ポップインサイト創業期(3)〜Sansan社との出会い

第4回コンバージョン・アップ研究会は、クラウド名刺管理サービスアプリの『Eight』をテーマとして開催しました。 このサービスを提供する『Sansan株式会社』は、「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに掲げ、法人向け名刺管理サービス『Sansan』と個人向け名刺アプリ『Eight』を提供しているマザーズ上場企業です。


名刺管理アプリ「Eight」が第4回のテーマ

『Sansan』は、俳優の松重豊さんの「それさぁ、早く言ってよ ~」というセリフのコミカルなCMでお馴染の法人向けサービスです。対する個人向けアプリ『Eight』は、フリーランスの方や会社員などの個人ユースの分野でシェアが高い名刺管理ツールです。

コンバージョンアップ研究会の第4回目は、この個人向けアプリの『Eight』を対象にしてSansanのオフィスで開催しました。

当時『Eight』はまだまだバージョンがかなり浅い段階の頃でした。『Eight』の当時の課題は、“ユーザーのダウンロード率と登録率が低い”というものでした。 そこでユーザーテストを行うことで皆でこの問題を解決することをテーマに研究会が行われました。


趣味の勉強会が、10人以上の企業参加者が

第4回研究会当日、蓋を開けて見ると、Sansanの役員クラスがずらりと参加しているといった感じでした。そんな上位の役員を始めとして社員が大挙して参加して来るなんて、“それさぁ、早く言ってよ ~”と思いましたが、このときに率直に私が感じたのは、イベントの規模が参加費無料を遥かに超えて、有償レベルになって来ているということでした。

第1回、第2回、第3回までは参加者も少なく、そこまで会としても小規模なイメージでしたのですが、第4回でかなり大々的な雰囲気の会になってしまったのです。

そもそもこの研究会は、参加費無料の半ば趣味的なライトな感覚で、楽しみながら始めたものでした。ところが、Sansanの方達からすると、あのビービットのコンサルタントが無料で勉強会を開催してくれるらしいと、取締役や社員の方達が高い期待を持って参加したのです。私は、「これ、ちゃんとやらないとヤバいじゃん」といった感じで、一気にプレッシャーが高まりました。しかし、例え無償であったとしても、価値を出さねばならないと必死になりました

そんな中でのスタートではありましたが、必死かつ真剣に進めた結果、第4回研究会も参加者から高く評価される会にすることができました。


勉強会コンテンツも凄い勢いで改善

実は、ここまで第1回から第3回まで開催を重ねる中で、毎回内容を改善することで、勉強会のコンテンツの質が、当初に比べて飛躍的に向上していたのでした。私は、毎回の勉強会で必ずアンケートをとっていたのですが、そこで出てきた課題や意見を、ことごとく全て解決して次の回に反映していったのです。

当然、1回勉強会を開催したら、必ずそこに学びがある訳です。私は必ずアンケートをじっくりと読んで、わかりにくいところがあったみたいだなとか。もっとこうしたらよかったなとか、課題を得たのです。

アンケートに書かれてくる内容は毎回大小多岐に渡ります。例えば、

・表面的な課題と、サービスの根幹に関わるサービスの課題みたいなのが結構ごっちゃになっちゃったりしてるんで、そこをちゃんと分けて考えましょう。
・次回はこういう風なワークシートにしてはどうか。
・PCを誰に持たせるか予め考えた方が良い。
・無線LANを事前に確認した方が良い。
・荷物置き場をちゃんと置くようにする。
・お菓子が多すぎた。

・・・といった様に、課題は勉強会のコンテンツに関わるような重要で大きな内容のものから、お菓子の準備などのような小さくて細やかな事柄も含めて出てきます。私はそれらの出てきた課題を凄い勢いで全部改善していったのです。

そして、それらの改善内容は自分の学びにするだけで終わらせず、研究会参加メンバーに共有していきました。


改善内容は、参加者に後からフィードバック

当時私は研究会に参加してくれたメンバーのフェイスブックグループを作っていました。そして、参加者からアンケートで課題が提起された際や、それを改善した際に、その内容をテキストにしてコミュニティーメンバーに毎回必ずフィードバックしていたのです。

参加者は課題を提起してくれている訳なので、「指摘を受けた事項はこれこれで、このように全て改善しています」とフィードバックした方が良い訳です。

私は、言われたことは自分で学びとするだけで終わらすのではなく、今後はこうしますと宣言して実行したのです。それを毎回必ず行っていました。

これは誰にそうするように言われた訳でもありませんし、「何故無償でそこまでやるの」と聞かれたこともありました。しかし、自分としては、より良くして行った方が、よりユーザーテストが世に拡まると思ったのです。

改善してその内容を皆に共有するアプローチは、まず自分にとっての大きな学びになります。さらには、参加者にとってもより満足度が上がるサービスの1つにもなります。このように、改善することはメリットしかないと思っていましたので、当時の私はとても真面目に改善を繰り返していったのでした。


改善する姿勢が信頼されて、その後の重要な関係につながっていった

色々な会社やイベントを見て思うのは、毎回同じ事を繰り返しているケースが多く見られるということです。例えば、セミナーなどでも、第1回と第2回と内容が同じ、という様なケースをよく見かけます。

しかし、真面目に取り組んでいたら、直すべきことは毎回山のように出てくるはずなのです。嫌な所に目を向ける意識さえあれば、自分を内省的に見たり、外部からのアンケートを丁寧に読み込んだりすることで、絶対に改善点が百や2百くらいすぐに見えてきます。

そして、それを直すのか、直さずにそのまま行くのかで、成長や進化の速度が全く違うと思うのです。やはりそれをやらない人は駄目だと思います。何故そのままで終わらせてしまうのか、改善した方が全然良いのにと。私には改善せず同じ形でやっている意味が全然理解できません。

私は、コンバージョン・アップ研究会を開催する度に、その時に出てきた課題を改善するということを真摯にずっと行っていきました。その結果、第4回の時にはそのコンテンツの内容が、スタート時よりも遥かにレベルアップされていて、Sansanの方達はそのレベルアップされていた研究会に参加したからこそ、とても高い評価をしてくれたのだと思います。

実は、Sansanの社長、寺田親弘さんや役員の方々とは、この時から現在に至るまで、とても良い関係が続いています。今もほぼ毎週打ち合わせしているような関係が続いています。

寺田さんは、現在も精力的に幅広い活動をなさっていて、無人島にオフィスをつくるといった取り組みや、徳島県に神山高専という私立の高等専門学校を立ち上げるというプロジェクトをしたりとか、幅広く色々な企画を立ち上げられています。私もそういった面白い取り組みに、時に会社として、時に個人として、参加させて頂いています。

私は、研究会をきっかけとしてSansanの方たちと出会ったのですが、実はこの後Sansanは私が起業した後に大きなクライアントになってくれたのでした。創業期に、仕事の依頼を頂いたりとか、コンサルワークで入らせてもらったりして、初期のとてもありがたい顧客になってくれたのでした。

今も続くこの貴重なご縁のスタートは、第4回の研究会で好印象を持ってもらえたことだったと感じています。研究会が毎回改善を重ねて4回目に高いレベルになっていたので、その時のレベルの満足度が高かったのが、その後現在まで続く信頼関係に繋がっているのです。ここからも、改善を重ね向上し続けることは、得難い信頼を得ることにつながると心から思います。

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