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いくつかの印象的な出会いの話をしたい

記事を開いてくださってありがとうございます。

先に公開した音楽年表の記事では書けなかった、印象的な出会いをしたバンド・ミュージシャンについて語る記事です。

というわけで、私の記事を初めて見つけた方は、まずは下の記事からお読みいただくことをおすすめします。以前読んだ方も、ちょっと見比べながら読んでもらえると良いのかな。

それでは、さっそく本題です。


Mr.Children

私の価値観を、その後の人生を、思い切りひっくり返すような出会いだった。

Mr.Children との出会いについては長くなるのでこちらの記事にまとめている。もしよかったら読んでほしい。

BUMP OF CHICKEN

親の車で『Butterflies』がよく流れていて、音楽嫌いだった頃から「ちょっと良いかも」と思っていたバンド。


当時は Spotify でもバンプは聴けなかったし、何を聴けば良いかもわからないから、冬期講習の帰りにベストアルバムを買ってラジカセで聴いた。『ガラスのブルース』になんだかワクワクし、『K』の歌詞に衝撃を受け、『ロストマン』は最高傑作だと思った。この時点では、バンプを好きになったというよりは、好きな曲をいくつか見つけたという感じだった。


転機は『Aurora Arc』リリースの頃。このアルバムのジャケットや曲たちに一目惚れした私は、以降リアルタイムで新曲をチェックし、ポンツカを毎週聴くようになった。


大学生になって Apple Music を使うようになると、今や私のバイブルとなった『ユグドラシル』を始めとする昔のアルバムをたくさん聴いた。
大学 2 年の冬の期末期間は、レポートを書きながら『THE LIVING DEAD』をエンドレスリピートし、帰り道に『ユグドラシル』を聴き、涙腺が緩みそうになりながら自転車で帰る生活を送っていた。疲れたときに聴くバンプは本当に沁みる。


今では、一家揃って 1 年の大半がお誕生日企画に費やされるポンツカに和み、アプリのニコルにご飯を与える日々である。ライブにはまだ行けたことがない。行きたい。

スピッツ

車の中で『醒めない』が流れていて、名前は知っていたバンドである。


YouTube に上がっている MV と、当時 Spotify に上がっていた『CYCLE HIT』で曲を聴いた。『ロビンソン』『チェリー』をはじめとする初期の曲にはあまりハマらず、『CYCLE HIT』の 2006-2007 の曲たちが好きだった。

『ルキンフォー』や『若葉』で聴く草野さんの歌声はひときわ美しく感じられたし、『1987→』なんて最高にかっこいい曲じゃないかと思った。


「横浜サンセット」を YouTube で見てからは、『小さな生き物』が 1 番のお気に入りになった。地味だし人気ないかもしれないけれど本当に素敵だとおもうんだ、このアルバム。


そしてスピッツといえば、ロック大陸のことを語らないわけにはいかない。スピッツを聴くようになったとほぼ同時に聴き始め、今でも定期的に聴いているラジオ番組である。UK のバンドで私がもっとも敬愛する RIDE を始め、この番組で知った音楽は本当に多い。出会ったのにまだしっかり聴けていないものもたくさんあるが……

この番組の好きなところは、ナビゲーターの草野さんの気取らないコメントである。

それまで私は「音楽を語る」という行為は、素養のある人しかやってはいけないものだと思っていた。コード進行を分析してみたり、各楽器のサウンドについて語ってみたり、理論的で難解なイメージがあったのだ。

しかし草野さんは、「このギター良いですよね」と言って実際に弾いて聴かせてくれたり、「明るい曲に聞こえるのに、歌詞は結構暗くてびっくりしました」といった素朴な感想を教えてくれたりする(歌詞について言及するのも、詳しい人に嫌がられる行為だと思っていた)。

良いものは良い、好きなものは好きと言って良いんだと思わせてくれた番組だと思う。


音楽好きに仲間入りできた身として、草野さんのようなナビゲーターになりたいなと思っている。
それなりに色々聴いてきたわりに全然わからないままだけれど、等身大の言葉で音楽の魅力を伝えられる、誰かの入り口になれるようなナビゲーターに。

