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ポップインサイト創業記(61)〜「一人ワースト会議」で最悪の事態を想定する

前号まで紹介して来た様に、私達ポップインサイトは調子にのってしまったことで好調から一転ピンチを迎えた訳ですが、そんな状況を打開する為に私が試みていた「一人ワースト会議」という取り組みを紹介します。

毎月1回最悪を想定する一人会議を開催

当時私は、毎月1回ワーストケースを考える一人会議の場を作っていました。第3土曜日に予定を入れて、もっとも悪い状況になったらどうなるかを想定しておくようにしていたのです。最悪を想定して心算と準備ができていれば大半の事には対処できます。そこで、「1人ワースト会議」と名付けて毎月必ず行っていました。

当時の財務状況は、4月、6月、7月、8月と予想を大きく下回った単月赤字の状況が続いて、とても苦しい状況でした。

「1人ワースト会議」で最悪の状況を検討する

毎月の資金状況は、折れ線グラフ化してみると上下に波打つ様なビジュアルになるんですよね。月の中で売り上げによる入金が入ると上向きになり、給与や家賃など支払いをしたら下向きになります。月の中で上下していく様子が波状になる訳です。そして通年で見た時に、黒字幅が広がって行くと波打ちながら全体的に右肩上がりになっていき、赤字幅が広がっていくと波打ちながら全体的に右肩下りになっていきます。

当時私は、この波打つグラフが最悪のペースで右肩下がりで行った場合、いつ位の時点でキャッシュがなくなってしまうかを試算してみました

因みに、会社のキャッシュは大きく分けて2種類あります。1種類目は自分たちが稼いだ営業利益プラス資本金です。それに加えて2種類目に銀行などの金融機関からの借入です。私達の場合は、日本政策金融公庫と信用金庫から、いざという時の為に融資を受けておいた借入分です。私はこの借入分に関しては、いざという時の座布団というかバッファ分として基本的には使いたくないと思っていた訳です。

そんな中改めて一人ワースト会議の場を設け、意を決してグラフと向き合いました。グラフにはここまでの財務状況の推移が表示されています。

「3月は過去最高の単月売上を上げたので、バーンと上がっている。しかし、4月は大赤字でガクンと下がった。5月には3月分の分割入金があって少し持ち直す。しかし、6月7月8月と毎月2〜300万ずつ赤字が出てぐんぐん右肩下がりに・・・」

グラフには、これまでメンバー全員で必死になって貯めてきたきた資金が、どんどん食い潰れていく様子がありありと出ていました。あんなに一生懸命働いたのに、みるみるお金がなくなっていく状況になっている。「お金が消える消える消える・・・」という猛烈な恐怖感に襲われました。

しかし何とか気持ちを立て直して、本題の「最悪のペースで行ったらいつ資金がショートするか」を試算しました。私たちの当時のモデルは大半がスポット受注なので、最悪1月の売上がわずか100万円になることもあり得ます。実際に4月は150万しかありませんでした。6月7月8月は毎月300万位の入金があって、何とか昨年比の売上をぎりぎり割らない位にはなっていましたが、今後どうなるかは全く分かりません。もしかしたらメチャクチャ下がってしまい、100万とか200万とかになるかもしれないし、ならないかもしれない。 そう、実際には下がらない可能性だってある訳です。

しかし、その場は最悪を想定するワースト会議です。最悪な低水準になった場合を想定して試算しなければ意味がありません。そこで、改めて最悪の前提で試算してみると、あと7〜8ヶ月後に完全に資金ショートする可能性が見えてきました

今のコスト構造のまま最悪の水準で行ってしまうと、これまでの営業利益とか資本金を全部失った上に、金融機関から借り入れている分も無くなってしまって、全くお金がなくなるという状況が7〜8ヶ月後にやってくる可能性がある、という事が分ったのです。

状況を整理してみてさらに猛烈に焦った

「わ、ヤバ」・・・。私は猛烈に焦りました。まさかこんなことになってしまうとは。

振り返ってみれば、綺麗なオフィスに移転したのも、インター生を10人も採用したのも、外部顧問サービスを導入したのも、全て強いファクトやエビデンスや成長できるベースがあった訳ではありません。堅調にやって来たものの、周りのベンチャーの様な快進撃もなく、こじんまりやっているという焦りがあっての判断でした。

そんな時に3月にスポットでドカンと売上が上がり、「状況を変えたらさらに規模感が上がっていくとか、成長が加速するのではないか」という甘い甘い見通ししかできていなかったが故にこうなったという事に改めて気づき、猛烈な恐怖に苛まれました。

勿論、パートナー企業やクライアントの信頼感を勝ち取っていたので、小さい案件はまだまだ結構来ていました。その為全く売上が無いという事はありませんでしたが、黒字化には程遠い状況でした。

そんな中も、膨らんだコスト分の支出は、無情にも次々と出て行きます。赤字幅が広がり、手元の資金はみるみる減って行く。「あ〜ヤバイ」と、猛烈な恐怖感を1人で抱えて悩む夏でした。

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