小泉環境相の育休取得宣言から考える育休政策

先日、小泉環境相が第一子の出産に合わせて育休を取得することが報じられた。

小泉環境相に第1子の男児誕生 育休「しっかり確保」:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54501420X10C20A1EAF000/

大臣が育休なんてけしからんとか、逆に正味2週間じゃ大差ないとか、そういう批判も含めて話題になっている。

一方で、育休と言えば昨年末に国が国家公務員の育休を原則取得とする方針を出した。44万人が1ヶ月の育休を取得するとなると、かなりのインパクトだ。

残業削減と一体で改革を 男性公務員の育休「1カ月」原則に:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53963870X21C19A2EA3000/

なんとなくではあるが、公務員の育休は「知る人ぞ知る」みたいな感じであったのに対し、小泉さんの育休取得宣言は世間的にも広く認知されたような気がする。

https://trends.google.com/trends/explore?date=today%201-m&geo=JP&q=男性%20育休

雑な推定だが、Googleホットワード検索で見る限り公務員の育休原則化と比較して小泉さんの育休取得宣言が持つインパクトの大きさがわかる。

育休を取れない理由として、「周囲の評価」とか「空気」とかそういった抽象的なものが挙げられることがある。法的な問題はもちろんクリアされているし、休暇中の給料といった経済的な問題もないとすれば、ここへ来てボトルネックとなっているのはそういう抽象的な部分なのだろう。

その点、大臣の育休取得宣言というのはインパクトがあるし、政府広報としては正解だったかもしれない。もちろん公務員の育休取得原則化は注目を集めるための政策ではないのでそれと比べるのはおかしいが、場合によっては法制度を頑張って調整するより大臣がバーンと会見で宣言するだけの方が効果的なこともあるのだろうなと、示唆は出来ると思う。

女性の育休取得率は企業にとってもプライオリティが高く、新卒採用の場でもしきりにアピールされる。女性就活生にとっては自分のキャリア形成に関わる問題なので、自分ごととして考えるのだろう。きっとそれは現実に優秀な女性を集めることに繋がる。

一方で、男性の育休取得率は新卒採用の場ではしばしば隠される。そして、少なくとも自分以外の男性就活生がそれを聞いていることを見た事は無い。彼が育休を取れることで得をするのは、彼ではなく10年後の彼の配偶者なのだから、無理からぬことだ。正の外部性があるサービスが過少供給になっている例と言える。男性の育休取得率を上げても優秀な男性社員が集まらないのであれば、企業もそこまで積極的にはなれそうもない。

男性の育休取得率を上げようとしない企業の裏には、育休取得率を気にしない男性就活生がいる。きっとその裏には、合コンで育休取得率には目もくれず年収で勤務先に序列をつける「女の子」達がいるのだろう。知らんけど。

政府は、民間企業に対しても今回国家公務員に適用したのと似たような制度を適用することを考えているようだ。奇妙な共犯関係で均衡してしまった性役割分業の構造を崩すには国家の強権的な介入も必要だと、天国のスミス先生も納得してくださるだろうか。

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