ストレイテナー

出会いは秦さんとのコラボ曲『灯り』で、陳腐な表現だがホリエさんの声に恋をした。当時の新曲『スパイラル』と、その前の『Braver』の MV をまず見た気がする。

『Braver』はクイーンの『We Will Rock You』のようなクラップに心惹かれたし、受験生になった私に勇気をくれる曲に思えた。秋に『吉祥寺』が発表されると、「絶対に合格して吉祥寺を歩くんだ」というモチベーションが私を奮い立たせた。その後無事に大学受験に合格し、上京してまもなく吉祥寺に足を運ぶも、想像以上の都会ぶりに圧倒されてすぐ帰ったのはまた別のお話。


ストレイテナーは、間違いなく高校時代の私に大きな衝撃を与えたバンドの筆頭だ。ストレイテナーと Galileo Galilei が二台巨頭で、大学生になって出会った andymori をそこに加えたら私の青春は完成するんじゃないかと思う。

そして、ゆるくて自然体に見えるのになんかすごくかっこいい、憧れの大人の代表である。20 を超えた今でも、MV やメンバーのインタビューを見ては「将来こんな大人になりたい」と本気で思う。


ストレイテナーの魅力を言葉で表現するのは難しい。

そもそも、レーダーチャートがあったとしたら全頂点が突き抜けてしまうようなバンドである。アルバムによって、いやアルバム内でもいろいろなタイプの曲を聴かせてくれるし、その全部がかっこいい。

ただ、より核の部分の魅力を挙げるとすれば、星のように点々と置かれた言葉を繋いで星座を描き出す音楽、というところだろうか。初期の BUMP OF CHICKEN の物語っぽさともまた違う、できあがっていく 1 枚の絵画を見ている感じ。歌詞の世界観が変化しても変わらず感じられる、他のバンドにはない魅力だと思う。


「ストレイテナーが好きです」という人とは価値観を共有できそうというか、仲良くなれそうな予感がする。まだ会えたことはないのだが。
(というか、武道館ライブできるくらい人気あるはずなのにファンの皆さんどこにいるんですか?)


40 代の 4 人の兄さんたちへの憧れを抱き続けたまま 4 年経ち、なんと 10 月の武道館で初めてストレイテナーに会えることになった。いろんなミュージシャンに浮気している人間なので、ずっと聴き続けていたかといえばそうではないが、ずっと好きでいてよかった。もう楽しみで仕方がない。


ちなみに、25 周年のベストアルバムは『Braver』と『原色』と『Kingmaker』に投票した。人気がありそうな『DAY TO DAY』と『吉祥寺』を他のファンさんに託し、『放物線』と『Jam and Milk』を泣く泣く手放した。『The Novemberist』が候補曲に入っていたらもっと悩んでいたことだろう。

Galileo Galilei・BBHF

Galileo Galilei との出会いは突然だった。Spotify で秦さんの曲を聴いていたら『僕から君へ』が流れ出し、その美しさや歌詞の素晴らしさにしばし動けなくなった。そして彼らの名前を検索し、すでに活動終了してしまっていることを知り、失意の中で出会ったのが BBHF である。


私のイメージでは、子供部屋の中にいるのが Galileo Galilei で、成長して子供部屋を飛び出したのが BBHF。どちらも違うバンドで、どちらも必要な存在だ。Galileo Galilei と BBHF を同じ人がやっているという事実が、私自身が大人になることも肯定してくれているように思えて、すごく嬉しい。


実を言うと、Galileo Galilei の活動再開のニュースはリアルタイムで知っていたのだが、そこから 1 年経つまで新曲を聴けていなかった。

元々、Galileo Galilei は一度聴き始めると世界に入り込みすぎてしまって、気持ちが切り替えられなくなってしまうことがあったので、聴くタイミングを慎重に選ぶ存在ではあった。

しかし、1 年も寝かせてしまったのにはもう一つ理由があって、大好きな Galileo Galilei が本当にそこにいるのかが怖かったのだと思う。それが自分なのか彼らなのかはわからないが、「ああ、変わっちゃったな」と思ってしまうのが、大好きだった Galileo Galilei が好きじゃなくなるのが怖かった。

遅れて『4 匹のくじら』や『Bee And The Whales』を聴いて、その不安は一気に吹き飛ばされた。特に『あそぼ』を聴いて、YouTube でライブ映像を見て、「ああ、私は彼らと遊びたかったんだ」と気づいた。


