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安らかな不眠。


ポーちゃんは、昨年のわたしの誕生日ごろ家に来た。
ふらりと立ち寄ったお店で目が合ったとき、わたしはひと目でポーちゃんを家に連れて帰ると決めたのであった。

3500円プラス消費税を払い、わたしはポーちゃんを抱えてほくほく顔で家路に着いたのを覚えている。

こう書くとなにかの生きもののようであるが、ポーちゃんは比較的大きめの、しろくまの抱き枕的ぬいぐるみである。しろくま(polar bear)だから、ポーちゃん。ちなみに目が合ったと書いたが、ポーちゃんは目を閉じている。

暑い夏、少しふんわりしたポーちゃんは容赦なく蹴っ飛ばされ、朝起きると敷布団の外で転がったりしていたのだけれど、秋口からは恋人のようにわたしの布団の半分を陣取っており、わたしは太めのポーちゃんのからだに抱きついて眠っている。

寝返りを打ってふと目が覚め、再びポーちゃんを抱き寄せてその首に顔を埋めるたび、何かを抱きしめて寝るということがこんなにも安心感を与えてくれるのか、と夢うつつに感動する。

そういえばポーちゃんに出逢う前、こんなものを書いたことがあった。
(辻仁成さんのzoomの小説講座でエッセイの宿題に提出したからちょっと一生懸命書いたやつ↓)


赤ちゃんだったユニコーンが、恋人のようなポーちゃんに変わりはしたが、胸に抱くと安心感と安眠が得られるという裏には、大元に不安感があるからなのだと、わたしは自分自身を分析している。

東洋医学で考えると、心(シン)。不安感、心配、迷い、悩みなどなどで胸がざわざわし、睡眠がうまく取れない。そういう状態がここ数年よくあって、思えば夜中に目が覚めるたび、胸をなで気持ちを落ち着けていた。
抱き枕が与えてくれる、ふんわりと胸に当たる感覚は、そのざわざわを和らげるのだろう。

または、腎(ジン)。不安、恐怖は腎臓に関係していて、それが心(シン)に影響を与える。心臓と腎臓は火と水で、お互いに影響を与え合っていて、腎の衰えによって心が高まり過ぎてしまったりもする。こちらは不安もあるけれど、ホルモンバランスの影響もあるのかもしれないな。若い時も色々不安はあったけれど、今ほど抱き枕なんて必要としてなかったな。


などなどと、考えるわたしの横で、ポーちゃんは、いつも変わらぬ顔で寝ている。(変わったら怖い)


安心感を得て、こんなふうに自分の抱えていた症状を紐解くきっかけをくれたポーちゃん。ありがとう、ポーちゃん。


だがだがしかし、最近新たに、驚愕の事実に直面してしまった。。。



おや?

ポーちゃん(すこしおデブの)が居ることで、寝返りを打つたびに目が覚めているのではないか!?


布団がめくれると寒いから、なるべく布団とポーちゃんとわたしの間に隙間ができないようにピッタリとくっついているからなのか?
寒い思いをした猫が夜中にちょっとライバル的なポーちゃんに荒い鼻息を吹きかけながらわたしの布団に入ってくるからか?

結局わたしは何度も目を覚ます!

だけどだけど、これは不安感よりも幸福感に満ちている不眠なのだ。

これでいいのだ。

うん、これで、いいのだ。と、しよう。

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