ポップインサイト創業記(75)〜M&A交渉と繁忙期が重なる
メンバーズ社からのM&Aの打診を受け、手続きを進める為にデューデリジェンス(投資価値調査)の為の膨大な資料準備を行っていった訳ですが、その作業は丁度、本来の業務においても1年で最も忙しい、年度末の時期とタイミングが重なってしまっていたのでした。
今回はそんな超業務過多の中、工夫しながらM&Aの為の資料準備と本業の両方をやり切って行った際のエピソードを紹介させて頂きます。
膨大な資料準備に携われるのは自分ひとりだった
前回の記事((74)〜M&Aの打診を受ける)でも紹介した様に、M&Aを行う為には、投資を行うにあたって、投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査する“デューデリジェンス”というものが行われます。そして、その為の膨大な資料を全て完璧に揃えなければいけません。つまり、かなり大量の書類ワークが発生するのです。
先方のメンバーズ社は、体制も整っていて書類ワークをする人材も豊富です。しかし、一方の私達ポップインサイトは、実質私一人しか作業に携われる人間がいません。共同創業者の喜多君も外部からサポートしてもらう形になっていたし、その他のメンバーも大半が新たに合流したばかりの人達です。さらに、そもそも事務関係の業務は私が自らほぼ一人でやってきていました。こういった事から他に頼める人がいないというのが実情でした。
できたばかりの新体制の状況下、1番の繁忙期が締め切りに…
2016年の12月にメンバーズ社からM&Aの打診を受け、双方意見を交わしつつ基本合意をしたのが翌2017年の2月でした。そこから「本年度中の3月末までに全てを完了させましょう」という事になり、膨大な資料の完備を3月末までという凄く短い期間で行う状況になっていました。
しかし、3月はBtoBの業態にとって1番の繁忙期です。クライアントの期末予算消化などがあって発注が集中して届きます。他に何もなければとてもありがたい月です。この年も非常に多くの発注を頂いていました。
しかしこの年は、同時並行で行わなければならないM&Aの為の恐ろしく大量の資料準備作業が入った訳です。しかも当時のポップインサイトの状況は、新たな体制を設けたばかりで、業務に関しても誰かを頼りにするのが難しい状況でした。つまり、両方とも私が一手に負荷を背負って取り組む以外に道は無かったのです。
通常業務と両立するには・・・
当時の私の状況はというと、やはり会社の代表をしていたので、対外的な折衝や大きなクライアントとの商談などがメインの業務でした。毎日外で重要なアポイントメントを5件前後行い、全てを終えて戻るのはすっかり夜になってから、というスケジュールです。すると実際にM&Aの為の書類ワークができるのはかなり深夜の時間帯だけ、という状況になってしまう訳です。
特に当時はリモートで商談を行う時代ではありません。アポイントメントはほぼ全て先方に出向いて行うものでした。朝10時位に出発し、移動、アポイントメント、移動、アポイントメント、移動、アポイントメント・・・と繰返し、戻るのは早くて19時過ぎといった感じのイメージです。そうすると、毎日9時間以上ロックされてしまう訳です。
特にもったいないと感じていたのは“移動時間”でした。当時電車移動だったので、移動時間にはスマホを確認するとか些細な事はできるものの、PCを開いて書類をしっかり作り込むとかそういった書類ワークは難しい状況でした。
しかし10時から19時まで外出しているものの、実際に商談などのアポイントメントを行っているのは、5件なら5時間位です。残りの4~5時間は、実は“空時間”なのです。単なる移動時間とか、早めに到着しておいたり次に遅れない様にする為の調整時間とか、そういった“無駄な時間”と言えるものです。そして、この“無駄な時間”の割合がとても多いのです。さらには満員電車の移動が何度も重なると疲労が重なり、それらを全て終えて夜に戻った後に作業に集中するのは難しい、という現状になっていました。
そういった状況が続く中で、やらねばならないM&Aの為の資料準備がなかなか進まず、「どうしたものか」と悩む日々が続いていました。
工夫を重ねて乗り切って行った
そんな中、高校の同級生で、ちょうどその頃一時的に職に就いていない友人がいました。しかも、彼は運転が上手でした。「そうだ、彼に運転手をお願いしてみよう。」この様に着想した私は、彼に打診してみる事にしました。
ありがたい事に、彼はすぐに快諾してくれました。そこから、朝に車で迎えに来てもらい、一日アポイントメントを回り、全てを終えた夜に戻って降ろしてもらう、といった感じで日給制で手伝ってもらえる事になったのです。
これは本当に助かりました。移動してる最中、ずっとパソコンを開いて作業できる様になった訳です。実際に、“移動時間”を“作業時間”へと変える事ができたお陰で、格段に必要な書類ワークを進めることができました。
この運転ヘルプを一例として、様々な要素での工夫を重ねる事で、本業の繁忙期と、膨大なM&Aの資料準備を両立して乗り越えていく事ができたのです。
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