活動終了後も、雄貴さんをはじめとする Galileo Galilei のメンバーは、Galileo Galilei の曲たちや存在を否定することなく、ファンが子供部屋に遊びに行くことを許してくれていた(と私は思っている)。それだけでも、2016 年の活動終了より後にファンになった私は救われた。私が大好きな Galileo Galilei が彼らにとってはもう忘れたい過去だったとしたら、それはすごく悲しいだろうから。

しかしその子供部屋には、本人たちはいなかった。なぜなら大人になったからだ。

それがまさか、戻ってきてくれるなんて。かつて遊んでいた本人たちはもう帰ってこない、それで良いんだと言い聞かせながら、本当はずっと待っていた自分に気づかされた。


Galileo Galilei はちゃんと子供部屋にいた。かつては遊ぶことが叶わなかった彼らと、これからめいっぱい遊んでいきたい。

RIDE

知ったきっかけは前述の通り、ロック大陸漫遊記の特集である。


当時は洋楽の良さなんて全然わからなかったから、放送を聴いてすぐにファンになったわけでも、聴き始めたわけでもない。

ただ、その回のことはやたらと印象に残った。
ライドというバンド名も、シューゲイザーという初めて聴いたジャンルの名前も、オープニングナンバーが『プール』だったことも、「ちょっぴりタイムマシーン」が横道坊主の『UNDER the U.K』だったことも、何がそんなに引っかかったのか不思議なくらいに。

そして、轟音の中に聞こえる美しいボーカルという、それまで聞いたことのないような奇妙なサウンドに心地良さも感じた。


なんとなく名前を覚えたまま月日が経ち、大学 2 年の 9 月、ライドと再会した。欲しいアルバムを買うためにタワーレコード渋谷店に行き、ついでにいろんな棚を眺めるという楽しみを覚えた時期だ。

その日、目的の 1 階と 3 階を回り終えた私は、なんとなく 6 階に足を踏み入れた。

名前しか知らない海外ミュージシャンの名前が並び、音楽好きっぽいおじさんたちが棚を物色していた。慣れ親しんだ 3 階とは違う、大人で落ち着いた雰囲気に怯んで引き返そうとしたとき、私が知っている数少ない海外バンド、ライドのことを思い出した。

その日並んでいたのは確か、代表作『Nowhere』、草野さんも紹介していた『Weather Diaries』、そして『This Is Not a Safe Place』の 3 つ。

少し迷ったが、最新作の『This Is Not a Safe Place』を選び、帰ってウォークマンに入れて聴いた。
そしたらどうだろう、1 曲目の『R.I.D.E』からもう心を撃ち抜かれてしまった。ラジオで聴いたあの轟音も健在で、でも温かさもあって、本当に素敵なアルバム。

昔のアルバムも遡って聴いたが、今でも『This Is Not a Safe Place』が 1 番好きだ。


大学 4 年になって UK ロックをたくさん聴くようになったが、ライドへの思い入れは変わらない。もちろん曲も良いのだが、バンドとして素敵なのだ。

SNS の投稿やインタビュー記事を見ていると、いかに今のライドが良い状態で、穏やかに楽しく活動しているかということが伝わってきてほっこりする。特にアンディは精力的で、見ているだけで元気が出るね。

リキッドルームでのライブの情報は完全に見逃してしまっていたから、生きている間に何としてでも彼らを見たい。それまで元気でいてほしい。

TOTO

出会いは高 3 のある日、場所は父親の車。洋楽なんてわからない身にもすごく聴き心地が良くて、父に誰の曲かを尋ねたのを覚えている。


帰ってから父の音楽部屋に行き、TOTO の CD がたくさんコレクションされているのを見た。数日後、父がいない時間にこっそりファーストアルバムを持ち出し、ラジカセで聴いた。1 曲目の『Child’s Anthem』に心躍り、何度も巻き戻して聴いた。気づけば父が帰る時間が迫っており、慌てて返しに行った。

次の日は 2 作目、その次の日は 3 作目、……と繰り返し、私は密かに TOTO が大好きになった。


大学 3 年の年末、家族揃って晩酌をしているときに、音楽の話になった。

両親には、どんなライブに行ったかを少し話したくらいで、あまり音楽の話はしたことがないはずなのに、私がいろんな音楽を聴いていることを知っていた。

そこで、音楽の聴き方が父と似ているという話になり、高 3 から TOTO を聴いていたことを打ち明けてみた。TOTO を知っているの⁉︎ と父はびっくりしていた。それから、ペイチのソロアルバムをおすすめしてもらったり、一緒にライブ映像を見たりした。


