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良書ご紹介 ニュータイプの時代

こんにちは、ポンスケ〜です。第3回目のご紹介書籍は「ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式」です。著者は山口周さん。

初めて山口さんの書籍に出会ったのは「劣化するオッサン社会の処方箋」でした。突っ込んだタイトルだな〜、と感じて購入し、期待通り「オッサン(中年男性だけではない概念ですよ)」に対する批評がたっぷりで、当時所属していた部門や周辺の人材はオッサンなんだな〜、あ、やべぇこの組織衰退する・・・何とか改善せねばと、今考えると無謀な熱意を燃やしたものでした。

本書では「オールドタイプ」と「ニュータイプ」の対比や、オールドタイプの問題、ニュータイプであるべき理由が350ページの大ボリュームで記述されています。オールドタイプとニュータイプ、昔のガンダムに親しんだ人間だととっつきやすいですが、そうでない人でも概念をわかりやすく説明されています。

VUCAと呼ばれているものの何がbetterかわからない、なんとなく不安。今の生き方や働き方、所属する組織は大丈夫だろうかと、明確な答えが無い不安を自らで解消する為の思考法が記述されていますので是非ご購入ください。

全ページやべぇ、と思うのですが、特に参考になった点を以下に記載いたします。

1.「正解を出す力」にもはや価値はない。求められるのは問題の発見力。

高度経済成長期はアメリカやヨーロッパの先進国に追いつく為問題が明確であったが、その時期は過ぎ問題自体が希少となった。今は正解を出す=問題解決力よりも希少となった問題を探す力に価値がある。ニュータイプは問題を発見できる人でオールドタイプは問題解決しかできない人。

問題解決に関しては人工知能が優れている領域はたくさんあり、生産性の向上も機会が優れる時代。解決する力にこだわるオールドタイプの価値は減少すると記述されています。

また革新的な解決策には優れた問題発見力が重要とも記述されています。そもそも優れた解決策は問題のインパクトにより優劣が決まるので、問題を的確に発見できなければピントずれした策になってしまいます。

こと実行における段階でもハードルはあって、それは問題が見えた時に解決に取り組むリーダーの決断力。しかし問題を生んだ原因の一端がリーダーにあるとなかなか行動に移せないし、逆に提起した人間を阻害する。問題の発見をどう扱うか、難しいですね。

2.クソ仕事が蔓延(このキツい言い回しとリアルのご本人の語り口調のギャップがとても好きです)。

モノが飽和し、物質的な欠乏もなくなり、結果「意味」のあるモノが希少となった。しかし目的や意味を明確にすることなくただひたすら量的成長を追求するオールドタイプは「クソ仕事」を作り出して周囲のモチベーションを破壊し、自らも無意味の泥沼に陥ると作中にあります。経営上重要な指標としてのKPIはわかりますが、そのKPIを達成する事に本当に意味あるの?という疑念は多くの方に経験があると思います。私も原体験上ございます。

前回の「イシューからはじめよ」の紹介の中でも書きましたが、○〇〇件電話せよ、○〇件訪問せよ、などセールスに携わると上から指示を受けた経験がある人は多いと思います。件数を多くこなすことは必ずしも悪手ではありませんが、その件数が合理的でないことによる作業はまさに「クソ仕事」と言えますね。自社の商材が響くターゲットを明確に定義してそれにささる市場規模はどれくらいで、アプローチできる数はどれくらいで・・・など自社の商材の意味を定義し、最も効果的なアプローチはこれで、結果○件実施せよ位に説明を受け、納得して取り組めるのでしょう。でもなかなかそこまで納得感を提供できるマネージャーって少ないですよね。

3.経験の無価値化。

環境変化により、過去に蓄積した経験が無価値となる。過去の経験に依存する人は早急に人材価値を減損させ、新しい環境から柔軟に学び続ける人が価値を生み出す。ここで生まれる問題は過去の経験や成果による名誉職としての位置にいる人材が、価値を高めた人間の行動を阻害すること。一つの解として本書では「逃げる」ことを提示しています。

4.未来は予測せず構想する。

多くの専門家が未来を予測しても、大概外れている(文中ではチンパンジーと対比され・・・)。なのでどうせ誰もわからないなら自らが「どうしたいのか」が重要。前述の人工知能に関することですが、昨今人工知能により奪われる仕事、などの記事があります。奪われる仕事に自分の仕事が入っていないか把握したい気持ちもわかります。本書ではそういった後ろ向きな思考ではなく、どのような可能性が広がるのか考えることが大事と記述されており、そうだよねぇと納得するばかりです。

5.能力は意味によって大きく変わる。

J・M・ケインズ氏の言葉が紹介されています。

1日3時間労働が実現すると、余暇に耐えられなくなる大くの人々により、余る時間を埋めるための「実りのない仕事が生み出され、多くの人は実りのない仕事に耐えられず精神を病んでしまう。

現在働き方改革という言葉が流行っていますが、業務の大半が「クソ仕事」とした場合、それを削減したら仮に3時間となってしまい、結果残りの時間を埋める為に「クソ仕事」が再生産され、結果精神を蝕まれるという想像ができてしまいます。余談ですが、私自身もクリティカルな問題を発見し改善を提案して、結果問題を残していた層の自己保存の為に「クソ仕事」従事という経験がありますが、本当に精神を蝕まれます(笑)。

余談はさておき、今後は経営資源の重要要素がモチベーションではないかと記述されています。調査データから仕事に対して前向きに取り組んでいたり、働く喜びを感じる人は全体の15%に満たないと紹介されています。すなわち85%の人はモチベーションが低いということです。「クソ仕事」に従事し、毎月給料をもらうだけならそうなってしまうのも仕方のないことかと思うと同時に、この85%の層のモチベーションを高めることができればお先は明るい、と考えるのは楽観的でしょうか(笑)。

