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良書 なぜ人と組織は変われないのか 〜第1章 3つの知性〜

本書「なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流自己変革の理論と実践」を読み、より多くの人が本書に早く巡り合うことで正しく能力開花できるといいな〜という妄想と共に本書の序章と第1章までの気づきをまとめてみました。

「なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流自己変革の理論と実践 英治出版株式会社」より

変わりたくても変われない。人は自分の命がかかわる問題でさえ、心から望んでいる変革を実行できないと本書には書かれています。それには自分自身の経験含めて納得。でもなぜそうなるのでしょう。

課題は、自分自身が本心からやりたいと望んでいることと、実際に実行できることとの間にある「溝」の存在とあるようです。より掘り下げた内容は2章以降に続きます。

◼︎人が変われない要因

本書を読み進めることで「溝」となる、人が変われない要因を知り成長の方向を正確に定めることができるようです。本章で述べられている溝を発生させている点は以下の3つ。


・人が変革を阻む要因を理解していない状態
・人は変われないという悲観論を持っている
・自己変革を促すという手法が欠如している

まず自らを理解するために、「自分の思考や行動を意識的に内省する」ことを欠かしてはなりません。薄い内省はストレスなくできますが、深く自分をえぐるかもしれない内省は取り掛かるのが心理的にきつい。

そして人間の知性の発達は思春期では終わらないという認識をもち、悲観論を消し去る。
「成人となったら脳の成長は止まる」という誤った認識も変えねばならなりません。少なくても20歳から70歳まではだれでも知性の成長が期待できると本書には書かれています。

3つ目、変革の課題に立ち向かおうと思えば、個人や組織は課題の本質に焦点を当てて学習をする必要があります。対処療法的な学習ではダメだということです。これ私も耳が痛いのですが、どうしても「How」に頼る学びばかりしている傾向がないでしょうか。

この3点に真剣に向き合うことが変革の第一歩ではないでしょうか。まさに私がその最中。。。

タイトルにある3つの知性については、以下に続きます。

◼︎「大人になると脳の成長は止まる」の嘘と3つの知性

人間の知性は大人になってからも年齢を重ねるにつれ向上していきます。そのプロセスは高齢になるまで続きます(本書では脳の可塑性として表現)。

大人の知性には3つの段階があると本書には記載されています。

環境順応型知性(ソーシャライズドマインド)
リーダーに依存する(だけの)知性。情報を発信するときに自分が客体となる受け身型。
この知性の持ち主にとっては、重要人物の意向に反しないこと、好ましい環境に自分を合わせること、が一貫した自我を保つ上で大きな意味を持ちます。従順さが自我を保つ秘訣となるということですね。形容すると以下のような方々です。

「忠実な部下」「大勢順応主義」「指示待ち」「依存」

自己主導型知性(セルフオーサリングマインド)
何らかの目標、基本姿勢、戦略などをもっていて、これらの要素が他者とのコミュニケーションにおける自己の軸になる。情報を発信するときに自分が主体となる。
情報を受け取る際も、情報を選別する自身のフィルターを持ち、自分が求めている情報を最優先して受け取ります。ただし、意識をしていないが、本来得ることが望ましい情報を自らのフィルターが邪魔をしてしまうこともあります。
多様な思考を受け入れる一歩手前の状態です。形容すると以下のような方々です。

「同僚を導くために学ぶリーダー」「自分なりの羅針盤と視点を保有」「問題解決志向」「自律性」

自己変容型知性(セルフトランスフォーミングマインド)
自己主導型と同じようにフィルターを持つが、自己変容型知性の持ち主はフィルターと自己の思考を分けている状態を維持している。フィルターを第三者的視点、俯瞰視点でとらえ、情報を客観的に捉え収集することができる。フィルターに縛られず情報の本質を見極めやすい。この知性の持ち主は「自己の計画や思考の限界を教えてくれる情報」を得ることに重きを置きます。この知性の持ち主は情報を客観的に取り込むことができるため、思い込みにより情報の取捨選択を誤る危険を回避できます。合わせて自分の行動が誤っていると気づく情報とそれの提供者に感謝するというマインドを持ちます。形容すると以下のような方々です。

「学ぶために同僚を導くリーダー」「複数の視点」「矛盾の受け入れ」「問題発見志向」「相互依存」

◼︎メンバーとリーダーに求められる役割の変化について

【メンバー】
従来は上層部が指示する内容に忠実である「環境順応型知性」が部下としては最適であった。イメージでは言う通りに動く元気な新人といったところでしょうか。
目まぐるしい変化が連続する昨今では、この知性のままの人は変化する状況に自らが主体となって対応し続けることが困難となります。高い次元の知性を獲得し、自分自身と周りの世界を理解することが求められます。