父とはよく音楽の話をするようになったが、繋いでくれたのは TOTO だと思う。父との思い出抜きには語れない、最高にかっこいいおじさんたちでありスーパーバンドである。

andymori

先にインナージャーニーに出会い、彼らが影響を受けたバンドということで聴き始めた。


『CITY LIGHTS』の MV が入り口だった。少年のような声でまくし立てるボーカル、疾走感のあるメロディ、カオスな世界観……わけわかんないけど面白い! というのがファーストインプレッション。
そこから色々聴いていって、すぐに「すごく良い!」と思える曲もあれば、良さがわかるまでに時間がかかる曲もあったけれど、そんなところも含めてとにかく気になるバンドになった。

何周かして、全部の曲を愛せるようになると、自分の青春のすべてが andymori の中にあるとすら思えた。解散後に知ったくせに不思議なものだ。でも、時代を超える音楽ってそういうものじゃないだろうか。


andymori をリアルタイムで見ることはできなかったが、andymori に影響を受けたと話す若いミュージシャンが活躍する時代をリアルタイムで楽しませてもらっている。The Songbards を筆頭に、本当にたくさんの素敵な音楽に出会わせてくれたバンドだ。

もはや、「andymori を聴いていました」というバンドやミュージシャンを見かけるだけで嬉しくなってしまう。その人の人生に andymori があることを想像するだけでときめいてしまう。


The Songbards の自主企画で、初めて小山田壮平さんを見た。

この日まで、私は小山田さんのソロ作品を聴いたことがなかった。
SAKEROCK を聴いてから星野源さんを聴くまでにタイムラグが生じた要因でもあるのだが、好きなミュージシャンほど、他のバンドやプロジェクトの曲を聴くのにはなんとなく勇気が要るのだ。

ライブでは andymori の曲とソロの曲の両方をやってくださったのだが、これまで聴いてこなかったのを後悔するような、一方で初めて生で聴けるのがとんでもなく幸運だとも思うような、とにかく魅力的な曲たちだった。

特に『アルティッチョの夜』は衝撃的で、あの日聴いた叩きつけるようなアコギの音と叫びのような歌声は 1 ヶ月経っても頭から離れない。

それに、andymori の曲を聴かせてもらえたこともすごく嬉しかった。Galileo Galilei のところでも書いたが、解散後にファンになったことを肯定してもらえたようにも感じたし、今日まで好きでいて本当に良かったと思えた。

私の大きなルーツのひとつとなった andymori、そして最高のギターヒーロー・シンガーの小山田壮平さんのことを、これからもずっと好きでいたいと思う。

The Songbards

出会いは、Nintendo Switch の CM で聴いた『窓に射す光のように』。

すでに SHE’S のファンだった私は、CM 曲が『Letter』じゃなくなったのを寂しく思うと同時に、その美しくて温かいサビのメロディにすごく惹きつけられた。そこで CM の曲を調べて彼らのことを知った。『夕景』リリースのちょっと前の時期のことである。


当時はあまり洋楽を知らない時期だったから、UK ロックの影響というのは正直わからなかったのだが、綺麗な歌声、誠実でシビアな歌詞、優しいけれど主張のあるシンプルなバンドサウンド、あらゆる要素に惹きつけられた。

YouTube に挙がっている「The  Songbards の井戸端会議」や「グバラジ反省会」、ジロッケンの動画も見て、彼らの人間性も含めてすっかりファンになった。


グッズのデザイン、Wake Up! Bards やグバキャス、公式 LINE アカウント開設、……各メンバー 3 人ずつくらいいるんじゃないかと思うくらいアクティブで、その一つ一つから「こんなバンドでありたい!」という思いが感じられて、私は彼らのそういうところも大好きだ。

もちろん、バンドの中心にあるのは音楽だし、音楽やライブパフォーマンス以外のことは得意な人に任せます! という考えもすごくかっこいいと思うのだが、バンドの主人公はバンドメンバーだから、バンドのあり方・受け取られ方へのこだわりはあって自然なものだと思う。
それに、CD のアートワークなどをはじめとする音楽以外の要素も、音楽の聴かれ方とまったく無関係ではないはずだ。

