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ポップインサイト創業記(13)〜展示会で逆営業し、パートナーを獲得

直販をスパッと止めてOEM戦略を採る事にしましたが、起業するに当たり事前に数社の有力販路を持つことが必要だと考えました。

クロスコミュニケーションさんと展示会で出会う

私達の初期の有力顧客の1社に、今でも取引が続いている『クロスコミュニケーション』という会社があります。

クロスコミュニケーション社はクライアント向けのシステム開発会社です。クロスマーケティングというリサーチ会社の子会社で、旅行会社などの大手企業のシステムを制作する会社でした。

この『システム開発』というビジネスは、1件の規模感がとても大きく、開発の単価もとても大きいビジネスです。

システム開発会社に依頼するような所謂『大手企業』は、新規の業者に発注するということは殆どありません。何かしら従前からの受発注の取引関係がある数社に打診して、その中から検討の上で発注するという形が一般的です。

つまり、小さな規模案件でも大企業の仕事を1件受注できると、大きな発注を受ける道が開けるのです。クロスコミュニケーションは、こういった大企業を多く顧客として制作の実績のある会社でした。


Clicktaleを売っていた理由は「営業のフック」

私が最初にクロスコミュニケーションさんと出会ったのはある展示会での事でした。たまたま情報収集に来ていた展示会で、クロスコミュニケーションさんがあるサービスを展示していたのです。

この時、彼等が売っていたのは『Clicktale(クリックテール)』というツールでした。

▼Clicktaleのウエブサイトスクリーンショット 2020-06-03 9.23.06

Clicktaleは『ヒートマップ』と呼ばれる、WEBサイトを使った人がどのページをどのようにみているかというのをマウスの動きを基に可視化するツールです。

Clicktaleはクロスコミュニケーションの自社製品ではありませんが、何故このように展示会で代理販売していたのでしょう。

クロスコミュニケーションが求めていたのは、顧客層の大企業に1回でも取引の実績を作ることで、取引の口座を開き、その先の大きなシステム開発の発注を貰う事でした。

そのため、どんな商材でも良いので、入り口となるクライアントに導入してもらいやすいサービス、所謂『フック商材』を探していたのです。

つまり、彼等としてはそのフック商材は何でも良かったのです。そこで儲けようとしている訳ではなく、入り口として効果的であることが大切でした。そこで導入してもらいやすいライトな商材を求めていた訳です。それが当時の彼等にとってはClicktaleだった訳です。

Clicktaleは認知もそれなりにあるインパクトの強いツールですので、クロスコミュニケーションはこれを大手企業との取引を始める為の『フック商材』として取り扱っていたのです。


フック商材としてのユーザーテストの可能性

しかし、Clicktaleにはクライアントが導入するにあたり1つ大きなハードルがありました。それはこのツールを導入するためにはクライアントのWEBサイトをシステム改変する必要があったのです。

このツールを使えるようにするためには、所謂『タグを埋める』という作業が必要です。つまり企業が自社のWEBサイトにClicktaleを導入するためには、そのサイトのシステムの一部を改変する必要があるのです。そういった理由からClicktaleは値段が安いのにも関わらず、実際に導入するのが難しいという状況がありました
 
それに対して、我々の『ユーザーテスト』はタグ入れ等のシステム改変は一切必要ありません。クライアントにしてみれば、私達が手配したユーザーが使っている様子を録画した動画が自動的に届くだけです。

つまり、クライアントにしてみれば何も負荷なくテスト結果が手に入ります。客観的に見るとユーザーテストの方が遥かに導入し易さの点で勝っていました。

「これはきっとニーズがあるぞ」と思いました。

私はその場でクロスコミュニケーションの担当者にユーザーテストのメリットを説明し提案しました。すると、窓口の方は「それは良いですね!一度会社に来て詳しく説明してもらえませんか」と依頼をして下さったのです。

そして、後日訪問して打ち合わせをした際には、直ぐにユーザーテストの良さを理解して頂き、早速数日後の大手企業への提案の際に、ユーザーテストを付加価値にする提案をして頂けることが決まったのです。

▼導入決定後にはClicktaleと並びフック商材に

ちらし


パートナーがそのまま使える提案書や資料を提供

実は、その打ち合わせの際に、私は数点の『導入してもらい易くする為の提案』をしました。

まずは、クロスコミュニケーションさんがプレゼンをする際に使用する『資料のテンプレートをこちらで提供すること』を提案しました。資料を1からクロスコミュニケーションさんに作ってもらうだけでも、手間が増えて導入が難しくなってしまいます。それをクリアする為の提案でした。

次に、『初回のテストを無料にすること』を提案しました。全く知らないサービスにいきなりお金を払ってもらうのは厳しいと。それならば初回を無料にすることで大いに導入しやすくなると考えたのです。

さらに、先行して導入されていたClicktaleとの使い分けの提案をしました。彼等はClicktaleを有料にて契約しています。そこを完全に切り替えてもらうとその料金分は損をさせてしまいます。そこで、両者の強み、弱みを明確に説明して、完全にユーザーテストに切り替えてもらうのではなく、Clicktaleとの使い分けをしてもらうことを提案したのです。

比較

一度もユーザーテストをやったことのないクロスコミュニケーションさんからクライアントへ提案してもらうのです。その為には、彼等が少しでも勧めやすく出来るようにする必要がありました。私はその為に出来ることは何かを徹底的に考え、実行していきました。その結果、そこから多くの受注が生まれていったのでした。


パートナーとの出会いはどこであるかわからない。可能性のアンテナを常に広げるのが大事

クロスコミュニケーションさんとは今でもとても良いお付き合いをさせて頂いています。このクロスコミュニケーションとのご縁のきっかけは展示会でたまたま会ったことから始まったものでした。

これは私が当時、有力の販路となる顧客を求めて常時アンテナを張っていたから成し得たことだと思います。常にニーズがある所が無いかを探し続けて求めていたからこそ、展示会でClicktaleを扱っていたクロスコニュニケーションを見てピッっとひらめくことができたのです。

この様に、自分達のサービス展開を拡大していくためには、常に可能性のアンテナを広げていくことがとても大切だと思います。

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