の配分も最適な形を徹底的に考える

次に考える必要が出てくるのは資本金の出資構成比です。資本金の出資率によってそれぞれが持つ株式の比率が変わってきます。株式の所有比率によって議決権が変わって来ます。

一般的には、社長が大半の株式を所有して他の役員は所有比率を下げるケースが多いと思われます。仲間と起業する場合は50:50みたいな考え方もあります。

この資本金の構成比も、1番良い形にしようと思うと正直とても悩ましく、私もギリギリまで悩みました

そこで、私は当時私のメンターをしてくれていた先輩に相談しました。先輩は細やかに定石を踏まえてどのような選択肢があるかを教えて下さいました。その際に、彼が強く言っていたのは『50:50』だけは絶対に止めた方が良いということでした。

どちらが意思決定権を持っているのかを明確にしておかないと、物事が決められません。中途半端に共同創業だからと対等に設定してしまうと、大切な会社の決定をすることができないのです。

そこで、最終的に私達は私の出資比率を高くして、私と喜多君の持ち株比率を約7:3にする事に決めました。

『創業者間契約書』締結へ

ところで、起業時に共同創業者同士で取り交わす契約書に、『創業者間契約書』というのがあります。これは株式を最初に発行する時に取り交わす物です。

会社を経営していく途中で、創業メンバーの中から数名が辞めるということは普通に起こり得ることです。他にやりたいことができるとか、仲違いしたりとか、方向性が違ってきたりとかする可能性もあります。

『創業者間契約書』の内容はどういったものか。簡単に言うと「辞めた方の株式は残る方に渡す」というものです。これを事前に契約することによって、最終的に片方が辞める時に、辞めない側が辞めた側の株式を買い取って自分で持つことが出来ます。

当然、最初のタイミングでお互いにそんなこと言いたく無い訳です。会社を成功させようと希望に溢れている時期ですから、皆が上手く行くという思いでやっています。そんな時にどちらかが辞めた時の事のようなわざわざ水を差すような事を言いたくありません。しかし、現実に誰かが途中で辞めることは可能性として大いにある訳です。

特に揉めて退社するという場合は、株式をライバル会社に譲ってしまうという可能性もあります。

しかし、そういった場合も事前にこの『創業者間契約書』を取り交わしておけば、株式の所有権が分散することを防げます。これは必ず取り交わす必要があると考えました。

そこで、私と喜多君がお互いに甲乙版を持つ形で創業者間契約書を取り交わしました。つまり、喜多君が辞める際には池田が株の全てを買い取るというバージョンと、池田が辞める際には喜多君が全て買い取るというバージョンをお互いに取り交わしたのです。

そうすることによって、残念ながらどちらかが違う道に進む場合にも、株式に関する大きなトラブルを防止することができます。

ちなみにフォーマットは、AZX総合法律事務所の提供するものを参考にしました。非常に参考になるので、これから同じフェーズになる皆さんもご覧ください。

https://www.azx.co.jp/modules/docs/index.php?cat_id=35


実際ポップインサイトでも、トラブルは全くなかったのですが、創業後に何度か株式比率を調整することがありました(どんな状況だったかは創業期をお楽しみに!)。お互いに話し合いの上での合意だったので、結果的にこの契約書を使うことはなかったのですが、創業後に状況が変わることは大いに有り得るということです。


会社をやるからには言わなくてはいけないことは言う事が大切

家族にお金を借りるお願いをすることも、起業時に辞める時の事を見据えて、創業者間契約書を取り交わすということも、確かに言いにくいことかも知れません。

しかし、会社経営をする上で、『言わなくてはいけないことは言う』というのは、必ず持っておくべきメンタリティです

一般的には難しい事かも知れません。しかし、社長になるということは自分が社長としての責任を持ってステークホルダー(関係者)の利害を守る為に、真剣に戦いながら生き抜いていくということなのです。

会社を経営していくからには、「言わなくてはいけないことは言う」という覚悟がとても大切です。

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