6.マーケティングの定石に注意。

市場調査に基づき想定した顧客が好むであろう商材を作ると、結果として競合と似たようなモノになってしまい「同質化のワナ」に陥る。例として紹介されているのが日本のモバイル。上述の未来予測と同様「どうしたいのか?」を起点とすることが大事。

7.市場では「意味」のポジションをとる。

顧客へ提供する価値観を「役に立つ」から「意味がある」にシフトさせることの重要性を記述されています。役に立つ事が重要な市場で勝利するのは先行者や資本力がモノを言うので極めて難しい。ならば意味があるが重要な市場で戦うべし。モノそのものの機能的便益で戦うのではなく情緒的便益で戦うことで、意味の優劣で勝負する市場で戦える。書籍では自動車を例に出して紹介されていますが、自動車業界で働いていたことがあるのでわかりやすかったです。

8.共感できる「What」と「Why」を語る。

ドフトエスキー氏の言葉が紹介されています。

まったく意味を感じることのできない仕事こそが最も過酷な強制労働であり、これを何日もやらされた人間は発狂してしまう。

上述のクソ仕事がまさにこれで、拡大解釈すればクソ仕事を指示することは人の精神を攻撃することであり、善か悪かという単純な答えを出そうとすればそれは悪であるのかなと💦

「What」や「Why」。何の為になぜやるのかという発信により共感を与えることが大事と記述されています。ただビジョンは立派だが、その実はビジョンの傘のもとクソ仕事もまた蔓延しているという実態にも注意しないといけませんね。ビジョンの策定からオペレーションまでズレが無いかチェックするのも重要です。

9.ニュータイプの思考法。

論理と直感の両方を使いこなすことが重要と記述されています。相対的に直感が今後重要となりますが、その直感が世のファクトと結びつくか検証することも必要です。マーケティングの領域ですが、論理的でもあるか検証しないと単なる声のでかい人の思い込みでクソ仕事を増やすリスクが発生するので注意です。上述の通りマーケティングの定石(フレームワーク)にだけ囚われると同質性のワナにかかりますが、直感から始めるマーケティングの思考は取り入れるべきではあります。

10.ルールより自分の倫理観に従う。

VUCAの時代だからこそ、自らの「真・善・美」により意思決定をする。組織が決めたルールが今の世の中にそぐわなかったり(例えば会社で業務しないといけない、定時に出勤しないといけないなど)、そもそも倫理的におかしい(粉飾決算や昨今話題の架空計上など)場合は自らの「真・善・美」に従い行動する(結果としてはその組織を抜けるのでしょうが)。このスタンスでないと組織の同調主義に毒されていつしかまともな判断ができなくなるのでしょう。

11.量的な指標は無意味化している。

「テレビのリモコン問題」。たくさんボタンありますけど、ほとんど使わない。使われない機能を増やすことで機能的便益を高めてそのコストを顧客に求める。それこそ生産性の低下につながる。

12.ニュータイプのワークスタイル。

キャリアのバーベル戦略:極端なリスクの異なる2つの職業を同時に持つ戦略。安定した職業と大化けする可能性のある職業をもつこと。アインシュタインもそうであった由。

ちなみに「投資」という分野でもリスク分散という手法は基本で、1点買いではなく、複数買う。さらに同じ業種でなかったり、市場平均の動きとの連動性が異なる企業同士に投資する、など「複数」という概念は重要です。

そして自分の価値が高まるレイヤーで勝負することが重要とも記述されています。努力の量を上げるのではなく、適切な場で勝負するということですね。そしてそれは「内発的動機」とフィットする場所が良い。上述のモチベーションともリンクしますが、結局モチベーションが高い方が成果が出るのでしょう。やらされ仕事ではなかなかモチベーション上がりませんよね。

13.専門家が斬新なアイデアをつぶす。

これは原体験でもありますが、専門家(ただその部署が長いとも言えるのですが)の一存で顧客体験を上げる企画を潰されたことも多々ありましたが、潰したい心情も理解はできます。文中では東海道新幹線の事例が紹介されていますが、今新幹線があるのは飛行機技術者の方のおかげであるとのことです。当時鉄道技術者の反対があったそうです。文中に専門性が高まる(同じ組織に長くいる)とそれは時として居心地の良い場所となり、その蛸壷にこもって権威を盾に安寧にプライドを守ろうとするオールドタイプ、ニュータイプは異なる専門領域の間を行き来するとあります。専門領域が陳腐化したらその人の価値って一体?になるのでフットワークを軽くすることは大事ですね。

14.権力を握ったオールドタイプのモラル崩壊が止まらない。

先般某有名企業グループを舞台にした売り上げの架空計上事件がありましたが、組織文化というものは一度痛い目にあってもなかなか変わらないものだなぁと思いました。重ねて人の流動性は大事だなと。恐らく「おかしい」と声を上げた社員はいるのでしょうが、モラルが崩壊した環境、同調圧力などにより封殺されていたのでしょう。文中「自分が所属している組織が自分の価値観に照らし合わせて許容できないことをやろうとすると、大きなストレスになる、多くの人は自分を変えて組織に適合しようとするが、それにより思考力は衰退し、倫理観は麻痺し、自分自身がオールドタイプへ堕する」とありますが、まさにその通りだなぁと。

本当のリーダーシップは職責ではなく、文中では「問題意識から」生まれるもの記述されています。

今の働き方、生き方でこの先大丈夫だろうか?と悩むのであれば、是非とも購入して今後どうあるべきか考える教科書としていただきたい書籍です。

それでは。




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