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アメリカでの呼び名の不思議

外資なので東京オフィスから海外転勤になると、呼び名をラストネームからファーストネームに変更する人が多い。世の中ほとんどの国はファーストネームで呼び合うのでグローバルスタンダードに合わせる。アメリカの上司が私のアサインを世界中にアナウンスすると、昔の同僚たちが私の呼び名がファーストネームであることに気づき、この名前変更は日本人が海外デビューするときの儀式だよね!とコメントしてきた。Saito-san (仮) からEri (仮) に変わるのはなんだか少しはずかしい。。

アメリカの上司に、何と呼べばいいか数回確認された。彼女は日本人と働くのは初めてなのであまりわからないと前置きした上で、もしラストネーム+sanがComfortableだったらそう言って、ファーストネームも本名はEriko(仮)なのにEriにしたのは私たちが呼びやすいから短くするのであればそんなことはしないで、どう呼ばれるのがComfortableなのか教えてと。名前って親から付けられて勝手に周りから「ちゃん」を付けられたり呼び捨てで呼ばれたり省略されて呼ばれたり、学校や会社やオフィシャルの場では必ず名字+さんなわけで、自分でこう呼んでほしいって考えたことがなかったので面白い体験だと思った。

それで気付くのはみんなの呼び方が一筋縄ではないこと。普通にメールアドレスと一緒に表示される名前の人は楽だけど違う人も多い。同じMatthewでもMattと呼ばれる人とMatthewと呼ばれる人の差は何?とかTerriにメールしといて、と言われて調べてみるとTerriはいなくてTheresaのこと?と確認しなきゃいけなかったり、PatrickからCall me Paddy❤️ってメールが来て察したり、本当に文化の違いって面白い。

ある日上司が税務署に行かないとと遅れて出社した日があった。息子が運転免許を取るがIDに納税証明書を出そうとしたら本名のJonathanではなくJohnだったのでrejectされたと。私たちがJohnとしか呼んでないから税理士が間違えたのだと。誰もが息子をJohnとしか呼んでないので誰も知らないって。。

メキシコオフィスのHenriqueはエンリケと呼ばれるけど、アメリカオフィスのHenriqueは英語読みでヘンリケでどういうこと?とヘンリケの方に聞いたら、自分はブラジル人でそもそもヘンリケでもエンリケでもないけどまぁみんな発音できないしそれで良いよ、とのこと。

Ann MarieやChaley Joはミドルネームまで込みで呼ぶし、ミドルネームをメールアドレスに入れる人もいれば省略して入れない人もいる。留学時代のルームメイトは、Student IDのミドルネームの中国名部分を塗りつぶしてたし、台湾人の友達はRJってよんでと言われてRとJは英語名と台湾名らしいけどなんの略かFacebookにも書いてなかった。中国人や台湾人は英語名を大体持っているが、親が付けるのではなくて小学校の英語の時間にみんなで決めたり先生が決めたりするのでそれをずっと使うそうだ。

つまり自分でこう呼んでね!と決めたらそれを周りに伝えてそう呼んでもらう。周りもそれを尊重する。そういうシステムらしいので恥ずかしがらず、胸を張ってこう呼んでね!といえば良い。実は私は昔から自分の名前が好きではなく。親には悪いけど響きも漢字も好きではなくて。でも短くしてローマ字で書かれた自分の名前は好きなことに気付いた。だから大袈裟だけど生まれ変わったような気分になる。名前って個人のアイデンティティに関わるものすごく大事なものだ。そこには個人の気持ちが尊重されるべきだと思った。夫婦別姓にこだわるのだって、結婚したからってなぜ夫の姓に強制的に変えられるのを受け入れないといけないのかわからない。

帰国後は元上司にどうするの?と聞かれた。ラストネームに戻すのかファーストネームのままでいくのか。新上司とはアメリカに行ってから知り合ったので彼は私をファーストネームで呼ぶ。元上司はラストネームで呼ぶ。私がえーどっちでも私なことには変わりないからなぁ、と言ったらちゃんと決めるべきだ!と言われ、じゃあはファーストネームねとなった。何事も自分でこうしたい!と伝えるのが大事なんだなぁ、このカルチャー。