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生存に不利な方が生き残れる!? ~ハンディキャップ理論とランナウェイ過程~

1 導入

こんにちは、ひろきです。今日は、生存に対して不利な形質を持つ個体こそが生き残れるという変わった考えである、「ハンディキャップ理論」と「ランナウェイ過程」について解説していきたいと思います。

生存に不利な性質を持つ個体(例えば体の色が他の種と違って目立ちやすいので、天敵に捕食されやすい など)は、淘汰されてしまいそうですが、不利なものこそ生き残れるという状況も実はあります!今回はそのことについてお話していきたいと思います。

2 ハンディキャップ理論とは?

まずはハンディキャップ理論についてです。結構有名な話なので知っている方も多いかもしれません。雄クジャクの羽の話が有名ですね。

クジャクは大変綺麗な羽を持っているのですが、生存上は何の役にも立ちません。大きな羽を作り出すには多くのエネルギーが必要なうえに、目立ってしまいますし、天敵から逃げる時には大きな足かせになってしまいます。

ではなぜクジャクのオスは立派な羽を持っているのでしょうか? それは、大きな羽を持つオスの方がメスと交尾でき、自分の子孫を残しやすくなるからです。自分の子孫を残せるというメリットが羽を持つコストというデメリットよりも大きいために、立派な羽を持つという選択をしたのでしょう。

このように「一見不利な性質を持つものの、その性質が不利であれば不利であるほど生存上有利になれる」ことをハンディキャップ理論と呼びます。

羽を閉じているクジャクです。閉じていても綺麗ですね!

3 ランナウェイ過程

前項目を読んで、勘の鋭い方は「羽が立派な個体が有利ならば、どんどん羽が大きくなるように進化していって、物理的な限界が来るまで大きくなるのではないか?」と思われたかもしれません。あくまで理論上は正しいです。

この考えをランナウェイ過程と言います。つまり、長い羽を好むメスが長い羽を持つオスと交尾する→長い羽を持つオスの子供は長い羽を持つ可能性が高いので長い羽を持つ個体が増える→これを繰り返すことで集団中に長い羽を持つ個体が更に増える  という循環が起きるというものです。

しかし、人間に背が低い人と背が高い人がいるように、当然のことながらクジャクにも立派な羽を持っている個体とそうでない個体が存在しています。これは相対的なモノではなく絶対的なモノです。(考えている集団は180cmの人間と178cmの人間がいる集団ではなく、180cmの人間と150cmの人間がいるくらい差が大きい集団とお考えください。)

なぜこのような違いが起きるのでしょうか?

4 前問の答えとは?

その答えはズバリ、「天敵」がいるからです。メスクジャクの視点に立って考えてみましょう。メスは雄クジャクの羽を吟味して一番良い個体(自分の子孫が強くなりそうな遺伝子を持っていそうなオス個体)を探します。

しかし、この吟味するという行為にはコスト/手間がかかります。悠長にじーっと見つめているわけにはいきません。いつ敵が襲ってくるか分からないからです。

メスにとっては「そもそも子孫を残すこと」の方が「強い子孫を残すこと」よりも大事なわけです。つまり、先ほど紹介したランナウェイ過程はあくまで理論上というわけです。天敵がいない穏やかな場所ではメスによる選り好みが起こって、立派な羽を持つ個体が更に有利かもしれません。

しかし、通常時は悠長なことをしていられないので子孫を残すことを最優先事項として、そこまで選り好みをしないのでしょう。その結果、相対的な差が生まれるのです。

5 まとめ

今回は生存に不利な性質を持つ個体が有利になるハンディキャップ理論について紹介しました。この理論、ひょっとしたら人間の恋愛にも応用できるのかもしれませんね。



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