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天職に出会えた14歳のあの日。

あれは確か中学2年生の初夏だったかな。

なんとなく美術部には入っていたけど、学校が終わったら暇な時間が沢山あり、天気が良いので自転車で近所から少し離れたくらいのところまで1人でウロウロ走っている日がありました。

そこそこ家から近いのに、見たことのない手芸屋さんらしき路面店を発見して中に入ってみました。
私の母は家でパッチワークなど色んな手芸のお教室をしていて、私も一緒に縫い物やトールペイント、染め物などを教えてもらっていたので、手芸に関する物はなんとなく気になり入ってしまったんですね。

中学生の女の子が1人でお店に入ってくることはなかなか珍しかったのか、店員さんはすぐ私の方に近づいてきて…

思いもよらない言葉で声をかけられました。

『おねえちゃん、あらっ爪キレイね〜』

母がいつも爪をキレイにしていたので私も真似をして、10本キレイに伸ばして整え、透明のネイルをいつも塗っていました。
店員さんも爪を伸ばしマニキュアを塗っていたので
ネイルが好きな人なんだなぁ〜と思いました。

そしたらその店員さんはまたまた思いもよらない言葉を投げかけてきました。

『爪にお花描いてあげる』

私の薬指にアクリル絵の具でさささーっとお花をひとつ描いてくれて、初めての事に驚きました!

『おうちに帰ったらこの上に
    トップコートを塗るんだよ。』

アクリル絵具は家にもあり、トールペイントをしていた時に使っていたので、水性だからコーティングしないと剥がれてしまうとすぐわかりました。


私は薬指をぶつけない様に気をつけながら自転車で飛んで家に帰り、まっすぐマニキュアの棚を開けてトップコートを塗りました。


その瞬間…私の世界が…人生が変わりました。


店員さんに描いてもらったお花はトップコートを塗ると色が濃く発色されて、なんだかふわっと水中で浮かんだ花の様になりました。
突然爪の上に咲いた花が生き物に変わった!
私にはそう見えたのです。

全身に心地よい電流が走った様な
なんだか今まで感じたことのない感覚。
この瞬間の感動は今も忘れない…。


それから私はその時の感動が忘れられず、何かに取り憑かれたかの様に、自分や母や友達、ネイルチップに家にあるアクリル絵の具でお花を描きまくりました。
「お花を描きたい」というよりは、トップコートを塗ったあの瞬間の感動を何度も味わいたかったんです。
色や形によって見え方が変わったりするので、

『赤はどうだろう?白はどうだろう?混ぜた色はどうだろう?』

色と色の組み合わせは無限にあるので、トップコートを塗る実験は何日も何日も続き終わりがありません。

実験はどんどん進みました。
その当時出版されていたネイルの本を買ってきて、最初から最後まで載っているネイルのデザイン全て見て真似て描きました。
それでもまだまだ実験は足りなくて、真似たネイルアートのアレンジを始めて、自分の思い描いたデザインを描いて作って…終わりはありません。

実験済みのネイルチップはコルクボードに敷き詰めてキレイに貼り、お部屋の壁に掛けていきました。

部屋の真ん中には常時設置されたネイルテーブルとイスが2脚。
壁に貼り付けた大量のネイルチップ。


あの手芸屋さんからおうちに帰りトップコートを塗ったあの日…
私はネイルアーティストになりました。


高校を卒業して私は真っ直ぐネイルの道に。
沢山のお客様方に応援して頂きスタッフにも恵まれサロンワークをしながら国内外のネイルコンテストに出場し続け結果を残すことも出来沢山の経験をさせて頂き、今年はずっと夢だった本の出版も決まりました。


20年経った今も…

私はまだ飽きずにあの実験を…

続けています。


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