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変わらない組織を変える方法〜女性自衛官に見るリーダーシップ〜

本来、組織のルールを守ることは重要なことである。しかし、時に、組織のルールを守ることは倫理的に大きく間違っていることがある。なぜ、そのようなことが起こるのだろうか。

Rhode(2006)は、「組織のルールを守ることが必ずしも適切な行動につながらないこと、ルール自体が不適切である可能性がある」(p.221)と言っています。

例えば、「社内で知り得た秘密や情報を漏らしてはいけない」という条項によって、企業が不正を働いている際に、内部告発を妨げているケースがある。告発は社内規定違反であり、社内の不正を正すことができないようになっていることがある。ですから、告発者は倫理的に正しい立場に自分を置くことを許さない土壌が出来上がってしまうのです。

日本の自衛隊で性被害を訴えた女性自衛官がいた。彼女は去年8月、訓練中に複数の男性自衛官から性被害に遭ったと訴え、被害届を出したが、嫌疑不十分で不起訴処分になったため、検察審査会に不服を申し立てていた。そんな中、彼女はある行動に出た。それが週刊誌での告発だった。結果として、大きな社会的なムーブメントとなったために、再調査されることになり、加害者4人と自衛隊の局長は彼女に謝罪をした。しかし、彼女の心の傷は消えず、崇高な思いを持って入隊した志を汚されてキャリアを失ったことには変わりはない。

決して、組織に隠蔽をするルールがあったわけではない。しかし、組織全体の隠蔽体質が問題を公にしたり、解決しようとはせず、被害者にとって傷の上に、さらに傷を負わせる結果となってしまったのである。まさに、彼女にとって、傷の上からさらに傷を負わされることとなった。しかし、彼女は狭い世界の中だけの歪んだ組織の中で訴えても解決できないために、ある行動に出た。

彼女は自分が自ら先頭に立って再発防止のために、社会的に訴える手段を取ったのである。彼女は、痛みだけでなく、自分の利益にはならないかも知れない。それでも、彼女は戦っているのである。まさに、彼女は正しい倫理観を持ち、社会的に訴えかけて、フォロワーを導いて、倫理とは何かを明確に示したリーダーだと言えます。

リーダーには、まず倫理に関心を持ち、倫理が重視される組織を作ることが必要です。また、たとえ自己の利益にならないことであっても、倫理的な方針を守るように部下を動機づける能力も必要である。と述べている(Rhode, 2006, p.222)。


自衛隊は、残念な一部の男性隊員の行動により、リーダーとなり得る人材を失った。問題に対して、隊自体が素早く対処したり、そもそも倫理的な体制ならば、被害にあうことがなかっただけではなく、優秀な人材を失うこともなかった。

これは、自衛隊だけでなく、日本国民においての損失であるとも言える。倫理的な社会や組織の形成とともに、私たちは、非倫理的な社会や組織であることは、大きな損失であることを忘れてはならない。


References

Rhode, D. L. (2006). Moral leadership. Jossey-Bass.

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