システィナ礼拝堂に行きたかったのにサン・ピエトロのクーポラに登ってしまった話
8年まえ、フランスにワーホリで滞在していた1年間のあいだに、周辺国をいろいろ旅行していた。イタリアは夏のバカンスに、ローマ→フィレンツェ→ヴェネツィアと列車で巡った。
ローマとヴァチカンで絶対に行くと決めていた場所がひとつだけあった。それは、ヴァチカン美術館内にある「システィナ礼拝堂」という場所。ローマ旅行を計画したのち、ローマが舞台の長編ミステリー「天使と悪魔」を読んでいたのだけれど、それに出てきたのがシスティナ礼拝堂だった。壁や天井すべてにフレスコ画が描かれたその礼拝堂はきっと息をのむほどのうつくしさなのだろうと、ローマに到着したわたしはそこにいる自分を想像して心踊っていた。
さて、何度かこのnoteでも書いているのですが、8年前のわたしは今よりももっともっと旅のための事前調査をしないひとで、当たり前にガイドブックも持っていなかったし、携帯もフランスでしか使えないおもちゃのようなものしか持っていなかったので、それはそれは失敗が多かった。
このイタリア旅行のときも失敗だらけ。システィナ礼拝堂に「行きたい」と願うだけでは行けるはずもないのに、まったく行き方などを調べておらず、ただただ「天使と悪魔」に出てきた情報だけを頼りに突き進んだ。
「天使と悪魔」ではシスティナ礼拝堂はサン・ピエトロ大聖堂の中にあると書かれており、コンクラーベ(ローマ教皇を選出する投票)のシーンなどで作中に登場していた。ので、なんの疑いもなく、枢機卿たちと同じようにサン・ピエトロ大聖堂の中から行けるとおもっていた。いまおもえば、そんなことあるわけないのに。
とりあえず、奥に進めばたどり着けるとなんの根拠もなしにそうおもっていたわたしは、それらしい入り口を見つけ料金を払って中に入った。エレベーターか、歩きかと聞かれた(2ユーロくらい料金に差があった)ので、安い歩きの方を選ぶ。エレベーターがあるなんて、そんなに体力をつかうほど遠いんだろうか…不思議におもいながらも、足を前へ前へとすすめていく。
おかしいな?途中でそうおもった。なぜこんなに階段を登っているんだろう。1階や2階ではすまないほど階段をひたすらに登っている。作中では、システィナ礼拝堂は大聖堂の右側にあるはずだし、こんなに上の階にはないはずだし、これは…違うところへ向かっているのでは…?
そう気づいた時にはもう引き返せないほど通路が狭くなっていた。誰かとすれちがうどころか、人間ひとりが通るのもやっとなくらい狭い。さいごのほうは、壁がすこし曲がっていてからだをななめにしないとすすめないほど。
こんなかんじ。
これ、ぜったいにシスティナ礼拝堂につかないな…いや、でももしかしたら、行ってみたら、ラッキー!ってこともあるかもしれない、どうかな…おねがいシスティナ礼拝堂に着きますように!!!!
せまくて暗い通路を抜け、やっと到着!こんな景色が広がっていた。
わぁ…
ちがった…
すごく綺麗だったけれど、行きたかった場所とまったく違う場所にたどりついてしまい、しかも次の日にはローマを去らなければいけなかったので、泣きそうになりながら下にあるバチカン郵便局で家族にポストカードを書いて帰った。下調べはちゃんとしていくべきだなと身をもって感じた。
その郵便局ですてきな出会いがあった話は、また今度。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?