だからこそ、バンドがかかわるものに妥協せず向き合う彼らはすごくかっこいいと思う。


反省会しか見られなかったグバラジ、途中から合流した Wake Up! Bards と来て初回から楽しめる初めてのコンテンツが嬉しくて、グバキャスはついリアタイしてしまう(収録なのに)。学生の身分でファンクラブにも入会してしまった。

比較的歳が近くて、彼らの活動を見られるであろう期間が長いからこそ、できるだけ彼らの活動を見て影響を受けていきたいと思う。本当に応援していて楽しい、彼らと一緒に成長していきたいと思えるバンドである。


ライブには、2nd アルバムのリリースツアーで初めて行き、そこから何度か足を運んでいる。月に 1、2 回行くのがやっとの頻度だからということもあるかもしれないが、毎回違う表情を見せてくれて楽しい。

特に小山田壮平さんゲストのミックステープは、大好きな The Songbards と、彼らが大好き・私も大好きな小山田壮平さんが一緒にステージに立っているところを見られて、内心大号泣だった。
今も書きながらちょっと涙腺が緩みそうになるが、きっと彼らならこれからの活動でどんどん最高を更新してくれることだろう。


また、私には生涯の間で音楽にかかわる活動をしたいという夢があるのだが、そのきっかけは間違いなく彼らだ。その中で彼らとも一緒に活動してみたいし、もし叶ったら「The Songbards がきっかけでこの活動を始めました」と伝えたい。と書いているだけでは願望のまま終わってしまうから、自分にできることを頑張っていこうと思う。

サカナクション

彼らの名前を検索してみた日があった。『新宝島』がリリースされた頃から名前は知っていたが、本当に何のきっかけもなく、気まぐれの行動である。

そして、YouTube に上がっている MV を手当たり次第に見た。4 つ目くらいに『ルーキー』を見て、家を飛び出してタワレコに行き、置いてあった当時の最新アルバム『834.194』と光 ONLINE の DVD を買った。

ちょっと気になってきたくらいのバンドの DVD(それも完全生産限定盤) を買うなんてなかなかギャンブラーなお買い物だが、サカナクションの魅力はライブにこそ詰まっているから、サカナクションへのハマり方としてはあまりにも正しい。


さっそく DVD を見始めた。「嘘やろ」の連続だった。

自販機前から会場に入って始まる『グッドバイ』、『ボイル』からのステージの切り替わり、『陽炎』で現れる「スナックひかり」……見どころは挙げたらキリがない。MV かと思うようなあまりにも完成された演出に圧倒的なパフォーマンス。

ちなみに、このライブにおける私の 1 番のお気に入りは『ワンダーランド』だ。YouTube でも映像が見られるからぜひ見てほしい。


まんまとサカナクションに心を撃ち抜かれ、『834.194』や光 ONLINE のライブ音源を始めとするあらゆる音源を聴き漁った。


そして、彼らの曲はだいぶ覚えてきたぞという頃にアダプトプロジェクトが発表された。タイミングが良すぎる。何気なく検索して MV を見始めたところから、出会いが色々と奇跡すぎる。

もうアダプト ONLINE を見ない選択肢はなかった。迎えた 2 日目公演、部屋をちょっと暗くしてイヤホンをつけて聴いた。

もう〜すごかった。光 ONLINE をさらに超えてきた。

『multiple exposure』も『雑踏』も『ティーンエイジ』も、あんなにかっこいい曲だなんて知らなかった。

そしてなんといっても新曲!  私は名曲を見落とす才能だけはめちゃめちゃあるから、『キャラバン』も『フレンドリー』も、あのライブで、あの演出で初めて聴けて本当に良かったと思う。

その後ツアーにも参加できてそれはそれは嬉しかったのだけれど、オンラインライブと有観客ライブどっちが良かった? と聞かれても答えられないくらい、とんでもないオンラインライブだった。
アーカイブも 3 周はしたし、再配信のチケットも 2/1 に買ったから 8 回は見たんじゃないだろうか。


