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インボイス制度の施行までいよいよ1年を切ったけど、結局インボイスってどうなるの?

フリーランスや個人事業主のみなさんにとって、インボイス制度は頭を悩ませる問題ではないでしょうか?2022年2月にも関連した記事をあげました。
 

施行予定は2023年10月。いよいよ1年を切り、「難しくてよくわからない……。」というわけにもいかなくなってきました。働き方によっては従来と異なる手続きが必要だからです。
 
今回はインボイス制度を簡単におさらいし、何が問題だと言われているのか、また企業の対応などについての経過をまとめてお伝えします。

「インボイス制度」のおさらい

フリーランスや個人事業主の方であれば、業種にかかわらず対象になるインボイス制度です。改めて確認していきましょう。

消費税・納税にかかわる制度

消費税は確定申告の際に売上にかかる消費税から仕入に係る消費税を差し引きし、その差額を納付することになっています。その手続きを「仕入税額控除」と言います。

インボイス制度が導入されると、「仕入税額控除」が可能なのは、取引の相手方から「適格請求書(インボイス)」の交付を受けたものに限定されるようになります。

事業者によって異なる対応

免税事業者の場合

免税事業者とは「課税売上高1,000万円以下」の事業者のことです。インボイス制度導入後は3つのパターンが考えられます。

もし報酬が10,000円だった場合、

  1. 従来通り11,000円(消費税10%)支払われる。消費税分の1,000円は自分で納税する。

  2. 10,000万円支払われる。報酬にかかる消費税10%分の1,000円を自分で納税する。

  3. 従来通り11,000円(消費税10%)支払われる。自分での納税は必要ない。

の3パターンです。

課税事業者の場合

一方、課税事業者とは「課税売上高1,000万円以上」の事業者をさします。貰った消費税の何割かをインボイス制度以前から納税しています。

インボイス制度導入後に考えられるのは

  1. 取引先から消費税が支払われないうえに、その消費税は自分で納税する。

  2. 適格請求書(インボイス)を利用しないと控除申請ができなくなる。

といった2パターンです。

インボイスが必要な理由は?

インボイス制度が導入されると、2023年10月以降、国が認めていない請求書以外は一切認められなくなります。

企業の視点で考えると、インボイスを発行するにあたって経理業務などの根本的な見直しが必要になります。「経費として認められない請求書はできるだけ貰いたくない」という方針になる可能性もあります。相応の手間や費用がかかるからです。

仕入先がインボイスを発行しない場合は以前よりも消費税の負担が重くなる恐れもありますし、インボイスを発行できない事業者は取引を断られたり、消費税分の値下げを要求されるかもしれないという心配の声もあがっています。いずれにしても、なるべく早い段階でインボイスの取り扱いをどうするか検討しましょう。

免税事業者がインボイスを発行したい場合は課税事業者へ切りかえる必要がありますが、2023年10月1日~2029年9月30日までの課税期間(消費税の計算期間)中に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する場合は、「消費税課税事業者選択届出書」は不要です。インボイス制度の導入にあたり、特別経過措置がとられるとのことです。

課税事業者になると2年間は免税事業者に戻ることができない点は注意しましょう。

「インボイス制度」の問題点

今までのご説明で、何が問題となるかお分かりになったのではないかと思います。
インボイス制度の問題点と言われているのは、大きくわけると次の3点です。

  • 仕事の取引もしくは報酬が減る可能性がある。

  • 消費税を申告、納税する業務負担が増える。

  • 請求書の様式を変更する必要がある。

平成28年度の財務省の調査によると、国内823万の事業者のうち435万が個人の免税事業者、77万が法人の免税事業者でした。日本国内の6割の事業者がインボイス制度の影響を受けると考えられています。

本名が公表される?

しかし、問題は報酬減や事務手続き上の手間だけではないこともわかりました。
適格請求書(インボイス)を発行するためには適格請求書発行事業者になる必要があることをお伝えしましたが、今のままでは実名が公表されてしまうことも大きな話題になっています。
適格請求書(インボイス)に記載された登録番号を入力すると、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で事業者の情報を閲覧することができます。個人事業者の場合、「氏名または名称」の欄に必ず本名が記載されるのです。

2022年9月26日を境に閲覧内容の変更はありましたが、本名が明示される仕様については変更されていません。

つまり、適格請求書(インボイス)を発行することで、取引先に本名がわかってしまうことは避けられません。また、こちらのサイトは一般公開されており誰でも利用することができますので、情報が拡散される可能性もゼロではないのです。

