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寒風

秋風に葉が染まり、もうそんな時期かと漸く気づきました。冷たく流れる風は鋭さを帯び、心を貫きました。小さな空洞ができた心にはえも言われない独特の哀愁が起こっています。

スーパーで長ネギ1本買いました。会計の時、財布から10円玉が飛び出してきて、どこかに消えていきました。醜い姿勢をとって探したかったですが、後ろに待っている人がいたので、諦めて帰りました。10円玉さえ大切にできない無風流人のように自分が感じられました。お金は今全然持っていません。2週間足らずの給料日までの生活を逆算してみたりしています。

昔心酔していた萩原朔太郎の詩集を数篇読み返しました。寂寞の心が紛らわされたような気がします。朔太郎はやはり好きです。作品だけでなく、人としても好きだけど、孤独の詩人には仲良くしてもらえないと思います。こんなに愛してるのに!朔太郎の作品とは仲良しだと思っています。

最近布団が僕から全く離れてくれません。朝だから時間が無いって言うのに、くっついて離れないのです。淋しい寒さが和らぐので少し愛しく感じます。しかしそのせいで今朝時間がなく、煙草を1本喫んだのが、僕の朝ごはんです。

この時期、何だかあらゆることが愛しく感じます。寒くなると人が恋しくなるのはありふれた人間の習わしですが、それとどこか似ている気がします。自分がやさしい人間になったように思えるきらきらした良い気分です。

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