その後ツアーも発表されて、武道館公演は 2 連続で外れて、でも諦めきれないから残っていた名古屋公演を見に行った。最高すぎて、余韻の醒めないうちに武道館追加公演も申し込んで、外れて、2 日とも配信チケットを買って見た。

本当は会場で見たかったと思いながら、でも期末レポートの締切を考えると配信で良かったのかもしれないとも思いながら、ぐちゃぐちゃの感情で見た配信には思い出深いものがある。


音楽のさらなる楽しみ方を教えてくれたという点でも、サカナクションには大きな恩がある。

NF パンチの動画もシュガシュガも見た。サカナ locks! は過去の放送後記まで見たし聴いた。これらの媒体を通して、音楽の制作過程の話、音楽業界の話、クラブミュージックの話、いろんなことを聞かせてもらった。

クラブミュージックがまさにそうだが、「自分は好き」だけで終わらず、その良さを広めていこうとする真摯さがサカナクションの素敵なところだと思う。
私が好きな画家の一人に岡本太郎さんがいるが、一郎さんに岡本太郎イズムを感じた瞬間は数えきれないくらいある。


まだクラブには行ったことないけれど、自分なりにクラブミュージックを楽しめるようになった。近いジャンルの曲を比較して特徴を見つけたり、その根っこにある別の音楽を聴いたりすることを覚えた。

ライブに行くたびに、ライブハウスのスタッフさんやローディーさんなど、演者以外の方の動きを目で追ってしまうのも、きっと彼らが教えてくれたことが効いている。

音楽を探す遊びが上手くなってきたと感じる今日この頃、彼らへの感謝はますます増えていく。


一郎さんが活動休止を発表してから、私はたくさんの音楽やミュージシャンに出会ってきた。ライブにもたくさん行った。サカナクションや一郎さんの情報を気にしつつも、寂しがっている暇はないほど好きなものが増えた。

そういう意味では、夢中でオンラインライブを見ていたあの頃よりも、自分の中でサカナクションが占める割合は小さくなったかもしれない。
まったく、音楽においては浮気しまくりのどうしようもない人間である。


それでも、今本当に忙しくて楽しいのは、根っこにサカナクションがいるからだということだけは忘れないと思う。新曲も待っているよ。

Emancipator

サカナ locks! の放送後記を遡っていたら、一郎さんがドライブソングとして Tycho の『Dive』を紹介している回を見つけた。これだ。

サカナクションのインストナンバーを気に入って、インストをもっと聴いてみたいと思っていたタイミングだったので、さっそくタワレコに出向いた。

そのとき、Tycho の『Simulcust』と一緒に買ったのが Emancipator の『Soon It Will Be Cold Enough』である。なぜ買ったのかは覚えていないが、近いコーナーに置かれていた気はするし、ジャケットの絵が綺麗だったから選んだのだろう。


家に帰って聴いてみると、1 曲目の『Lionheart』から完全に心を奪われた。
静かなのにビート感が心地良くて、ひんやりしているのに温かくて、まさにジャケットの絵の風景が目の前に浮かんでくるようだった。

そこから『Soon It Will Be Cold Enough』は毎日のように聴き、彼のことも調べた。19 歳でこのアルバムを作ったというのだから驚きだ。とんでもない鬼才である。


この『Soon It Will Be Cold Enough』については語りたいことがたくさんある。

まだ出会って 1 年半ほどだが、人生で 1 番聴いたアルバムなんじゃないかな。そのときの自分の流行りや気分によって聴きたい/聴きたくない音楽というのは少なからずあると思うのだが、このアルバムだけは聴きたくないと思ったことが一度もない。

冬をイメージさせるジャケットだが真夏でも全然聴きたい。元気なときも落ち込んでいるときも聴きたい。

どんな気分であれ、まったく嫌じゃない感じで気分を 2 ミリくらいふわっと上げてくれるのがこのアルバムだ。

無人島に 1 枚だけ持っていくならこれを選ぶし、火事で家が燃えるとしても持ち出したい。それくらい大好きで、大切なアルバム。


そして、そこから 1 年くらい続くエレクトロニカ(広義)ブームに突入するのだが、その入口になったのは間違いなくこのアルバムである。

この音に魅せられたからこそ、新しい音楽を聴くのが毎回少し怖かった自分が、果敢に聴くものを増やしていけるようになった。
Bonobo に Telefon Tel Aviv に Squarepusher ……と、系統的に近いものからそうでないものまで手を出していけた。


