0.01%の病気で入院した(手術編)


『お疲れ様でした。できることは全てしましたよ。手術は成功と言って差し支えないと思います』

2時間にも及ぶ大手術のあとに先生が言ってくれた一言が嬉しかった。
緊急での手術だったため、全身麻酔なし。感覚や意識もあるままで2時間の手術は想像した通り過酷だった。

テレビドラマで見た全身ストレッチャーに載せられて、手術室から病室まで看護師さん2人に送ってもらう。

ベッドに滑りこんで、ひとまず横になった。いままで経験したことがないくら身体が疲れている。

「とにかく、終わって良かった・・・は~~~しんど・・・」これ以上の感想は出なかった。


手術が始まる約6時間前、先生と最終の打ち合わせをしていた。

『順調に行って1時間、最大2時間かかるような手術です。局部麻酔と安静剤を注射しますが、意識や感覚はあり、多少の痛みも感じる筈です。一緒に頑張って乗り切りましょう。きっと貴方ならできますよ』

「・・・・はい、どうぞ宜しくお願いします」 これ以外言えるわけがない。

『手術中、リラックスして気を確かに持ってもらう必要があります。何かお好きな音楽などはありますか?手術室にBluetoothに繋いだスピーカーがあり、Youtubeから音楽が流せますが如何ですか?』

「! Tha Blue Herbというヒップホップアーティストが居るのですが、お願いできますか?」

『ブルー、、ハーブ・・ですか?ヒップホップですね・・・。はい、後で検索しておきますよ。』

Tha Blue Herbはヒップホップが好きな人なら知らない人はいないはずのアーティストだ。
1999年にファーストアルバムを出して以来、今日にいたるまで精力的に活動を続けている。音楽業界という保証もない浮き沈みの激しい世界で、第一線で走り続ける姿に何度も勇気をもらえた。

手術で側にいて欲しいアーティストとして真っ先に名前を挙げた。


手術開始前までは病室で待機するだけ。本を読む、音楽を聴く、Youtubeを見る、すべてやってみたがやはり落ち着かない。
手術当日はAM9:00以降は絶食しなくてはいけないので、空腹も苦しかった。

17:00頃、看護師さんが入ってきて言う。『ぽんたんさん、準備は良いですか?』 一気に動悸が高鳴る。

ストレッチャーに横になる。左腕には点滴を刺して水分が不足しないようにする。右腕には安静剤の注射を打つ。
看護師さんが二人でストレッチャーを押して廊下を移動する。「あ~これドラマで見るシーンだなぁ・・・自分がやるとはなぁ」そんなこと考えていた。

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広くて真っ白な手術室に入る。8名のお医者さんとスタッフの方が、仰々しい機械の周りに立っていた。

聴き馴染んだ音楽が流れている。手術室に入った瞬間に流れていたのは「SEE EVIL, HEAR EVIL, SPEAK NO EVIL」だった。

先生がYoutubeで検索して馴染みのない音楽の中から探してかけてくださった。「いや、先生これはBOSSのソロ作品でして、厳密に言うとTha Blue Herbでは・・・」などとは言えるはずもない。ありがたく聴かせて頂いた。相変わらずのDope Beatと力強いラップには背中を押された気がする。

そこからは詳しく覚えていない。とにかく恐怖と痛みに耐えるのに一生懸命だった。


2時間後、先生から冒頭の言葉をいただく。手術をした右目は眼帯でぐるぐる巻きなので何も見えない。
手術が終わって最初に思ったことは「病室のベッドに帰りたい」だった。自分の家でもない病室に対してホームシックのような気持ちになるなんて滑稽だ。

手術後の目と頭の痛みがあったため鎮痛剤を貰う。睡眠導入剤とのセットで泥のように眠った。


翌朝、目を覚ましてご心配をおかけしてる皆さまにLINEで連絡。手術の成功を喜んで下さった。

先生に検査室に呼ばれる。『昨日はお疲れ様でした。出来ることはすべてできましたよ』

「本当にありがとうございました。今後の経過はどのような形になりそうでしょうか?」

『しばらく安静にしてもらいます。しかし、今の状況から診るに、来週半ばくらいには退院できるんじゃないですかね。とにかくそれまで感染症を起こさないよう清潔に保ち、身体に負担をかけないことが大切です。しっかり看護師の指示に従ってください』

当初、最長2週間くらいの入院になると聞いていたのでホッと胸をなでおろす。

とにかく、人生初の入院、手術は順調に行った。

「一寸先は闇」とはよく言ったものだなぁと思う。今週の水曜日の夕方に町の眼科に軽い気持ちで行って以来、慌ただしく動いてきた。

なにごとも自分の目の前にあることに感謝しなくちゃいけないな。いつそれが無くなるか分かったもんじゃない。

それにしても日本の医療システムは凄い。世界最高峰と言われるのも頷ける。


高額医療費制度の申請

私も初めてのことなので詳しいことは分からないが、個々の年収に応じて支払わなければいけない医療費には、
国が上限を設けてくれており上限以上の医療費の支払いは免除されるシステムのようだ。

ただ、これは事前に申請しておかないと医療費(自己負担額)をすべて一回自分で払わなくてはいけない。そして数カ月後に返金されるシステムだ。

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アメリカなどで度々社会問題になる、入院費で自己破産などの悲惨なケースを防ぐ素晴らしいシステムだ。

会社員なら健康保険組合から「健康保険限度額適用認定証交付申請書」をもらい、それを記入して返せば「適用認定書」が送付される。それを入院中に看護師さんに提出する。
自営業の方なら、区役所に申請書を取りに行く必要がある。

これは忘れずにやっておくべきだと感じた。現金な性格なのかもしれないが、これがあって少し心の平穏が保たれた。

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