【リーダー】

従来のマネジメントやリーダーシップに関する知識の有用性が、昨今は薄れてきているようです。
従来のリーダーは限定された範囲で設定した目標と、合理性など検証することもなく規範に盲目的に従う体制のもと、「組織の成果が一定の枠からはみ出さない」ように関係者を監視し、権力を主な背景として強い姿勢で持論を主張し、反対意見を跳ね除けていれば務まっていました。
従来のリーダー像の存在意義が陳腐化するリスクが高い昨今では、リーダーの立場にある者は規範や使命、文化を新たに定義できる能力が必要になってきているようです。

加えてリーダーには自身の思考の限界を知り、より完成度の高い思考を確立することが必要となり、成長のため常に限界にぶち当たるという覚悟も必要となりました。
そのためリーダーは自己変容型知性を身につけ、内省と学習を繰り返し続けることが必要となりました。

※本書を読むとこのリーダー像については40年以上前から論じられているということがわかり、自分含め周りは40年も遅れてるんだな〜と思いました。
 

◼︎知性を高めるために学習方法を見直す

直面する多くの課題は既存の思考様式のままでは対応が困難です。これら課題を「適応を要する課題」といいます。

これに対応するにはできる限り組織全員の知性のレベルを高め、思考様式を変容させる必要があります。

こういった状況で組織のリーダーの地位にいるものが犯す最も大きな過ちとして、適応を要する課題を解決せねばならないときに、技術的な手段(既存の延長線)で対応してしまい、それにより目指すべき変化を起こせない結果を招く。と本書にはあります。

まずできる限りメンバー全員の思考を変容させねばならない。そのため目の前の「課題」にばかり目を向けるのではなく、「人間が持つ知性」に着目する必要があるようです。

◼︎【参考】成人の知性レベルの割合は?

ワシントン大学文章完成テスト(1994年実施 n値=342)によると、自己主導型知性の段階に達しているのは約4割で、自己変容型知性に達しているのはそのうち1%ほどという調査が出ました。約6割が環境順応型知性ということです。


◼︎事例に照らし合わせた興味深いこと

3つの知性とメンバー像とリーダー像、世の中で起きていることを組み合わせるととても興味深いことが頭に浮かんできました。

一つはCOVID-19により従来の行動様式が機能しなくなり、新しい行動様式や思考への転換が必要になったことになったこと。もう一つは必要な知性を持ち合わせているリーダーが極めて少ないのではということ。

新しい知恵を日常に取り入れていかねばならないと思いますが、その際に起点となる知性。その知性を皆が(理想としては)自己変容型知性へ成長させるべきであると思います。対処療法的な行動しか考えられない知性レベル(環境順応型)では、もしまた社会を封鎖するような事態になったときに、それこそ諸々の危機の度合いがさらに高まるからです。

二つ目に関してですが、メディアで晒し者になってしまっている政治家(大臣)の方々、「なぜか、う〜ん?」な職場のリーダー(経営者含む)の方々。彼らの知性は「環境順応型」なのかもしれないなぁと本章を読んで頭にふと浮かびました。

質問にさらされ、官僚に答弁メモを渡され、事態の本質も深く理解できぬまま、ただメモを読み上げるだけの大臣。選挙で当選する、党内で高い役職を狙うという為だけに頭のリソースを使っているであろうが故に「限られた環境」でのみ適応できる知性に留まり、本来ならば政治に携わる者として何をせねばならないか、など深く考えつづけねばならないのですが、いつしかそれをやめてしまったのでしょう。

ビジネスの場に目を向ければ、情報技術の発展による新たな競合の出現や、顧客側や世間のリテラシー度合いが高まること等により、事業危機を招いてしまうリーダー(経営者)が同様かもしれません。

近視眼的に従来の競合しか見ることができず、ディスラプターと呼ばれる新規参入者により気がついたら自社のシェアを奪われる。

また顧客との情報の非対称性を武器に価値に見合わぬ利益を得ていたが、法改定により透明性が強く求められたり、新規参入者の攻勢や、顧客側が商品サービスの導入に関して効果測定ができるようになり、元々謳っていた価値が実は提供されていないことが判明し事業機会を失う。リーダーに立つ方が環境順応型知性(指示待ち、依存)の場合、このようなことが今後増加するのではないでしょうか。