『Soon It Will Be Cold Enough』を気に入りすぎて聴くのが遅くなったのだが、Emancipator の他の作品も聴いて、やはり彼は音楽で自然を見せる天才だと認識した。

生で見たいと思う人がどんどん増えて、少しずつ実現して楽しい人生なのだが、彼もその一人だ。

来日はしなくても良い、むしろこちらが見に行きたい。彼の故郷で演奏を聴きたいし、彼がどんな風景からインスピレーションを得ているのか、実際に自分の目で見てみたい。

The La’s

知ったきっかけは The Songbards の出囃子。出囃子は 6 月に変更されたので聴けたのは 2 回だけなのだが、あの出囃子が大好きでどうしても見つけたくて、皓平さんの Radiotalk で『There She Goes』にたどり着いた。


ちなみに今の出囃子は The Stone Roses の『I Am the Resurrection』。変わったという感想を X(Twitter)で見かけて、探して聴いたのがストーンローゼズとの出会いだ。

アルバムを 2 枚とも聴いて、再結成時のシングルも聴いてすっかりファンになっていたから、小山田さんとのミックステープで初めて出囃子を聴けたときはかなりテンションが上がった。

The Songbards の出囃子のおかげで出会えた素晴らしいバンドが 2  組。つくづく思うが、新しい音楽に出会わせてくれるミュージシャンは最高に素敵だ。


ラーズに話を戻そう。無事にあの出囃子と再会でき、シンプルで美しい究極のメロディを堪能した後、Apple Music にある『The La’s (Deluxe Edition)』を再生した。

『Son of a Gun』から始まって『Liberty Ship』まで進んだあたりで、ビート感あふれるアコギの音や、ざらっとしているのにファルセットが綺麗なボーカルを心地良く感じ始めた。それから『There She Goes』が始まり、この曲の異質な美しさにハッとさせられた。『Looking Glass』が近づくにつれ、『There She Goes』に感じた異質さは確固たるものへと変わっていった。


リミックス版もちょっと印象が変わって良いな〜それにしてもなんでこんなに未発表音源みたいなアルバムがあるんだろうと思ったところでラーズのことを調べた。

完璧主義すぎてアルバムが全然完成しないのでレコード会社は勝手にアルバムを出しました、メンバーはめちゃくちゃ怒ったしバンドは活動休止になりました、それでもそのアルバムはめちゃめちゃ高い評価を受けました……。

漫画みたいなエピソードが出てくる出てくる。

特にリー・メイヴァースの逸話は多くて、職種と時代が違えば歴史の教科書に載ったんじゃないかと想像した。

中でも好きなのは「リーはまだファーストアルバムを作り続けているんじゃないか」という話。

そんなことはないだろうと思いつつ、そうだったらめちゃめちゃ面白いなと期待してしまう。80 歳くらいになって「やっと完成しました!」って言って曲構成そのままのファーストアルバムを出して呆れさせてほしい。セカンドアルバムリリースやライブ出演の可能性も捨ててはいないけれど。


そんなエピソードはさておき、アコギのビート感が心地良い、港町のパブが似合いそうなラーズの曲はすごく好きだ。新曲が出る見込みがもう少しくらいあればライドに匹敵するんじゃないかというくらいお気に入りだ。

ここに彼らが目指していた音が詰まっているんじゃないかと思って、『The  La’s - BBC in Session』も何度も聴いた。

普通はもっと色々な UK ロックに触れてから出会うバンドなのかもしれないが、私が UK ロックを好きになるきっかけをくれたのは間違いなくラーズだ。ビートルズの楽しみ方がわからなくて、浅瀬で足踏みしていた私を。


Deluxe Edition の話をしたので、ついでにバージョンの話を。

Mike Hedges 版はちょっと平たくてくぐもった音で、ライブそのまま録音しました! って感じの音に聞こえる。すごくラーズらしい、良いミックスだと思う。

『I can't Sleep』は最後に入っている Jeremy Allom 版が好きだ。このままでは売れなさそうだけれど、すごくライブっぽく聞こえるし、リーのボーカルが引き立つ感じがする。

