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東京・青山 礼華 青鸞居「ヌーヴェルシノワの真髄を味わう」

一昨年訪問した東京・青山「中国料理 礼華 青鸞居」(ちゅうごくりょうり らいか せいらんきょ)のレポートである。

僕は今まで、自ら好んでヌーヴェルシノワのお店に訪問したことがなかった。
香港好きとして、ヌーヴェルシノワは邪道と感じていたから。ヌーヴェルシノワとは、他国の食材や調理法を取り入れた中国料理のこと。僕は、無理をして和や洋の素材・調理法を用いる必要なしと思っていた。気をてらわぬ、中国料理らしい中国料理が好きだったのである。
またヌーヴェルシノワを標榜するお店でも、中国料理の確固たる技術で調理された料理は、ヌーヴェルであろうがなかろうが美味しいと感じていた。

今回頂いた料理。特に「フカヒレの姿煮込み トリュフソース」は、中国料理の食材と洋の食材が、見事に融合していた。
香港中華でも、ヌーヴェルシノワでも、日本式中華でも、旨いものは旨い!
今回のディナーは、ヌーヴェルシノワに開眼した貴重な体験だった。

「中国料理 礼華 青鸞居」のオーナーシェフである新山重治氏は、上海料理の料理人としてキャリアをスタート。
「立川リーセントパークホテル 楼蘭」や「トゥーランドット游仙境」では、アイアンシェフこと脇屋友詞氏の右腕として活躍。日本のヌーヴェルシノワのエリートコースを歩んだ凄腕である。
その後「筑紫楼」料理長としてフカヒレ料理に精通。
新宿御苑に「礼華」一号店をオープン後、現在は青山店、ミッドタウン日比谷店の3店舗を経営するオーナーシェフなのだ。

まずアミューズから。
マクドナルドのアップルパイのようなケース。ー嬉しい不意打ちにビックリ。フランス料理の名店「レフェルヴェソンス」のアップルパイのオマージュではないだろうか。アップルパイ?のケースを開くと、中身は春巻!しかも手づかみで頂く趣向!
絶対にレフェルヴェソンスのオマージュだと確信した。
揚げたてアツアツ。
フーフーハフハフしながら頂くと、餡の中に筍の繊切りがいっぱい!
噛み締めると、木の芽の香りがプーンと!
これはアイディアだけでなく、味もまた嬉しい不意打ちだった。

季節の前菜の盛り合わせ。
真ん中は活けの巻きエビ。贅沢にも塩と酒で煎りつけてある。
レアの方が旨い?と思ったが、しっかり火の通ったエビも旨い。微かにハマナスのお酒の香りが効いて、乙な味。
レンゲに入ったクラゲの和え物も美味。一般的な酢の物ではなく、ネギ塩風味。また塩蔵クラゲではなく、生のクラゲを用いている。新山オーナーシェフが熟知した上海料理のレシピである。
他のメニューは、チャーシュー、野菜のカラスミ和え、中華風テリーヌ、ピータンのゼリー寄せ。目にも舌にも美しい盛り付けに感激。

スープは新玉葱とフォアグラの蒸しスープ。蒸し立てなので、アツアツ。
一口すすると、口の中に新玉葱の風味がわぁ〜っと広がる。上湯の旨味でねじ伏せるのではなく、新玉葱の風味を活かすスープ。
上湯スープも、フォアグラも、新玉葱の主旋律を活かすためのアンサンブルだと感じた。混沌とした旨さを是とする中国料理とは別の形の中国料理。これが新山オーナーシェフの描くヌーヴェルシノワの真髄か!と唸った。

魚料理に続いては、いよいよ本日のメインディッシュ「フカヒレの姿煮込み トリュフソース」。礼華のスペシャリテといえる自慢の一品である。食べる前は、正直「フカヒレの姿煮とトリュフって合うの?」と一抹の不安があった。以前類似の料理を頂く機会があり、トリュフを加える必然性を感じなかったためだ。しかし、その不安は杞憂だった。
姿煮のスープのコクが、トリュフの妖艶さと相俟って、非常に高貴な風味を醸し出していた。
素晴らしく絶妙な相性。もし中国の皇帝がトリュフを知っていたら、きっと満漢全席にも用いたのでは?と思わせる絶妙な味わいだった。

肉料理は「黒毛和牛ランプ肉のスパイシー焼き」。唐辛子と共に炒めることで、辛味よりも風味を具材に纏わせる手法だ。
ランプ肉なのでサシが控えめ。しつこすぎず、噛み締めると牛肉の上品な旨味を感じた。火入れも見事。

その後のワンタン麺、デザートも大満足。

料理と共に、ソムリエが選ぶワインペアリング(日本酒もあった)も堪能し、青山での贅沢すぎる夜は更けていったのだ。

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