これら元々外部環境が自社に甘い状態であることがビジネスを成り立たせていたような企業は、ガラっと外部環境が変わる事態によりそれまで安泰であったビジネスモデルが「一気にではなく真綿でしめられるように」苦しめられていく、一旦嵌ったら抜けられなくなるのではないかと思います。

企業の自助努力ではどうしようもない事態が起きても、顧客への価値提供を真摯に行っている企業は復活の機会を顧客からも市場からも与えてもらえるでしょう。

しかしビジネスを成り立たせていたモデルの実態が外部に把握されるようになり信用を失うような先は、汚名返上の機会を得ることは難しいと思います。企業に存在する文化と風土による社員のマインドや行動規範を根本的に改善するのは、知性の水準を上げるよりはるかに難しいでしょうから。

自身含め周りのリーダーの知性はどのレベルでしょうか?そしてリーダーは誠実(他人の評価として)でしょうか?そうであれば仮に知性が環境順応型でも知性を上げることで、生存能力は上がるでしょう。しかしそれを欠いた状態で組織が今に至っているのならば、正直その組織は自社へ攻撃的となる環境変化には耐えられないと思います。

◼︎誠実の概念を欠いた企業が自助努力で変革できるのだろうか

本書並びに「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか」「学習する組織」「U理論」(全て英治出版株式会社)などの書籍をもとに成人や組織の成長に関して学んでいるのですが、昔からの問い「顧客への誠実さを著しく欠いた構成員が支配する企業は、自社特有の危機が発生した場合、既存の構成員でそれを乗り越えられるか」に対して答えが見つかりそうになりました。

ただ結論は「再現性のある答えはありません」でした。皆がマインドチェンジするという可能性は0%ではないので、答えがないという表現は使いませんが、これについては実現可能性の確率を求めたり証明するまでもないかと思います。

「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか」7章には、「業績不振に苦しみ、ぞっとするくらい顧客を軽視していた会社の経営を引き継いだ経営陣は複雑な組織の経営を見事に立て直した〜中略〜組織文化を捨てる決意をした点だ」とあります。

すなわち経営陣などが変わるという大手術とそれに至る損失を経て、構成員を変えて乗り越えた。元の構成員の自助努力では乗り越えてはいないということです。

同じく7章には「適応を要する課題に挑む人が行動にだけ注目し、行動の土台を成すマインドセットを無視すれば、変革がうまくいかない可能性が高い」とも述べられています。

平たく言えば「責任者に倫理が備わってなければ変革は極めて難しい」ということですね。

また「善良な精神、言ってみれば「良き心」がそこになければ、誰も自分の内面を職場という公の場に持ち込みたいと思わないだろう」とも述べられています。

これはこの文章の前の文脈も含めるのですが、「個人や企業の成長には、自身が持つ内面を公にする必要があるが、善良な心を持たない人はその内面を周囲や公にさらすことを進んで行うことは考えにくいだろう」(この場合変革・改善・汚名返上の機会を含む)ということです。

そして「地位には基本的に特権がともなわない」ようになっていれば、上司の主張に同意できなかったり〜中略〜部下は異を唱えることを義務と感じ、上司は部下の反論に腹を立てず、それを歓迎する、ともあります。

これは間違っていることは間違っていると誰もが言える、心理的安全が担保されている環境を指します。この環境が成長する組織(変革・改善・汚名返上の機会を含む)には必要ということです。

別書「U理論」においては同様の背景を持つ事態への対処法(How)が掲載されていますが、あくまで「事前予防」を如何にするかという論点で、現在進行形への対処法ではありませんでした。

結論として、「誠実の概念を欠いた企業が自助努力で変革できるのだろうか」の問いに対しては、誠実の概念を欠いた構成員が経営層に限られた場合で、その企業に従業員全体が魅力を感じて自己の資産を投じる意欲がある場合にEBOを通じて社外の株主の協力も得て経営権を取得し、変革を実行する、と言うような極めて限定的な条件でのみ可能と考えられます。なので実質的には「再現性のある答えはありません」ということになりました。

◼︎終わりに

組織は起業時から「透明性」「公平」「発言の自由」「特権の廃止」などが担保されている状態を保ち、一部の構成員が自らの能力不足を隠し自己保存できない環境として、顧客とは対等な関係を維持していくことが重要、ということが上記より導き出せます。

個人としてすべきことは自分自身と向き合い、深く内省する。自分の知性のレベルを上げるように努力する。そして必要な知識を身につける。生き方というと大袈裟かもしれませんが、このようなマインドセットは今後必要では、と思いました。

上述の通り私は内省もそれほどせず、知識をつけることに走ってしまった経験があることを最後に白状いたします😔




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