でも、リミックスバージョンを聴いた後にオリジナルの Stephen Lillywhite 版に戻ってくるとすごく聴きやすいなと思うから、完成版として世の中に出していくならやっぱりこのアレンジだったんだろうと、特に『There She Goes』を聴いて思う。

Helsinki Lambda Club

名前はよく知っていて、SNS の投稿もたびたび目にしていたのに、そこから 1 年経ってようやく聴いた。自分を焦らすの大好き人間なのでこういうことはよくある。


聴いたきっかけは、ロングコートダディの単独ライブ『こぽぽ水中』で曲が使われたという投稿を X で見たことだ。調べてみると、ロングコートダディの単独は音楽を軸に構成を決めるのが恒例ということらしい。

ヘルシンキの曲は聴いたことがなかったし、ロングコートダディに至っては名前からしておじさんコンビだと思っていたレベルで無知だったのだが、曲がどんな風に使われているのか気になって配信チケットを買った。

登場したロングコートダディがイメージの何倍も若くて最初誰かと思ったという話はさておき(ファンの方本当に申し訳ない、知識体系が歪みまくっているのです)、コントも幕間 VTR もめちゃめちゃ面白かった。

そして何より、途中でかかるヘルシンキの曲がすごく良い味を出していた。特に最後の『ロックンロール・プランクスター』はニクかった。

その配信を見た後、ロングコートダディのことはちゃんと調べ、YouTube で上がっているネタ動画を見てお気に入りの芸人さんになったのだが、ヘルシンキのこともすごく気に入った。

たぶん普通に MV を見ていても好きになったとは思うが、こんなの好きになるしかないじゃないというような絶妙な使われ方だったから、こんなふうに出会えてよかったなと思う。


その後、MV を探して『収穫(りゃくだつ)のシーズン』や『午時葵』を聴き、どんどんハマっていった。その勢いで「ヘルシンキラムダクラブへようこそ」の東京公演のチケットを買った。間に合ったのは本当に幸運だ。


ライブはできるだけまっさらな気持ちで見たい派なので、申し込んでからは他会場のライブの感想も見ず、ほぼ曲も聴かず 1 ヶ月間過ごしていたのだが、私が参加する東京公演に谷さん、そして柴田聡子さんが参加するという情報が入ってきた。

ちょっと待ってくれと思った。

谷さんは The Songbards のマネージャーをやっていた方として認識していて、いつかドラムを見てみたいと思っていた。

そして柴田聡子さんは、渋谷のタワレコに通い始めた頃、3rd アルバム『柴田聡子』を見かけて試聴した思い出の人だったのである(ちなみに、そのときの試聴コーナーにはみらんの『モモイロペリカンと遊んだ日』などが並んでいたと思う)。


気づけば盛りだくさんになっていた東京公演だが、もう本当に楽しかった。

稲葉さんがステージから降りてきて目の前でダンスを始めたときはびっくりしてドン引きに近い反応をしてしまったのだが(ガチで目の前だったのでご本人には申し訳ないめちゃめちゃ嬉しかったです)、ライブが進むにつれて自分でもノリノリなのがわかるくらいノリノリになっていった。

終演後に柴田聡子さんとお揃いの T シャツとキーチャームを買っちゃうくらいには浮かれていた。

お祭り!! サーカス!! テーマパーク!!! って感じの、とにかく夢のような空間だった。

これまでそれなりにライブを見てきて、翌日の切り替えはそこそこ早くできるつもりだったのだが、ライブから 3 日経ってこれを書いている今も余韻の中だ。これまで情報を遮断していた反動もあるのか、他の参加者が撮った写真や動画を見てはにやにやしている。

これから見に行くライブはハードルが上がってしまうなあと謎の心配をするくらいにはすごいものを見てしまったなと思う。


ライブが終わった後に色々調べていたのだが、そこでわかったのは、私はどうやら 3 人の髪型が 1 番落ち着いているタイミングで彼らに出会ったらしい。

私がヘルシンキの名前を知ったのは、稲葉さんが坊主で、タイキさんがボブの頃だと思われる。この時期にもっと彼らのことを調べていたら好きになっていただろうか……と想像した。一度ライブを見て、フレンドリーでかっこよくて素敵な 3 人だということがわかったので、どんなファンキーな見た目になっても応援していこうと思う。

音楽の話をしていたはずなのに最後髪型の話になっている、どういうことだ。まあいいか。


最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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