企業の反応について

ここまで主にフリーランスや個人事業主の視点からインボイス制度を整理してきましたが、企業はどのように捉えているか見ていきましょう。

大手企業の今後

 ウイングアーク1st株式会社が売上100億円以上の企業に行ったアンケート調査から、大手企業の対応について見ていきましょう。

509社のうち約3割がインボイス制度への対応に向けて「具体的に動いている」と回答し、免税事業者の取引先に課税事業者への移行を依頼した企業は、「すでに依頼した」「まだ依頼していないが依頼する予定」を併せて4割ほどにのぼったそうです。

取引先である免税事業者が課税事業者への転換をしなかったとした場合、今後の取引に影響することを懸念するものの、約8割は1年以上取引を継続する意向があることもわかりました。
 
また、師走トオル氏がSNSにてKADOKAWAの対応を詳しく説明しています。
 

KADOKAWAの場合も「2026年9月までは80%控除対応をとる」としているそうです。これは適格請求書(インボイス)に対応していない個人事業主に支払った消費税についても、控除の対象になるというインボイス制度の経過措置にのっとったものです。クライアント側は従来通り、消費税分8%を支払っても損が出ないようになっています。
 
なお、法令を遵守する企業であれば、今回のKADOKAWAと同じように公正取引委員会の指針に沿った対応になるはずだ、とも示されていました。
 
ただ免税事業者と課税事業者が混在することで企業側の事務負担が増えることは間違いない事実は変わりません。もし取引相手から負担を求められた場合は、フリーランス側の柔軟な対応も求められることになりそうです。

中小企業の今後

それでは、中小企業はどうでしょうか?これまで免税事業者だった中小企業は特に大きな影響を受けるとされています。

課税事業者はできるだけ消費税の納付額を抑えたいと考えるのが通常です。そのため、免税事業者であり適格請求書(インボイス)の発行ができない事業者とは、今までと同じ条件で取引したくないと考えてもおかしくありません。

つまり、免税事業者であるフリーランスや個人事業主と同じような影響が企業側にもあるということになります。
課税事業者になるということは、今まで免除されていた消費税の納税が必要になるため、消費税の制度の仕組みや申告書の書き方などを改めて学ぶ必要があるでしょう。

スタッフが個人事業主として業務委託契約で働いていることが多いような業種は、取引相手が適格請求書(インボイス)発行業者かどうかの確認を早めにしておくことが大切です。

インボイス制度への対応に関しては事業者側が主としてすすめていく方が良いとされていますが、消費税額相当の値下げを要求するなど契約の変更がある場合は、独占禁止法に抵触しないよう注意しましょう。

大手企業の対応でもあったように、中小企業側も2023年10月1日〜2026年9月30日までの経過措置をうまく利用して、免税事業者と柔軟に対応する必要がありそうです。

その他の動き

すでにインボイス制度反対を訴える動きもあります。声優・漫画・アニメ・演劇団体が連携して声明を発表したのです。

各団体が業界内でアンケートを実施したところ「インボイス制度がきっかけで廃業する可能性がある」と答えた人が、どの業界でも2〜3割程度いることがわかったそうです。

「特に収入の低い若い人ほどリスクは高く、日本の文化を衰退させる可能性がある」と「クールジャパン」ともてはやされているのとは真逆の現状に、各団体が警鐘を鳴らしています。

いずれの業界も年収300万円を下回る人が半数を超えており、収入源が加速することでなり手もいなくなるのでは、という声もあります。
回答の中には、「誰の何のための制度なのかわからない」「取引先からインボイスについて聞いていない」というものもあり、企業側の理解や準備も進んでいない現状がありそうです。

これからするべき準備とは?

適格請求書(インボイス)は事業活動に使われた経費すべてに必要です。その都度受領した請求書が正しいものであるかどうか照会が必要になるため、事務にかかる手間が増大します。手書きの帳簿やエクセルなどで会計管理をしている場合は、会計ソフトやクラウドサービスの利用を念頭に入れても良いかもしれませんね。

基準期間(~2022年12月)の課税売上高が5,000万円以下の場合は「簡易課税制度」を利用することができますが、課税期間前に届出が必要です。また、提出すると2年間は継続することになりますので、多額の資産が動くような場合はそれに応じた消費税を支払うことになります。

消費税が控除できれば還付できるケースでも簡易課税では控除できません。簡易課税制度を利用する場合は慎重に判断しましょう。

まとめ

フリーランスや個人事業主として働く以上、インボイス制度から逃れることはできません。免税事業者は売上が減少する可能性がありますし、課税事業者は経理にかかる手間が増大するなどデメリットもあります。

また、現状は誰でも本名が検索できてしまうため、ペンネームを使用している事業者のプライバシーにもかかわってきそうです。

国税庁の見解もマイナーチェンジしている部分がありますので、今後も変更がある可能性は高いと予想できます。最新情報を常にチェックしながら、税理士や会計ソフトのベンダーにも相談するなど、慌てずに準備を進めていきましょう。

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